小塩隆士のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
恐らく同じ話を聞いても文系と理系という最も大雑把な括りですら捉え方が違うと思われ、その道の専門家が属する集団によって考え方のテンプレがあるという話はよく理解できる。経済学者が効率性と公平性の2軸で思考しているという事実は興味深い。ただそれを自覚できるかどうかはまた別の話。それには高度なメタ認知能力が必要だ。著者の専門が主流派経済学から離れていること、アカデミア以外の職歴があることをその理由として記しているが、もともと図抜けて頭が良い人なのだろう。
こうして頭の良い経済学者がせっかく財の効率的で公平な分配方法を提案しても、困った人を助ける政策が大嫌いな自民党が政権与党でいる間は実現しない。さらに本来政治で救われるべき最も困った人たちが率先して自民党に投票するものだから先は暗い。経済学者も無力感を感じるだろうな。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ誰一人悪くならないで、少なくとも一人が良くなることをパレード改善的、という。
一人を良くするためには、誰かが悪くなる場合は、パレード効率的、という=パレード改善的になる余地がない。
補償原理=悪くなった人の分を補っても、より誰かが良くなること=カルドア基準。実際には実現しない。
GDPが増えても、国民全体が幸せか、とは別問題。
選択的夫婦別姓はパレード改善になる。しかし反対の人はそういう社会が嫌だと思っている。
社会保障は、社会連帯のみで考えるべきではない。給付と負担の損得勘定も正しい。在職老齢年金があるために働き控えをすることは、社会から見ると正しくないが、個人から見れば正しい。生活保護も同じ。
貧困の罠はモラルハザードの典型例。
経済学では幸せを効用で図ろうとする。
経済学では生活必需品こそ消費税を書けるべき、となる。需要の価格弾力性が低いため、税収が多くなる。そのほうが効率的、と考える=ラムゼーの逆弾力性命題。
低所得者ほど影響がでるが、それは所得補償などの再配分で補うほうが効率的、と考える。まず効率性を考えて、公平性はそのあと考える。
たばこ税は、この典型。たばこは需要の価格弾力性が低い。たばこ税は2兆円で大きな財源。たばこ税を上げるのは、税収の面では優れているが、負担しているのは主に低所得者。
税率は一律が望ましい。食料品を定率にすると高所得者のほうが恩恵が大きい。複数税率にするよりも所得によって給付するほうが効果的。
では、高所得者のほうが支出が高い項目に課税したらどうか。金持ちほど教育費にかけているが、教育費の消費税を高くすることは社会全体の労働生産性を考えると望ましくない。
消費税で所得再配分をすることは難しい。
所得格差は望ましくない、という格差回避をリスク回避という個人レベルに翻訳している。個人はリスク回避性が高いため、社会レベルの格差問題を個人に置き換えて訴えるほうが理解を得やすい。
格差回避は社会の問題、リスク回避は個人の問題。
ベンサム的立場は、社会全体の幸せが一人に偏っていようと、総数で多ければいい。効率性を重視。
ロールズ的立場では、最低の幸せの人を底上げしようとする。公平性を重視。
分けて考えることはできない。
所得格差を小さくしたら経済成長が高まる、という裏付けはない。
ベーシックインカムと負の所得税は、労働意欲を損なわない巧妙な仕掛け。
市場メカニズムに頼るのは楽観的すぎる。厚生経済学の第一定理は狭い範囲でしか該当しない。ただし、競争が良くないわけではない。前提条件が間違っている事が多い。失敗例は、公害、情報の非対称性、など。
医療保険の強制加入は効率的か。医療保険の逆選択があるとうまく行かないため、強制加入としているというのが経済学的な説明だが、公平性の観点から強制加入を説明できるのではないか。医療保険は、所得の移転効果もあるがこれを強調するのは無理がある。
医療保険の問題点は、保険料にリスクに応じた差をつけられないこと、高額医療費をどうやって賄うか。
教育も市場の失敗がありうる。教育の効果にはギャンブル性がある。公平性を教育前のチャンスに求めるか、教育後のアウトプットに求めるか。
情報収集にはコストがかかる。世の中にはそれをパスできる仕組みがある。年功序列はそのひとつ。成果主義を徹底するには、成果を正確に収集する事が必要。AIによる人事考課は有効かもしれない。
社会保障制度の中で年齢は有効か。
セカンドプライスオークション=嘘をついても意味がない=正しい自分の評価をいうことが一番いい。しかし困ったことになるかは不明。
議論の中に時間を組み入れると、厚生経済学の第一定理は成り立たない=動学的分析。
