藤原無雨のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ東京で失敗して故郷の町に戻ってきたクザーノがらくだのカサンドルとともに砂漠へと旅立ったのは、「東京から運んできた悲しい水分を全部蒸発させる」ためだった。やがてたどり着いた町で新たな暮らしを始めるクザーノを中心に、ホヨー、ラモン、クザーノ、コイーバ、ロメオ(すべて葉巻の銘柄)の5代にわたる父と子の系譜。日本であり日本でないふしぎな世界で彼らが生き見た景色が、差異と反復の語りによって何度も塗りなおされていく。マジックリアリズムのゲーム的な焼き直しのようにも読めて評価が割れそうだけど、個人的には楽しく読めた。
【メモ】
・読み始めてしばらく、クザーノはニコラウス・クザーヌスにちなんでいるのかなと想 -
Posted by ブクログ
まるで、繰り返されながら拡大するゾエトロープが如く、アンダンテのリズムで振られていたはずのメトロノームがやがて振れ幅を拡大していく。
その速度を落とすことなく、未来に過去に振り動く。振り動かされながら、歩かされて行く。
初めて『水と礫』を読んだ感想はそうだった。
これは礫砂漠のごとく様々な技巧と躓きを散りばめられたページを、彼らの歩みと共にめくって行く。
この一冊丸ごとがそのまま「旅」。
物語を追う旅ではなく、存在を追う「旅」だ。
そのラストに緩やかに込み上げてくる感情の揺れは、心地よく味わうことができた。
しかし流石「文藝賞」作品。
もしあなたが、彼らと共に一筋縄ではいかない「旅」を体験し