【感想・ネタバレ】グリーン・ジャイアント 脱炭素ビジネスが世界経済を動かすのレビュー

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Posted by ブクログ 2023年02月18日

## ブラックロック
ブラックロックが企業に対して影響を及ぼそうとしてるしてるというのは初耳だった。
自分もいくつかブラックロックのETFに投資しているが、資産の管理を委託しているだけで、彼らが株主としての権利を行使しているとは思っていなかった。そんなことまで委託したつもりはなかったのだが。
ある程...続きを読む度は避けられないのかもしれん。日銀が筆頭株主になってる企業とか、株主総会では日銀はどうしてるんだろうな。
取締役会からの提案に無条件に賛成してたら、それはそれで問題なのだろうし。

## GPIFがESGに投資
これも知らなかった。もっとパッシブに運用してるんだとぼんやり思ってた。年金みたいに長期的な利益を最大化させるのが目的の組織は、四半期単位で利益を最大化させたい投資家なんかとは別の観点から企業に働きかけることになるのかな。

## 若い世代の気候変動への関心
米国の若い世代は、党派性に関わらず気候変動対策を支持。赤いところはみんなトランピストって訳ではないのだな。

## ビーガン食
以前、ビーガンの同僚に理由を尋ねたら、「かっこいいから」と言われて意味不明だなと思ったのだが、牛の飼育による気候変動への影響を考慮してというのは知らなかった。だいぶ迂遠な気もするが。

## 再生エネルギーの蓄電方法
水素やアンモニアから発電するというのも、結局はエネルギーをどう貯蔵して運搬するかという問題の解決策なのか。
ハーバーボッシュ法でアンモニアを製造するのは莫大な電力を消費するとこの前知ったし、燃焼したらNOXが出るのだからあまりいいアイディアのようには聞こえないのだが、過渡期の方法としては他よりもマシになるのかもしれないな。

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Posted by ブクログ 2022年12月28日

発電、産業、科学といった多面的な脱炭素化ファクトが細かく纏まっている。特にネクストラ、エネル、オーステッドの事業ポートフォリオの大胆な変更と成功は、脱炭素化過渡期におけるグッドプラクティスとして参考になる。

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Posted by ブクログ 2022年11月13日

カーボンニュートラルや脱炭素について勉強をし始めたばかりですが、事前知識が無くても、一気に読むことができました。
脱炭素、再生可能エネルギーが企業や国にとって重要になっている背景や、世界各国の取り組み、日本の現状について知ることができる本です。

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Posted by ブクログ 2022年07月18日

本書で書かれている事実は、ほぼ既知であるが、結論で述べられているように、日本のダイナミズムの欠落が、最も重要なポイント。
脱化石燃料に対する否定的な意見や、欧州のタクソノミーを環境マフィアと嘯く日本企業の姿がわかりすぎて悲しいが、それを放置するのは我々現役世代の不作為でもある。
世界のダイナミズムを...続きを読む取り込む活動を止めるわけにはいかない。諦めない。

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購入済み

出遅れている日本の状況は厳しい

2022年05月22日

脱炭素ビジネスの進展が世界レベルで逆戻りできないところまで来ていること、そしてそこでグリーンジャイアント(新たにエネルギー業界の盟主へと躍り出た企業群)がエネルギー変革の主役となっている状況を、各国・業界を俯瞰しながら解説してくれており勉強になる。
各国のカーボンニュートラル宣言が出そろい本格的な...続きを読む対策が待ったなしになっている現在、日本も横並びで2050年までのカーボンニュートラルを一応宣言してはいるものの、具体策の出遅れ状況は厳しい。3.11という災難があったためでもあるが、今後どうやっていくのかしっかり見守っていく必要がある。日本国内の再生エネルギー市場では太陽光も風力も海外企業に占領されてしまっている。電力業界の行動に危機感がすこしも感じられないことが恐ろしい。

