ぶくまる – 書店員おすすめの漫画・本を紹介!

書店員が選んだ「本当に面白い漫画・本」をご紹介!

書店員が選んだファンタジー漫画の決定版おすすめ13選!

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※2019/10/8更新: 『とんがり帽子のアトリエ』・『王様ランキング』・『空挺ドラゴンズ』の3作品を追加しました。

ファンタジーというと、みなさんはどんなイメージを思い浮かべるでしょうか。ゲームや映画のような剣と魔法の世界? それとも、動物と話せたり、小人や妖精がいたりするリリカルな世界でしょうか。「ファンタジー」とは「空想、幻想」のこと。その言葉どおり、人間の想像の翼を限りなく広げた作品世界こそが「ファンタジー」の魅力。今回は、そんなファンタジーならではの、緻密な世界観を堪能できる13作品を集めました。

王道の魔法ファンタジーにして、斬新な設定が魅力的!『とんがり帽子のアトリエ』

とんがり帽子のアトリエ

『とんがり帽子のアトリエ』 1~5巻 白浜鴎 / 講談社

2018年『第13回全国書店員が選んだおすすめコミック』一般部門1位を受賞した本作。

魔法使いに憧れを抱く少女・ココが、魔法に関する禁断の秘密を知ってしまったことをきっかけに、魔法使いになるための修行を始めるという物語です。
王道と言われれば王道なのですが、実は「魔法」の描かれ方がとっても斬新!
例えば、魔法といえば杖を使って呪文を唱えることで立ち現れるもの、というイメージがありますよね。ですが、ココの生きる世界では、魔法は「描く」もの! 円形の魔法陣(の絵)を、魔法のインクが染みたペンで描くことで魔法が出現します。描く魔法陣の絵柄や形によって、魔法の種類や精度が変わってくる、というところが斬新。なるほど「アトリエ」って、そういうことか!と、納得させられます。

さらに絵のスケールがとにかく壮大で、その世界観に圧倒されます。特にドラゴンが現れる瞬間の見開きコマは圧巻。スマホで読んでいる人は、PCで見開き設定にして是非読んでみていただきたいと思います。リアリティー溢れるタッチが、ファンタジーの世界に説得力をもたらしています。

また、2つのコマが実は縦にも繋がっていたり、小さな仕掛けも随所に散りばめられていて、コレがまた楽しい。緻密に計算されたトリッキーなコマの仕掛けは、まさに魔法にかけられているよう。新しい漫画の可能性に出会ったような、そんな気さえしてきます。

といったように、壮大かつ繊細で、王道かつ斬新な魔法の世界。
大袈裟なのでは…と思われた方、魔法にかけられたと思って、一度読んでみてください。

『とんがり帽子のアトリエ』を試し読みする

絵本でも児童書でもない、王子のひたむきさが心揺さぶる感動ドラマ『王様ランキング』

王様ランキング

『王様ランキング』 1~5巻 十日草輔 / ブリック出版

小さくて弱くて、耳が聞こえない、ボッス王国の第一王子・ボッジ。耳が聞こえないことで言葉が上手く話せないボッジ王子には、友達もいませんでした。
しかし、そんな彼は街へ出かけ、初めての友達と出会います。彼の名は、影の一族・カゲ。一生懸命なボッジ王子は、カゲという心の拠り所を得て、ボッス王国の立派な国王になるべく奮闘する、という物語です。

