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薬代のツケは銀貨十二枚。万年銅級冒険者のカイは、今月も手ぶらで森の魔女ロゼッタの薬屋を訪ねた。
「試作の惚れ薬、効き目を試す相手が要るの」
効き目は砂時計一回ぶん。砂が落ちきったら二人とも正気に戻って、それでおしまい。引き受ければ今月分のツケはチャラ。
飲まされたのは、ただの甘い水だった。
村では長生きの魔女と目を逸らされ、求められたのがいつ以来かもわからない。帳簿のツケは、いつでも消せた。消したら、もう来ないから。
「薬のせいよ。あなたは悪くない」
余裕の笑みで迫る年上の魔女は、砂が落ちきる前にこっそり砂時計を裏返す。しゃべる隙に、足先で、泉の中で。一回、また一回。
そして12回目、裏返したのはカイの手だった。
「最初から知ってました」
「薬じゃない…私が欲しいの」
惚れ薬を偽った魔女の、砂時計なしの朝まで。フルカラー。
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