#タメになる #怖い

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Posted by ブクログ 2022年04月12日

環境問題について、世界の動きがとても分かりやすく説明されていた。日本にいるとニュースでも聞かない再生可能エネルギーの企業が、世界ではイノベーションを引っ張っていることを初めて知り、勉強になった。洋上風力発電も日本にはまだ浸透していないが、デンマークなど欧州では既に何本も建っていて、日本は技術力でも遅...続きを読むれを取っていることが分かり、日本の洋上風力発電のポテンシャルはあるが、技術力は育っていないことに危機感を感じた。日本は世界の流れをこのような本を読むか、海外メディアを見ないと得られないことも痛感し、日本のメディアにもっと海外のことも発信してほしいし、自分でも積極的に海外メディアもチェックしようと思った。

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Posted by ブクログ 2022年03月11日

既にグリーンジャイアントと呼ばれるESGの巨大企業が生まれつつあることを知った。
アメリカの若者は環境政策に敏感で、自分達が政治を作っていく気概があるのだと知った。対して日本の若者は自分の印象だと、お上に流される人が多い気がする。どこかで気候変動政策を斜に見ているような

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Posted by ブクログ 2022年01月06日

大変網羅的で分かりやすい。
特に欧州を中心に爆発的に進む脱炭素の動きの背景、様々な産業のプレイヤーの動き、その中での日本の立ち位置と勝ち筋が考察されている。

気付いた頃には世の中が脱炭素の流れの中にいて、俯瞰して何が起こっているのか分からない、全体像を掴む前に世界が進んでしまって取り残されたような...続きを読む気持ちになっている自分のような読者に強くおすすめしたい!

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Posted by ブクログ 2021年12月26日

薄い本なので、サクッと読める。政治やクリーン・エネルギー関連企業の動向が網羅的に書かれているので、潮流を知りたい人の導入には良い本だと思う。

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Posted by ブクログ 2021年12月24日

脱炭素化が何故進んでいるのか。
何故、TCFDが求められるようになったのか。

脱炭素関係の本やセミナーを漁るよりも、この本を読んでからの方が理解が深まる。

脱炭素に関わる全ての人にオススメの本‼️

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Posted by ブクログ 2023年08月03日

中国のCO2排出量だけで世界の3割、2位のアメリカはその半分…ESG実施観点でのネガティヴ/ポジティブスクリーニング
自動車業界の話題多め。2021年の出版だが、EV市場の覇権争いは2023現在中国BYDとテスラが2強でトヨタの乗り遅れ感は2年前より拡大している印象。
インポッシブルバーガーの誕生経...続きを読む緯が分かって興味深かった。

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Posted by ブクログ 2023年07月01日

再生エネルギーが石油を超える未来が来るのか、読み進めながら痛感。また日本が世界と比して再エネ事業に遅れていることが気がかりである。将来のために国として再エネ事業に投資するのを期待したい。

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Posted by ブクログ 2023年04月17日

脱炭素社会に向けた世界の動き、環境ビジネスの動きがわかる。日本ではこういうことはあまり報道されない。
昔の日本は環境先進国だったはずか、すでに世界から取り残されつつあることを実感する。政府、企業だけでなく、市民の意識も、世界に遅れをとってしまっている中、急ぎキャッチアップしなければならないと考えさせ...続きを読むられる。

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Posted by ブクログ 2023年01月16日

脱炭素系の本を何冊が読んだ中では、書き方があまり悲観的ではなかったので読んでて辛くなかった。

情報も新しく勉強になった。

この手の本の最後に、これからの日本の勝ち筋について語っているものがあるが、いつも「勝つ必要あるのかな」と思いながら読んでる。本書でも、人新世の資本主義に触れているのに、勝つと...続きを読むか負けるって資本主義に囚われてると思う。

このまま脱炭素しても温暖化はしばらく続くらしい。じゃあ、どうしようか。

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Posted by ブクログ 2022年01月31日

気候変動の状況を背景として説明し、再生エネルギー発電、ESG投資、EV、代替え肉、次世代原発等、世界のカーボンニュートラルビジネスを多くの会社の事例を挙げて紹介します。一方で、京都議定書が発効された2005年に大きく期待されていた原子力発電だったのですが、周知の通り福島原発事故で逆風が吹き、それ以来...続きを読む日本の温室効果ガス対策は遅れをとってしまったとのことです。日本は原発に掛けていたのがよく分かりました。原発事故も含めて、日本人は失敗しないことに全力を尽くすけど、もし失敗したらどうするかを考えるのが苦手なのかな、自戒を込めて。

