建築だけでなくアート全般、映画、演劇、ダンス、音楽、小説、食べ物、サッカー、マラソン等多方面から著者の興味あることが描かれている。
表現がきれい、1つの絵画を表現するのでも言葉の使い方がうまい。著者の感性の鋭さを感じる。
P30 「都市についたら」その街で一番高いところに行け
P34 複雑な起伏を
...続きを読む持ったアクロポリスの大地の上に、パルテノン神殿は確かな水平面をつくり出していた。フラットな場所をつくることによって初めて人間の様々な営みが可能になる。もしかしたら、雨風をしのぐ屋根の架かった平らな床をつくることこそが建築の最大の役割なのではないか。
P85 ひとの身体に張り巡らされた血管のように、くまなく敷かれた水道の上に脈々と築き上げられた大都市、それがローマ。まるでその水道の存在を地表に顕在化するかのように噴水があちらこちらに設置されている。
P90 同じ日に見比べたいバロック時代の教会、共通点はバロック芸術が楕円を用いることで運動を誘発し、身体的空間体験を与えてくれること
・サン・カルロ・アッレ・クアトロ・フォンターネ聖堂(ボッロミーニ)
縦の動き
長軸で入り口と祭壇を結んでいる
天を仰ぐと空間に吸い込まれていく’ような感覚
天井の中心にはトップライトが入るように小さく塔が設けられており、そこから柔らかい光が間接的に入り込む
小さなドームの天井(教会の中心)には、まるで十字架のようにつくり込まれた鳩のレリーフがあり、それを下から見上げていると、あの鳩の向こう側には天国の風景が広がっているのではないかという想像が膨らむ
目線は自然と奥へと引っ張られ、そのまま垂直方向に展開していく
・サンタンドレア・アル・クィリナーレ聖堂(ベルニーニ)
横に揺さぶる
短軸で入り口と祭壇を結んでいる
建物に入るや否や一気に空間が迫ってきて、一体感がある
目線は自ずと水平方向に広がり、その地平線の上を色鮮やかな彫刻が美しく配置されている
遠近法を強調するかのように、サイズをどんどん小さくした六角形の装飾で埋め尽くした天井の中心には、楕円の天窓が開けられており、オレンジ色の温かい光が降り注ぐ
P126 建物の土台である基礎を地表に露出して持ち上げることで建築を浮遊させてみたサヴォア邸は、若き日に感銘を受けたギリシャのパルテノン神殿をコルビュジェなりに解釈した結果。丘の上にずっしりと自由な造形からなる塊としてつくったロンシャンの礼拝堂は、同じくギリシャのサントリーニの集落でみつけたフォルムを結晶化したもの。そして遂に建築が動きだし、大地からせり出すように運動するようにつくったのがラ・トゥーレット修道院。
P128 建築というのは常に個別的であり、抽象的な普遍性を下敷きに思考されたとしても、最終的には具体的な場所に、顔の見える建築の使い手のために設計せねばならない。
P200 コールハースという建築家は、空間そのものをヴォイドと考えている節があり、そうしたヴォイドトヴォイドをどのようにして接続するかという、動線計画に最も関心があったと思われる。
例)カサ・ダ・ムジカ 中心に窓のある明るいコンサートホールが核となるヴォイドとして配置され、それ以外の空間は来客を引き込み、ここにつなげるようにして楽しませる動線空間の集合体ではないか
P263 ミースは、建築を構成している部位を極限まで分解した。それを自立させることで新しい強度ある建築を目指した。
P268 人間を制御可能なものとして捉えているあたりが何だか西欧人らしい
P276 「批判的地域主義」:モダニズムが消してしまった場所性は回復可能とする概念。アアルト、ウッソン、シザなど地理的に辺境にいる人ほど新しいものを開拓するポテンシャルが高いのかもしれない。