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「ネガティヴな自己物語をポジティヴに書き換える心理療法」―ナラティヴ・セラピーは、しばしばこれまでそう理解されてきた。けれどもそれは大きな誤解である。「人の内側に、表面には現れないその下に、本当の自己や本質がある」といった近代的で心理学的な前提こそ、ナラティヴ・セラピーが問い直し、離れようとしたものなのだから。
「物語」は私たちを支え励ますと同時に、縛り、序列化し、管理する。ナラティヴ・セラピーとは、物語が権力の場であることを何より自覚した上で、語ることにおいてそれをすり抜け、逃れ、別な仕方で語るためのスペースを切り拓こうとする実践である。「再著述」や「語り直し」は出来事や自分についての見方を変えようとする「技法」ではなく、異なる語りという「行為」が異なる現実を立ち上げるという、その協働的な連なりそのものを指す。語るたびにズレをはらみ、語り切れない空白にも伴われて「みたことのない風景」へと私たちを運ぶ、今あらためて見えてくるのは、そんなナラティヴの像。
マイケル・ホワイトが参照し続けたフーコーの権力論とデリダの余白論にバトラーのパフォーマティヴィティ論を再接続しつつ、ケア、ジェンダー、尊厳、支援倫理など今日的テーマを社会政治的文脈(socio political context)とつないで考え続けてきたナラティヴ・セラピーのポテンシャルを、多声と認証に向けて押し広げる。
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