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Posted by ブクログ 2022年01月10日

時事的な内容で賞味期限は短いが、網羅的に主要プレーヤーをまとめ、データも充実していて、脱炭素の現在地と潮流がわかる。

・従来エネルギー企業から再エネ事業者への転身
ネクステラ(米)、エネル(伊)、イベルドローラ(西)

・洋上風力メーカー
ヴェスタス(デンマーク)16.186MW
GE(米)14....続きを読む135
金風(中)13.606
遠景(中)10.717
シーメンス・ガメサ(西)8.678

・再エネ豊富地ではアンモニアは不要(水素でよい)

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Posted by ブクログ 2022年01月01日

わかりやすい。
各国のエネルギー企業が変革してきた事を知り、日本の未来も多少だが希望が持てた。
今後の日本企業の取り組みに期待したい。

この本に限った話しではないが、ESG投資と株価についてよく言及しているが、そのまま鵜呑みにしてはいけないとは思う。

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Posted by ブクログ 2021年12月19日

脱炭素に関する様々なキーワードや会社/業界の動向が分かりやすく記述されていて勉強になった。この分野の本を読み漁っていきたい。

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Posted by ブクログ 2021年11月19日

いわゆる次世代エネルギーについて非常に勉強になった一方、数値の扱いについては少々疑念の残るものでした。

EVは本当に脱炭素を促進することになっているのか。生産から考えるのか、消費から考えるのか。ビジネス的な側面も取り上げており、とても面白かったです。

他の著者と読み比べて、確かな知識としていきた...続きを読むいと思います。

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Posted by ブクログ 2021年11月13日

クリーンエネルギーについて色々な角度からの話があって大変面白かったです。福島第一原発事故が日本のクリーンエネルギー施策の遅れに与えた影響は想像以上に大きく、タイミングの悪さが悔やまれますね。ただ世界は北欧のように地震のあまり無い安全な国ばかりという訳でもないので、地震も多い上に遠浅の海岸にも恵まれな...続きを読むい島国がどう原発やクリーンエネルギーと向き合っていくのか、世界をリードするチャンスでもあるなと同時に思います。

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Posted by ブクログ 2021年10月23日

人間活動による地球温暖化は、ほとんど間違いない。
そうした中、アメリカ、中国、ヨーロッパが脱炭素に大きく舵を切っている。
ここでも日本はイニシアチブを取れそうにない。
自動車はEVとなり、牛肉や牛乳を摂取しなくなり、植物肉、オーツミルクを食べる。
再エネ比率を高めるため、太陽光、風力発電の普及、最新...続きを読むの小型原発の開発。

これらの流れに、対応せざるを得ない状況にきてるけど、日本では遅々として進まなそう。

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Posted by ブクログ 2021年10月17日

気候変動問題をビジネスとしてどう捉えられているかを複数プレイヤーの視点から概説されている本。
現在の動向をキャッチアップする観点で、大変参考になりました。

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Posted by ブクログ 2021年10月17日

・国境炭素税の検討
一種の関税。輸入品に対して、その製品が生産国で作られた際に出たCO2の量に応じて課税
→環境規制の緩い新興国には不利!?

・中国の主力は未だに石炭火力発電で、新規建設計画もある。一方で再エネ化も進んでいて3割程度を占める。

・再エネ(特に太陽光、風力)の最大の弱点は安定性であ...続きを読むり、蓄電技術が進化しない限り電気の需要と供給量は一致させる必要があり、出力調整のしやすいガス火力などが必要

・デンマークのグリーンジャイアント、オーステッドは洋上風力発電のトップランナー。コストも激減しており化石燃料よりも安い。

・GPIFはESG指数で投資先を評価して投資判断や持株比率を決定している。

・ヨーロッパではEV促進のために、各自動車メーカーの販売する自動車トータルの平均二酸化炭素排出量に規制をかけた。超えたら罰金、余れば販売可能(クレジット化)