まるで絵本を読んでいるような御伽の国の世界観が、クセになる作品。
ほのぼのとしたタッチで描かれていることから、つい児童向けの作品のようなバイアスを持ってしまいそうですが、侮ることなかれ。魅力的なキャラクターたちが織りなす骨太なストーリーに、ただただ感動が溢れ出す良作です。
特に主人公・ボッジ王子と、彼を取り巻く王国のキャラクターたちとの対比が魅力的。各国との関係まで左右しかねない王族の内部情勢においては、それぞれの都合や思惑があって当然。王族のキャラクターたちも複雑な関係性の中で動いてくのですが、そんな彼らとは対象的にボッジ王子はとってもシンプルでまっすぐ。
大切な人を助けたい気持ちや、強くなって国王にふさわしい自分になりたいという気持ちをストレートに表現するキャラクターで、そのひたむきな姿に心打たれてしまいます。
また、ボッジ王子に相対するキャラクターも、実は優しい心の持ち主だったり、葛藤を抱えていたり。
ボッジ王子のまっすぐさが他のキャラクターたちの魅力を引き出していく……そんな展開が、多くの人の感動と共感を呼ぶのかもしれません。

『王様ランキング』を試し読みする

十日草輔先生インタビュー有り!『王様ランキング』の魅力と今後の展開を考察!

ドラゴンと共に生きる人間の命の営み『空挺ドラゴンズ』

空挺ドラゴンズ

『空挺ドラゴンズ』 1~6巻 桑原太矩 / 講談社

「マンガ大賞2017」ノミネート、「全国書店員が選んだおすすめコミック 2018」第5位など、漫画ファンや書店員の間で瞬く間に話題となった『空挺ドラゴンズ』。
非日常ともいえるファンタジーな世界観の中で、毎日を生きる人々の「日常」を描いているのが、本作です。

物語の舞台は、龍が大空を当たり前のように飛び回る世界。龍から採れる肉や油、筋や骨は、人間にとって貴重な資源に。しかしその一方で、龍が落下し街に甚大な被害を与えることも。人々にとって龍は、価値の高い資源であり、同時に絶望的な脅威でもあります。

そんな世界において、龍を仕留める龍捕り(おろちとり)なる職業は、重要な仕事でした。
捕龍船『クィン・ザザ号』の乗組員たちは、龍捕りとして今日も天空を翔る龍を捕り、解体し、売って生計を立てています。そこには、圧倒的な「日常」の厳しさと美しさが描かれています。

人間を脅かす存在であるドラゴン、とは言え一つの生命であることも事実です。人がドラゴンを捕る=人間とドラゴンの命のやり取りのシーンは、どこか切なくて、でも美しい。捕龍の場面は、そのスケール感も相まって、この物語の最も魅力的なシーンの一つです。

また本作は、刹那的な捕龍シーンの後、捕ったドラゴンの肉を調理して食べるところまで描かれてる点がさらに魅力的!「ドラゴンを捕る」物語であると同時に、「ドラゴンを食う」物語としてグルメ紀行漫画のような顔も持ち合わせているのです。
このドラゴン料理がまた美味しそう! 丁寧にレシピまで公開されているあたりも斬新です。龍と対峙するのは腰が引けますが、ドラゴン料理を味わえるのなら、この世界に飛び込むのも悪くないかも…とすら思えてくるほど。
ドラゴンと共にある非日常な日常を、ぜひ体験してみてください!

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『空挺ドラゴンズ』(桑原太矩)が描く命の現場!

種族の枠を超えた親子愛が切ない『ソマリと森の神様』

ソマリと森の神様

『ソマリと森の神様』 1~6巻 暮石ヤコ / ノース・スターズ・ピクチャーズ

ヒト狩りによって人間が激減し、人外の生き物が大多数を占める世界。身寄りのない人間の子ども・ソマリは、森の番人・ゴーレムに育てられています。千年生きるといわれるゴーレムは、既に寿命の大半を生きており、機能停止も間近。ゴーレムは自分の死後のソマリを案じ、二人でソマリの両親を探す旅に出ますが……。

ゴーレムとソマリの旅路を叙情的に描く、ロードムービー的な作品です。中世を思わせる森や街、バラエティ豊かな異形の生物たちが精緻に描かれていて、異世界の雰囲気に浸れます。食いしん坊のソマリが旅先で口にする食べ物も美味しそう!

