最後の花摘み

最後の花摘み

980円 (税込)

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端整な日本語のセンテンスを集めた一冊。どこか滑稽で童話的な、或いは不気味で物悲しく透き通った一行物語と、空想の上澄みを一滴一滴採集したアフォリズムを採録。加えて随想的な創作と詩的な思索による短文、断章を綴ったノートを再構成。一節は数行と短く内容も独立しているため、気が向いたときに開いたところをパラパラ読んでも楽しめます。

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【一行物語】

毎月どこからともなく「絶対に開けないで下さい」と書かれた小包が届き、捨てることもできないので、倉庫に小包が山積みになっている。

雪の結晶が溶けるのを忘れて、夏に置き去りになっている。

行き先を告げてから、もう十五年間タクシーに乗りつづけているのだが、いまだに目的地に辿り着く気配がない。


【アフォリズム】

消去法が貴女を消してゆく。

伝えられない想いばかりが彼女を焦燥させ、疲れた彼女は自分のために紅茶を淹れた。カーテンの向こうから午後の光が射してくるとき、彼女を使い古したすべての文脈に彼女は服従しなかった。


【最後の花摘み】

ルビをふることのできない感情ばかりが、生まれては消える。

横殴りの優しさが君の感情をあやして、願いは昨日の果てまであまねく降り注いだ。僕は封をした幸福を君に届ける準備をしながら珈琲を飲み干すと、赤いリボンを丁寧にむすんで窓の外に広がる寒空を見上げた。

あなたが素敵であればあるほど、あなたの隣に居てはいけない。

残響 / ゆらぎ / ピアノ線 / 致死量


──本文より抜粋

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