・トヨタの切札「全固体電池」「水素自動車」
トヨタはEVはやりたくないが、全固体電池は航続距離の短さというEVの弱点を覆せる。水素自動車についてはガソリン車と駆動機構が一緒なため、エンジン製造に関わる技術や雇用を守ることができる。

・オートリー(北米発)の代替ミルク=オーツミルク
 →実は代替肉よりも市場規模が大きい。21年上場
  植物性ミルク市場は、1位アーモンドミルク 
  2位オーツミルク。

・原発について
 原発ベンチャー「テラパワー」、小型原発「ニュースケール」など、新型原発への注目が増している。

・日本の生きる道
アンモニアを燃料とした火力発電
「クリーン水素」は再エネによる水素の製造が必要であるため、再エネに余力がある北欧等から調達するしかない。水素の搬送手段は確立されておらず、キャリアとしてのアンモニア利用の考えがあるが、それならアンモニアを直接燃焼させてしまえば良い。そしてその技術は世界ではあまり注目されていない。NOx除去技術においては日本は世界トップクラスである。

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Posted by ブクログ 2024年04月24日

体系的に現況が理解できました。
菅さんはスマフォ料金値下げによるデジタル化、カーボンニュートラルの提唱等、いい事やってるのに国民の人気は低かったなぁ

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Posted by ブクログ 2022年04月09日

購入した本。時代の潮流となっている「脱炭素」について学ぶために買った。


英BPのレポートには「2019年に既に石油需要はピークを迎えていた可能性がある」と発表した。ウクライナの戦争を踏まえると懐疑的だが一理あるとも思う。


テスラのイーロンマスクは「クルマそのものより、クルマを産み出す工場その...続きを読むものが商品」だと考えている。自動車の設計書を変えるよりも工場を変える方が、効率を高めることができるらしい。凡人にはない発想だと感じた。

EUのルール作りもうまい。燃費の良いEVを作れば、ガソリン車に対しての罰金を減らせる仕組みを作った。まずEVを自動車メーカーが作りやすいようにしたことが良いと思った。

トヨタはバランサーである。EVにも本気であり、水素自動車、自動運転車にも本気。そこが世界の潮流に乗り遅れないという気概につながる。一方で中途半端という指摘もある。

炭素除去技術はこれから脱炭素の中核を担う。米ストライプ社には注目。

アメリカの人口構造。2028年、49%が1981年以降生まれの人になる。若い人の流行を知るべき。

経済成長と二酸化炭素削減は両立できないもの。今までの資本主義から抜け出すシステムを作らないといけない。

脱炭素とアメリカ社会の流れには今後も注視していきたい。

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Posted by ブクログ 2022年04月09日

■ Before(本の選定理由)
グリーン・ニューディールという言葉は知っているが、まだスローガンであってビジネス(儲け)には繋がらないのでは?と思っている。

■ 気づき
GPIF・ブラックロック等の年金資産運用会社の多くが、ESGのための情報公開と対策を各企業に求めている。
呼吸の過程でメタンを...続きを読む排出する牛が、槍玉に上がっている。なんて身勝手。
洋上風力発電、植物性ミルクなど、既に市場に受け入れられる土壌が整っているものもある。

■ Todo
ウクライナ侵攻で目標達成は遠のくかもしれない。それでも、小規模原子力なり、ビジョン設定と計画を前に進めることを、止めてはいけない。

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Posted by ブクログ 2022年04月03日

「気候対策型経済」はすでに到来しており、今後その流れは加速し、メインストリームとなることは確実。
ここから派生し、電気自動車やクリーンエネルギーといった分野が活性化している流れが掴めた。
SDGsの足音はすでに目前まで迫っていることを理解しなければならない。