人口が順調に増加すると、世代間公平性は問題がなくなるが、減少すると問題になる。利子率と人口増加率が同じであれば問題はない。先進国では利子率のほうが高いことが普通。
人口減少では、社会保障は賦課方式よりも積立方式のほうが適しているが、積立方式は人々の行動には影響は及ぼせない。賦課方式のほうが易しい。
人口減少社会では、賦課方式は縮小せざるを得ない。マクロ経済スライド制。他の国でも縮小の方向にある。
人口減少では貯蓄が減りやすい。将来世代の効用関数は今と同じとは限らない。
国民貯蓄という尺度。将来世代に残す分の総計。医療や介護の給付は消費に該当する。
国債は国の借金だが、民から見れば資産、借金しただけならいいが、それが消費されれば、国民貯蓄は減る。
対外純資産は安心材料だが、将来の社会保障の財源に使えるほどはない。
現在の社会保障制度改革は、将来世代に先送りすることになる。少子化がさらに首を絞める。
社会保障は親孝行の社会化。そのため少子化になった。これを止めるには、公的な高齢者保護を見直す必要gああるのではないか。 -
Posted by ブクログ
非常に幅広く、浅く、時に深く。
教科書に載っているような基礎的な内容から、現代日本に於ける内容まで網羅されており、かつ高校生目線での説明もあって、かなりスッと内容が入ってきました。
私も高校生なのですが、書中に書かれているように、高校生以外で経済学を学びたい!という方でもかなり満足できる内容だと思います。
寧ろ、ある程度、普段政経情報を触っていないと難しいかもしれません。そういう意味では高校生ではなく大人向けと言っても過言ではないと思います。
初版は2002年と少々古いですが、現在のものは最新版で書き換えられており、データや文言(アベノミクスなど)も新しく、大変タイムリーな話題も多いです。
議論されている内容を両者目線で解説していたりと、その他にも経済学入門教材としてかなりレベルの高い書籍でした。 -
Posted by ブクログ
高校生のための…というタイトルでしたが、
第5.6章は大学生の私でも少し複雑な内容だと思いました。(私の理解力が低いだけだと思いますが…)大学生で経済学を専攻してる訳ではないのですが、授業に出てきた単語が出てくると少し嬉しくなるタイプの人間なので、途中で飽きてくるようなこともなく、また、
かなり細かく事柄を説明してあるので概ね
分かりやすいです。『おわりに』で昨今の経済学部専攻の大学生のレベルを問題視して
高校生に経済学に関心を持って貰いたい反面、高校生には経済学ではなく、学校の課目
(教養)をみっちり勉強して欲しいという矛盾にジレンマ陥っていると述べており、学問を究める人の苦悩を感じました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ<内容紹介より>
わが国の高校では、経済学がほとんど教えられていない。「政治・経済」という科目に経済学の基礎が説明されているが、この科目自体の影が薄い。一方、世の人々の経済に対する関心はけっして低くない。本書では高校生にもわかるように、ポイントをきちんと抑えながら、経済学の基本的な考え方を解説する。理論そのものよりも、現実の経済問題の解決に経済学の考え方がどのように生かせるかという、実践的な面を重視する。
……筆者はこの本を書くために、ゼミの学生に高校で使っていた「政治・経済」の教科書を見せてもらったり、本屋で受験参考書をめくったりしてみました。しかし、正直言って、そこに書いてある経済学の説明にまったく魅力を感じませんでした。中身が断片的である上に、近年の経済ニュースを散りばめただけです。……
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ちくま新書の「教養力」というフェアで販促されていました。
高校生にもわかる、という文句につられて購入しましたが、とてもわかりやすく、かみ砕いて解説されており、とても参考になりました。
よくニュースで出てくる財政政策や「金融引き締め」などの単語についても説明があり、ニュースでたびたび耳にする現在社会のかかえる課題について、理解が進むように思います。
年金問題をめぐる世代間の対立や、財政健全化(支出の抑制)と景気対策(公共事業の拡大等の予算拡充)などの相対する考え方双方の理論的な裏付けも説明され(どちらが「より望ましいか」という判断は示されませんでした)、各自の社会への視点や立場を考えるきっかけになると思います。
ただ、「高校生から」と銘打ってありますが、実際に社会経験が少ない高校生よりも、社会人となってあらためて経済学について復習しよう、という大人の方が読んでいて「実感として」納得できる部分は多いだろうと思います。