人間の感情というものが理解できないゴーレムが、ソマリの示す反応に戸惑いつつも「父」になろうとしている様子がほほ笑ましく、人外と人間との絆が丁寧に描かれています。余命の短いゴーレムと、人間が「狩られる」立場である世界に生きる幼いソマリの、愛情に満ちた暮らしぶりは儚くも切なく、単なるほのぼのストーリーとは一線を画す、深い味わいの作品です。

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魅力的なキャラと緻密なストーリーに引き込まれる『Landreaall』

Landreaall

『Landreaall』 1~33巻 おがきちか / 一迅社

DX・ルッカフォートと妹のイオン・ルッカフォートは、火竜の封じられた土地・エカリープ(アトルニア王国)の領主の子ども。腕達者の両親に武芸を仕込まれながら、明るく楽しく暮らしています。火竜を封じるため、自らを大樹に宿らせた女性・マリオンを救うため、DXはイオンと護衛のニンジャ・六甲を連れて旅に出ます。そして多くの出会いや戦いを経験しながら、王国でかつて起きた革命の真相を知り、自身が持つ王位継承権の意味を考えるようになるのでした。

『Landreaall』の面白さは、なんといってもその緻密な人物造形と、丹念に練られたストーリーにあります。どこか飄々として掴みどころのない主人公・DXや、やんちゃな妹・イオン、そして彼らを取り巻く友人たち……ライトな絵柄の作品ですが、些細な脇役たちに至るまで生き様が描かれており、それが物語の厚みとなっています。

竜や魔法が出てくるファンタジーではありますが、王位継承などの政治的な問題や、陰謀論、経済論などにも触れており、荒唐無稽なだけのファンタジーではなく、現実に即したリアルなお話だというところも魅力です。

本作は途中から学園ファンタジーとしての色が強くなるのですが、そこで展開するストーリーがまた面白い! 貴族に平民、商人の息子と、立場や出自はさまざまでありながら、時にはぶつかり、時には助けあいながら友情を築き、成長していく姿は、青春ものとしてもグッとくるはずです。

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その発想は無かった!RPGを新たな視点で料理した、ダンジョン攻略グルメ漫画『ダンジョン飯』

ダンジョン飯

『ダンジョン飯』 1~8巻 九井諒子 / KADOKAWA / エンターブレイン

主人公の戦士・ライオスは、エルフのマルシルら仲間を連れてダンジョン(地下迷宮)の探検にのぞみますが、同行者だった妹をレッドドラゴンに食われてしまいます。妹の体を取り戻すため、再びダンジョンへもぐるライオスたち。ですが、資金不足から食料を買えません。仕方なくダンジョンに棲む魔物を狩って食べることに……!?

ロールプレイングゲーム(RPG)でおなじみの、魔物と戦いながらダンジョンの底へ底へと下りていくストーリーを、グルメ漫画(!?)に転換した斬新な作品です。魔物の味や調理法の描写が非常に具体的で、たとえば、「スライムは二週間ほど絶食させ、天日に干して乾燥させてから鍋に入れたり果汁に浸したりして食べると美味しい」なんて、まるで実在する料理のレシピのよう! 他にも「動く鎧」の驚くべき調理法など、インパクト満点な料理もふんだんに登場し、ファンタジーなのかリアルなのか分からない展開にぐいぐい引き込まれていきます。

また、個性豊かな登場人物たちにも注目! 真面目で勇敢そうな戦士ライオスが、実はちょっとおかしな性癖を抱いていたり、クールでツンデレっぽいマルシルが人一倍食いしん坊だったりと、話が進むほどに現れるギャップも面白いのです。

九井諒子先生は、魔王を倒したあとの勇者の悲哀を描く「帰郷」等を収録した『竜の学校は山の上』など、ピリリとスパイスの効いたファンタジー短編集もおすすめです。

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ファンタジーなのに飯テロな『ダンジョン飯』を徹底解説!【ネタバレ注意!】