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Posted by ブクログ 2022年01月16日

【感想】
気候変動対策は次なるテクノロジーのフロンティアであり、巨額の投資マネーが動く一大市場と化している。
地球温暖化は多くの議論を生むトピックだ。一部では、「現在の地球温暖化は太陽の活動変化における気温変動の一環である」という論調のもと、人間の手が及ばないとの認識があるが、近年における科学研究の...続きを読む進展の結果、「人間活動の影響で温暖化が起きている」ことが科学者の大部分の間で合意されるところとなった。これに伴い、脱炭素政策とそこに用いられるテクノロジーは、各国の政治的駆け引きに使われる道具にしてはならず、気候変動は全世界が力を合わせて解決に導くべきだという認識が固まっている。

本書は、そのような気候変動をめぐる文脈の中で、各国がどのような目標を掲げているのかということ、またカーボンニュートラルを達成するために、企業はどのようなテクノロジーの開発を進めているのかに焦点を当てる。気候変動対策とは、他のどの分野よりもテクノロジーが重要視される。EV車、再生可能エネルギー、代替肉といった新技術の開発と導入は政府からの支援を取り付けやすいだけでなく、新たなビジネスチャンスの土壌となる。地球環境を改善しながら新市場を開拓できる未来性のある業界において、「グリーン・ジャイアント(再エネの巨人)」を含むトップランナーたちがどのような製品を開発しているのかを紐解いていく。
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気候変動に対応した製品開発で追い風を受けている業界の一つに「自動車業界」がある。具体的にはEV車の開発だ。

EV車の開発でトップを走るのはテスラである。
テスラの躍進を支えたのは大規模工場の獲得による電気自動車製造の低廉化と、「充電」というインフラの整備であった。2012年に自社専用の急速充電ネットワーク「スーパーチャージャー」の設置を開始し、現在は世界の2500地点以上で約2万5000基が運用されているほか、2021年には全てを再生可能エネルギーで賄う計画も発表している。

一方、テスラと方針を異にするのはガソリン車の王者トヨタだ。
現在の時勢は、トヨタには非常に都合が悪い。もともとハイブリッド車のプリウスを皮切りに省エネ車製造の先頭を走ってきたトヨタだったが、世界がカーボンニュートラル化を背景としたEVシフトに代わると、ハイブリッド車は「エコ」だとみなされなくなった。
そのような中で、トヨタはEVに全面的に舵を切らずに、「全固体電池」と「水素自動車」の開発を平行で進めている。(これは本書執筆時点の状況であり、2021年12月14日にはバッテリーEV戦略を発表し、電気自動車に本格的に注力していく旨を宣言している)
全固体電池はその名の通り固体を用いるのが一番の違いだ。全固体電池はリチウムイオン電池に比べて劣化が遅く、電池の容量も大きくすることが可能で、車載向けでは航続距離1000キロも視野に入っているほか、丈夫で発火しにくく、高速充放電も可能とされる。リチウムイオン電池が持つあらゆる弱点を克服できる、まさに「次世代の電池」だ。
水素は、燃料電池に酸素とともに取り込むことで電気を生み出す。航続距離は850キロほど。水素エンジン車は水素を直接燃焼させることから、大半の部品で従来のガソリン車のものを活かすことができる。
EV、電池、水素自動車といった全方位外交は、ノウハウと莫大な資産を持つトヨタだから行えることであり、世界のトレンドをどちらが握るのかは、今後のテクノロジーの進化と政府の環境方針次第であるといえるだろう。
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以上は本書の内容の一例だが、その他にも太陽光・風力発電をめぐる「グリーン・ジャイアント」の動向やビヨンドミート開発の最前線など、気候変動を食い止めるためのテクノロジーが具体的に列挙されており、本書一冊で世界のトレンドを確認できるようになっている。
加えて、本書はテクノロジーだけでなく各国のビジョンにも触れている。各企業がどこに照準を合わせるかは政府が定める「排出規制」「環境方針」次第なところもあるため、政府が考えている現在地と未来へのロードマップをまず丁寧に読み解くことが、環境対策の最前線を押さえる重要なカギになる。本書はこれに伴って、グローバル目標→国ごとの方針→企業の開発動向、という流れに沿って説明を行っており、これが分かりやすさと詳しさを両立させている点だと感じた。
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【まとめ】
1 現在、再エネ業界で何が起こっているのか
今、世界が向かっているコンセンサス自体は極めてシンプルだ。目標は「産業革命前と比べ、平均気温の上昇を1.5℃以下に抑える」ことであり、そのために2050年までに「温室効果ガス(GHG)の排出を実質ゼロにする」(カーボンニュートラル)というのが大きな流れとなっている。これはもはや「可能性の議論」ではなく、すでにあらゆる人間活動の前提となっている。

