渡辺守章のレビュー一覧
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即興で素晴らしい詩を詠み、音楽家として美しい歌を披露、熱血漢な剣客でもある知的で多才なシラノ・ド・ベルジュラック。しかし唯一特徴的な鼻が災いして恋には後ろ向きな男性でもある。シラノは従妹ロクサーヌに想いを寄せているが、ロクサーヌが容姿端麗なクリスチャンに心奪われていることを知り、ロクサーヌとクリスチャンの恋がうまくいくようとことん脇役に徹する――。
シラノというキャラクターに惹かれる理由は、日本の古き良き武士道のような気風を感じるせいかもしれません。表向きは豪気に振舞いながらも、心のなかでは不器用なほど素直でまっすぐな想いを抱えている。自分の心を偽り、男女の恋の成就に尽力する。彼女の喜ぶ顔が -
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男女2人しかいない、しかもあまり動きのない劇の「アガタ」と女優が独りで電話をしている「声」の2篇。「アガタ」を朝読み、「声」を夜読んだ。どちらも実際の舞台で観ないとよくわからない。けれども教会の鐘や寺の鐘が鳴り止んでもいつまでも耳の中で鳴っている気がするように読み終わってからも電話で話す「声」が聞こえてくる気がするし、寄せては返す波のように「アガタ」の男女の呼びかけがリフレインする。昔、国語の教科書にあった、上田敏の訳詩「私の耳は貝の耳/海の響きを懐かしむ」という詩を思い出した。コクトーの詩だったかな?
共通するのは濃密な時と過ぎ去った過去。悲劇の予感。 -
Posted by ブクログ
衒いの無い清純で典型的な筋書きの物語であること、そして読む側にアイロニーの構えを要求しないこと。これが古典の要件ではないだろうか。或いは、古典という金看板が無ければ、もはやアイロニー抜きで純粋に物語を愉しむことができなくなっている、そういう状況なのかもしれない。
"俺たちはな、ただ名前ばかりがシャボン玉のように
膨らんだ、夢幻の恋人に恋い焦がれている。"
片想いの巧みな表現。
"恋する時は、才気など、わたしはいらぬ。
そんな才気の遣り取りに現を抜かす、許せない罪だ!
それにいつかは必ず、その時が来る、
――それを知らずに終わる奴は、哀れとしか言