ダーク・ファンタジー界の揺るぎなき王者『ベルセルク』

ベルセルク

『ベルセルク』 1~40巻 三浦建太郎 / 白泉社

第6回手塚治虫文化賞マンガ優秀賞を受賞し、海外でも熱く支持されている、ファンタジー漫画の傑作です。今までにも映画化&アニメ化されていますが、2016年に再びアニメ化され、新たな注目を集めています。

舞台は魔物が闊歩する中世ヨーロッパ風の世界。傭兵に育てられたガッツは、巨大な剣や義手などを武器に自暴自棄な戦いを繰り返しながら、流浪の日々を送ります。ガッツに命を救われた妖精パックは、共に旅することを決意しますが、次第にガッツの背負う重い運命が明らかになり……。

重厚な世界観、映画を思わせるような壮大なストーリーと、『ベルセルク』の見どころはたくさんありますが、なにより魅力的なのは登場人物の心理描写です。妬みや羨望、憎悪などの負の感情、希望や情熱、敬愛、崇拝などの正の感情……そのどちらもが生々しく、胸に迫るようなリアリズムに満ちています。無二の友・グリフィスに恋人を穢されたガッツの血を吐くような叫びや、ガッツが自分のもとを離れると知ったグリフィスの怒りと絶望など、読んでいるこちらの感情まで掻き立てられるような、真に迫った描写に唸らされます。

闇と暴力に満ちた世界でありながらも、否、だからこそ一筋の希望が胸に迫る……三浦建太郎先生の描く物語の果てを、この目で確認するまでは死ねない! そんな気持ちにさせられる傑作ファンタジーです。

『ベルセルク』を試し読みする

巨大な縦穴の中で繰り広げられる、少年ロボットと少女の決死の冒険!『メイドインアビス』

メイドインアビス

『メイドインアビス』 1~8巻 つくしあきひと / 竹書房

底なしの超巨大洞窟「アビス」は、古代の秘宝や危険な怪物、潜入者を襲う死の呪いが満ちた秘境。アビスで消息を絶った偉大な冒険家を母に持つ少女・リコは、いつかアビスの奥を探検したいと思っていました。ある日、リコは超科学的技術で製造された少年ロボット・レグと出会います。レグがアビスの底から来たのではないかと思ったリコは、行方不明の母の痕跡を追って、レグと共にアビス探検へ出発するのでした。

巨大な縦穴にある生態系の描写が細かく、リコたちが見つける古代遺物もロマンを掻き立てます。下降する分には問題ないのですが、地上へ向かうとたちまち呪いが降りかかり、深度が深ければ深いほど重傷を負うというシビアな設定と、ふんわりした絵柄とのギャップも本作の特徴。「死の呪い」を解くために生体実験を繰り返すキャラが登場したりと、かわいさに加えてシリアス&ダークな雰囲気がストーリー全体に漂います。

主人公が秘境への憧れに突き動かされる冒険ファンタジーの魅力がたくさんつまった本作。奈落の底に挑むことは、死に挑むも等しい。それでも、けっして潜ることをやめない冒険者たちの熱い魂に、グッとくること間違いなし!です。

『メイドインアビス』を試し読みする

『メイドインアビス』とは?秘境の大穴をめぐる骨太ファンタジーの魅力(ネタバレあり)

少年は空を翔ける―王道の冒険ファンタジー!『リンドバーグ』

リンドバーグ

完結『リンドバーグ』 全8巻 アントンシク / 小学館

舞台は高地の王国・エルドゥラ。国王により空を飛ぶことが厳しく禁じられているこの国で、少年・ニットは大空を飛行することを夢見ていました。ある日、空飛ぶ動物に人工の翼をつけた謎の飛行物体に乗る男が、外界からエルドゥラへやって来ます。その男・シャークはニットに、ニットのペット・プラモこそが空を飛べる動物「リンドバーグ」であることを告げ、エルドゥラからの旅立ちを勧めるのでした。