本書では、新たにエネルギー業界の盟主へと躍り出てきた企業たちを「グリーン・ジャイアント(再エネの巨人)」と呼ぶ。今、ようやく時代が追いつき、彼らはすでに世界のエネルギー変革の主役となっている。同じような逆転劇は今後、エネルギー業界にとどまらず、あらゆる領域で起きていく。なぜなら、もはや「脱炭素」の動きは各国の政治やイデオロギーの議論ではなく、すでに巨額の「マネー」が動く領域になってしまっているからだ。各国でCO2排出権に価格をつける検討が始まり、世界のマーケットを動かす機関投資家たちは、気候変動への取り組みが足りない企業から資金を引き上げている。


2 カーボンニュートラル狂騒曲
2021年8月に発表されたIPCCの第6次評価報告書では、「人間の影響が大気、海洋および陸域を温暖化させてきたことに疑う余地はない」と、ダメ押しの一打が放たれた。国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、「人類への赤信号だ」と指摘している。
温度変化の目標は「2℃上昇」ではなく「1.5℃上昇」。気候変動の分野では1.5℃と2℃の変わり目を「ティッピングポイント」と読んでいる。ティッピングポイントというのは、臨界点のようなスイッチが入るポイントのことだ。温度はゆっくりゆっくり上がっているが、ある一点を超えると影響の出方がガラッと変わり、いくらその後に温暖化を止め、気温が上昇しなくなったとしても、氷は解け続けてしまう。そのようなスイッチが入ってしまう恐れがあるのが「+2℃点」である。

カーボンニュートラルは、全世界が具体的数値を目標に掲げながら取り組みに当たっている。
一度はパリ協定を脱退したアメリカも、バイデン大統領の就任に当たり復帰。今後8年間で総額2兆ドル(可決時には1兆ドルに減額)以上をグリーン化につぎ込む「アメリカ雇用計画」の発表や、世界の40の国・地域の首相を束ね「気候サミット」をオンライン開催するなど、気候変動対策を矢継ぎ早に打ち出している。
世界の温暖化対策で先頭を走るのは欧州である。EUの欧州委員会委員長のウルズラ・フォンデアライエンは、2030年の温室効果ガス55%減(1990年比)を達成するための野心的な包括案を打ち出しているほか、「国境炭素税」の導入を検討している。
また、発展途上国の中国も気候対策に前向きだ。
石炭火力発電所の新設が相次いでいる中国だが、一方で2020年には7161万キロワット分の風力発電所を新設しており、これは2019年に世界全体で建設された風力発電の総量を上回る。太陽光発電も4820万キロワット分を新設し、2030年までに両者の発電能力を12億キロワットまで拡大させる目標だ。


3 グリーン・ジャイアント
2020年末、米のエクソン・モービルが、新興再エネ企業に時価総額を一時的に抜かされるという事件が起こった。抜いたのは無名の地方エネルギー企業である『ネクステラ』だ。
1992年当時、ブッシュ政権では風力発電への助成が始まっていたが、2000年代に入ると、各州が地元の電力会社に再生可能エネルギーの使用を義務付けるようになる。すでに風力発電へと進出していたネクステラは、規模の経済で他社より発電機を安く購入し、安定的な建設と運用を実現していく。以後10年間で、テキサス、カリフォルニア、中西部などで次々風力発電プロジェクトを立ち上げると、さらに2006年には、太陽光発電所も手掛けるようになる。これも、太陽光発電への政府補助が生まれるタイミングを捉えたものだった。つまり、ありふれた地方電力会社の一つに過ぎなかったネクステラは、再エネをめぐり連邦や州政府の規制が変わるタイミングを的確に捉えることで、徐々に転身を図ってきたのである。

