行動経済学はダン・アリエリーさんの本で興味を持ち、その後も何冊か読みましたが、
どの本も同じような内容なので、これ以上読む必要はないと思っていた分野の本です。
今回この本を手にしたのは、著者が佐藤雅彦さんだから。
人間の「考え方」を深く研究している佐藤雅彦さんは行動経済学をどのように捉えているのか
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どの部分に強く着目し、それをどのように説明するのかを知りたくて読んでみた。
行動経済学を知らない人が、ざっくりと理解するにはいいのではないでしょうか。
マンガにしてはゴチャゴチャしすぎですが、文章だけで説明されるよりも遥かに分かり易い。
あとがきに、行動経済学をどうやって皆に伝えたらよいかをいろいろと考えたことが書いてあった。
・展覧会にする … 手間とコストの割に体験する人数が限られるし、未来に残らない
・芝居や映画やドラマにする … 役者を探すのも大変だし、そんなものを観に来る客がいるのか疑問
・サザエさんにネタを提供し放映してもらう … サザエさん製作チームに伝はないし、採用されそうにない
「そうだ、自分たちで漫画化すればいいじゃないか。」ということでマンガ本にしたのだとか。
マンガにしたことで、うまく読者に体験させることに成功したのが、第7話の「代表制ヒューリスティック」の説明の仕方。
これは、物事を見聞きした時に、既に抱いているイメージに囚われて、直感的に偏った判断をしてしまうことで、
まず、絵のないセリフだけで2ページのマンガを読ませる。
「拳銃を持った男がいた」「女は金と引き換えに白い粉を手に入れた」「遅かったな」「白い粉を男に渡した」…
これはヤバイ話だと大多数の人が思う。
その後に、絵入りで読ませるというもの。
ついさっき自分の頭で想像したことと、実際はどうだったのかが全く違うことに驚かされる。
本書は、マンガで23の要素を説明しているが、それ以外は文章で10項目ほど簡単に紹介している。
「デフォルト効果」では、私が最も効果的な使用例だと感じている「最高裁判所裁判官国民審査」が取り上げられていた。
やめさせたい人に×を書くアレです。
どんな人か良く知らないし、やめさせたいと思う以前にそもそも関心がない。
自分には影響なさそうだし、こんなことに×を書くなんて面倒なだけ。
デフォルトが〇だから、誰も罷免されない。
もしデフォルトを×にすれば、全員が罷免されるという、思い通りの結果を導くための証拠ねつ造システム。
あなたがどのような行動をとるかを見越して作られた投票方法なのです。
「確証バイアス」は、思い込みによる判断の偏りで、クイズで体験させている。
ある規則で並んでいる数字があります。(?)にはどんな数字が入るでしょうか。
5-10-15-(?)
5の倍数で順に並んでいると規則をみつけ「20」と答えたでしょう?
「20」も間違いではありませんが「30」も正解です。
では次の(?)にはどんな数字が入るでしょうか。
5-10-15-30-(?)
ある規則が「前の数より大きい数が来る」なら30より大きな数であれば正解です。
ある規則を発見すると、別の可能性を排除しがちです。
行動経済学の復習をしたい人にもいい本でしょう。