少年が新世界へ飛び出し、仲間を得て成長していく、王道の少年漫画です。少年らしい勇気に満ちた主人公・ニット、ワイルドで格好いい大人の男・シャーク、そしてキュートな幼なじみのモーリンなど、どの登場人物も活き活きと描かれています。

本作の最大の魅力は、全体を通して感じるノスタルジー。ジュブナイル小説や、ジブリ映画にも通じるような、冒険への憧れがめいっぱい詰まっています。狭く退屈な世界から、未知の大空へ──ニットが飛び立ったその時、きっと胸がすくようなワクワク感が湧き上がるはず。

物語はニットの成長とともにスケールが増し、ニットはプラモとともに隠された世界の秘密に迫ります。大航海時代を思わせるフロンティア精神、空と冒険をテーマにした懐かしさと躍動感が伝わる良作です。

『リンドバーグ』を試し読みする

こんな生活が送ってみたい!癒やしのスローライフ『ハクメイとミコチ』

ハクメイとミコチ

『ハクメイとミコチ』 1~7巻 樫木祐人 / KADOKAWA / エンターブレイン

ハクメイとミコチは身長9cmの小さな女の子。森の奥で暮らすふたりの生活は、毎日がゆったりと心地よく、新鮮な驚きに満ちています。おっとり系のミコチは持ち前のセンスを生かして仕立て屋を、職人肌でおおらかな性格のハクメイはフリーの修理屋を営んでいます。ふたりを取り巻く人々や、言葉を話せる獣たちとの心温まるエピソードがたっぷりの、スローライフファンタジーです。

ファンタジーの魅力に、よく「独特の世界観」が挙げられますが、『ハクメイとミコチ』も、描かれる世界が本当に素敵なんです。木の洞に作られたふたりの家は見るからにあたたかそうで住んでみたくなり、小さな店がひしめき合う市場はどこかアジアの下町を思わせて、これも魅力的! また、食べ物が本当に美味しそうなところもポイント。料理上手のミコチが作る、七面鳥とクランベリーのサンドイッチや、はちみつのワッフル、つみれとゴボウの味噌汁など、見てるだけでお腹が空いてきます!

ほのぼのストーリーかと思いきや、仕事に対するふたりの姿勢に感心することも多く、自分も頑張ろうという気持ちが湧いてきます。なんだか疲れたなあと感じている人にぜひ読んで欲しい、癒やしのファンタジー漫画です。

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異形の魔法使いと少女との心の交流を描く『魔法使いの嫁』

魔法使いの嫁

『魔法使いの嫁』 1~12巻 ヤマザキコレ / マッグガーデン

舞台は現代のイギリス。心に傷を抱えた15歳の少女、羽鳥智世(チセ)は、異形の魔法使い、エリアス・エインズワースに500万ポンドという大金で身請けされます。実は、チセは莫大な量の魔力を有する「夜の愛し仔(スレイ・ベガ)」と呼ばれる能力の持ち主だったのです。エリアスは、弟子であり「嫁」でもあるチセに、魔法使いとして生きる術を教えますが……。

人外×少女という設定にビビッと来られた方に、ぜひ読んでほしい漫画です。強大な魔力を持ちながらも、世捨て人のように暮らすエリアスと、誰からも顧みられることのなかった少女・チセ。孤独な2つの魂が惹かれ合い、心を通わせていく様子は見ているだけでキュンとしてしまいます。話が進むにつれ、2人の暗く重い過去が明らかになっていくので、ますます目が離せなくなりますよ。

ブラックドッグ(教会や墓地に棲む犬の妖精)やリャナン・シー(男の血と引き換えに才能を与える美しい魔物)、そしてエリアスの家でメイドとして働いている家事妖精など、イギリスに古くから伝わる魔物や妖精が出てくるところも見どころのひとつ。美しく幻想的な世界観を堪能できる作品です。