ネクステラを始めとした現在世界を席巻している再エネ企業は、いずれも旧来のエネルギー企業だったのが、この20年のどこかのタイミングで再エネに賭けて「転身」したものであり、テクノロジー業界のように、ピカピカのベンチャーがいきなり登場したわけではない。しかし、再エネのコストがまだ高く、代替手段としか考えられていなかったころから、その可能性を見抜き、建設や導入を優先させてきた。21世紀に入り、テクノロジーの進化と低価格化に合わせて発電性が伸び始めると、欧州メーカーがリードしていた市場に中国メーカーが一気に台頭、採算がとれる価格までコストが下がる。これがグリーン・ジャイアント登場の土台になったのだ。


4 気候変動とマネー
近年投資家たちが、世界の石炭火力を始め大量のCO2を排出する新案件に対し、撤退を迫るムーブメントを起こしている。投資マネーの世界では「石炭はリスク」という前提がすでに共有され始めている。
こうした手法は「ダイベストメント」と呼ばれている。投資家たちが、石炭火力などを手掛けるエネルギー企業の株式売却や、案件に融資する銀行に融資引き上げを提案する行動のことであり、エネルギーや資源会社だけでなく消費財メーカーの間でも加速している。
また投資家だけでなく、アップルやマイクロソフトといったテック系製造企業が、事業全体、製造サプライ・チェーン、製品ライフサイクルにおいてカーボンニュートラルにすることを目指し、取引先に再エネでの部品や素材の生産を要求している。


5 自動車メーカー
世界がカーボンニュートラルに向かう中で、各国の政府は一気に「EVシフト」に舵を切り始めている。IEAのロードマップによると、現状世界の1%にとどまるEVのシェアが2030年には20%、2050年には86%を占めることになる。

EV界の巨人がテスラだ。
テスラの躍進を支えたのは大規模工場の獲得による電気自動車製造の低廉化と、「充電」というインフラの整備であった。2012年に自社専用の急速充電ネットワーク「スーパーチャージャー」の設置を開始し、現在は世界の2500地点以上で約2万5000基が運用されているほか、2021年には全てを再生可能エネルギーで賄う計画も発表している。

これに対して欧州メーカーは、各国政府による規制と自動車産業が一体となって動く「ルールメイキング」を軸にEV市場を立ち上げようとしている。
欧州の自動車規制は「CAFE」と呼ばれている。これは自動車メーカーが販売したすべての新車の燃費の平均を算定し、その数値が基準を下回らないように義務付けるものだ。2021年現在は走行1キロ当たりのCO2排出量を5グラム以下することが求められている。これを達成するための燃費は約20キロ/リッターであり、達成できない場合は当局に罰金を支払う義務が生じる。燃費20キロ/リッターがどういうレベルかというと、日本ではトヨタのプリウスや日産のノートなど、ハイブリッド車しか達成できていない水準である。純粋なガソリン車では、ほぼ軽自動車しかクリアできないレベルの厳しい基準だ。
自動車メーカー側からすれば、罰金を減らすためにはEVを開発するしかない。というのもCAFE規制では、EVは走行中にCO2を排出しないことから「ゼロ」とカウントされることになるからだ。ここには巧妙なからくりがあり、カウントが「ゼロ」のEVを1台売れば、もう1台販売した車の燃費が約12キロリッターでも、罰金を逃れることができる。また、基準を超過達成することができればその分を「クレジット」として他社に販売することもできる。欧州はこのように独自のルールを一気に強化することで、自動車メーカーのEV化を促しているのである。

この規制を受け、世界2位の独フォルクスワーゲンは2030年までに欧州販売の7割をEVにすると打ち出したほか、BMW、ボルボ、ランドローバーといった会社もEV開発を進めることを明言した。

