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深夜の研究棟。性反応の論文を二十本書いてきた准教授・鷹宮冴子は、被験者アンケートの自分の欄にだけ、毎回斜線を引いてきた。
「…私は不感症よ」
仮説を検証するため、彼女は指導院生の永井に協力を頼む。条件は三つ。専門用語だけで口述し続けること。俗語が一語でも録音されたら仮説は棄却。棄却なら、次の試行は被験者が自分の口で要求すること。
レコーダーの赤いランプの前で、冷静な実況は一段ずつ崩れていく。
「今、『やだ』入りましたね」
訂正するたびに語彙は溶け、「イク」の録音回数だけが増えていく。
触診、口唇接触、実験台の上での本試行。眼鏡を曇らせながら、それでも彼女は論文の引用の誤りだけは訂正し続ける。
「追加試行を要求します」
「中に…出して」
クール眼鏡の巨乳准教授の、十七回目の懇願。フルカラー。
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