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残酷さも切なさも愛おしさもすべて詰め込んだファンタジー『チキタ★GUGU』

『チキタ★GUGU』

完結『チキタ★GUGU』 全8巻 TONO / 朝日新聞出版

妖(あやし)退治を生業とするグーグー家のチキタは、ある日人喰い妖ラー・ラム・デラルという妖と出会います。実はその妖は、チキタの両親を殺した相手でした。「不味い人間」のチキタを百年飼育し、美味に変えてから喰らおうとするラー。そうして、妖と人間との奇妙な同居が始まりますが……。

ラーは人喰いではありますが、邪悪というより赤ん坊に近い無垢な精神を持っています。はじめて好きになった女の子(ニッケル)に「死んだら自分を食べていい」と言われるラーですが、実際に彼女を失った時、ラーはその事実を受け止めきれなくなります。

「教えてくれチキタ どうしたらいい!? 俺 も一回 ニッケルに……会いたいんだ」

というラーの吐くような叫びに、思わず涙してしまいます。

ほかにも、片方が負った傷がもう片方に移ってしまう姉妹の話や、人間によって毒を持つ妖に変えられてしまったクマのシャルボンヌの話など、切なさに震えてしまうようなエピソードがたくさん。また、ラーによって不老不死となり、人間社会の輪から外れていくチキタと、人喰いでありながらも、大切な人を失う痛みを知ってしまったラーとの、あたたかくも切ない二人ぼっち感にも胸がぎゅっとなります。

デフォルメされた可愛らしい絵柄とは裏腹に、容赦ない残酷さを突きつけてくる本作。ほのぼのストーリーだと思って読むと衝撃を受けるはず。 TONO先生は『カルバニア物語』もオススメ。こちらは『チキタ★GUGU』よりも明るめのファンタジーですが、深い人間描写に唸らされる良作です。

『チキタ★GUGU』を試し読みする

童話のような独特の世界観が魅力!『とつくにの少女』

『とつくにの少女』

『とつくにの少女』 1~8巻 ながべ / マッグガーデン

幼い少女・シーヴァと山羊のような角を持つ「せんせ」は、異形の棲家である「外つ国」の森で暮らしています。シーヴァはせんせが大好きなのですが、触れると呪いがかかってしまうため、触れ合うことができません。皆が忌み嫌う「外の者」とは何なのか、なぜ呪いを受けてしまうのか……静謐な中にもダークさを秘めた物語です。

外国の絵本のような独特のタッチにまず目を奪われる本作。シーヴァの無邪気な可愛さに心和むのも束の間、内の国から来た兵士たちに彼女が殺されそうになる、という事件が起こります。どうやら「せんせ」はシーヴァに関する重要な秘密を知っているらしいのですが、真実を告げるとシーヴァを傷つけることになるため、話すことができずにいます。シーヴァを守りたい、でも自分には何も出来ないという「せんせ」の葛藤が、異形でありながらも人間らしさを感じさせ、この人はいったい何者なんだろう、という疑問が湧き上がります。「せんせ」の作る焦げたアップルパイや、目玉焼きなど、ふとした日常の描写が素敵で、このままずっといられたらいいのにと願わずにはいられません。ですが、不穏の影は確実に2人の足元に忍び寄るのです。

黒が際立つ美しい画面と、静かな世界観に浸れる本作。秋の夜長におすすめのダーク・ファンタジーです。

『とつくにの少女』を試し読みする

最後に

緻密に作り上げられた世界観が魅力のファンタジー漫画ですが、そこに生きる人物はけっして超人ではなく、泥臭い苦悩や葛藤を抱いています。だからこそ、私たちはファンタジー漫画に夢中になるのかもしれません。

ファンタジー=剣と魔法と思っている方も、この機会にぜひ、色々な作品に触れてみてくださいね。

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