対する自動車業界の巨人がトヨタだ。
もともとハイブリッド車のプリウスを皮切りに省エネ車製造の先頭を走ってきたトヨタだったが、世界がカーボンニュートラル化を背景としたEVシフトに代わると、ハイブリッド車は「エコ」だとみなされなくなった。ガソリン車を主体とするトヨタには大きな打撃である。
トヨタは現時点ではEVはやりたくない、というのが本音だ。現在の電池技術では、製造過程(鉱物の採掘過程)においてすでにCO2を大量に排出しているため、脱炭素の解になっていないからだ。
トヨタが力を入れているのは「全固体電池」と「水素」である。
全固体電池はその名の通り固体を用いるのが一番の違いだ。全固体電池はリチウムイオン電池に比べて劣化が遅く、電池の容量も大きくすることが可能で、車載向けでは航続距離1000キロも視野に入っているほか、丈夫で発火しにくく、高速充放電も可能とされる。リチウムイオン電池が持つあらゆる弱点を克服できる、まさに「次世代の電池」だ。
水素は、燃料電池に酸素とともに取り込むことで電気を生み出す。航続距離は850キロほど。水素エンジン車は水素を直接燃焼させることから、大半の部品で従来のガソリン車のものを活かせるというのも、トヨタにとっては嬉しいポイントだ。


6 気候変動とZ世代
アメリカの若者の間で、バーニー・サンダース、アレクサンドリア・オカシオ=コルテスといったプログレッシブ(進歩派)が人気を集めている。
ニューヨークのZ世代の若者にとって、「気候にいいことをしよう」というのはかなり一般的である。それは今後地球温暖化が進んだ未来において被害を受けるのは自分たちだという当事者意識から来るものである。同時に、貧富の差が拡大し続ける米国においては、各企業が環境に気を配らず利潤を追求する資本主義こそが悪の元凶であり、貧富の差を是正するための一つのピースが気候変動なのだ。彼らの間では既に資本主義への信頼感が薄れ、社会民主主義への支持率が高まっているというデータがある。


7 日本に残された勝ち筋
以前は京都議定書の発効など、世界をリードする環境先進国であった日本だが、東日本大震災による原発停止により火力大国へと変貌する。加えて2012年からの太陽光バブルにより、玉石混交の企業たちが太陽光事業に参入すると、発電を制御する電力会社は再エネにアレルギーを感じてしまった。日本がLNGへの依存、石炭火力の復活といった旧エネルギー政策を推し進めていた時期に、世界はパリ協定に向かっていたのだ。
この時期の世界とのギャップは、日本のエネルギー業界における技術的空白を生み出す。再エネへのシフトが停滞する中で、太陽光のシェアはすべて中国に奪われたほか、次世代の本命である風力、特に洋上風力では、1社も国産メーカーがない状況だ。大型のLNG火力では、かろうじて三菱パワー(2021年10月に三菱重工に統合予定)が残っているが、世界がカーボンニュートラルに向かう中では、ガス火力の需要もそこまでは伸びない。

これからの日本がカーボンニュートラルに移行するためにはどうすればいいのか?
まず規制緩和だ。太陽光発電においては、これまで活用できなかった「荒廃農地」を実現し、太陽光発電の絶対量を増やす。また、送電網の問題を解決するため「ノンファーム接続」を推進するほか、イノベーションによる発電コストの削減も重要である。
風力発電においては、風車の大型化による発電量の増加とコストダウン、風車数の増大、洋上風力のサプライ・チェーンを作ることが喫緊の課題だ。
今注目されているのは、火力発電にアンモニア(燃やしてもCO2が出ない)を活用し、2050年までに「ゼロ・エミッション火力」を実現することだ。JERAはすでに2021年6月から、愛知県の碧南火力発電所の燃料にアンモニアを混焼させる実証実験を始めており、2024年度中に20%へ混焼割合を引き上げることを目指している。そして最終的には、2050年までにアンモニアだけを燃やす「専焼」につなげて、CO2排出をゼロにしたい考えだ。

そして、ゲームチェンジの鍵を握るのは原発だ。2050年のカーボンニュートラルには原発は必要不可欠というのは、日本のエネルギー構成を見る限り事実である。しかし、現在は原発に関して将来の具体的な方針が何も示されていない状態である。原発の議論を避けてきた日本では、新型原発のような安全性の高い原子炉への建て替えなどの議論が起こっていない。このまま騙しだまし古い原発を動かすような姿勢を取っていれば、再エネにおけるイノベーションは生まれないままだろう。

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