感想
アイヌに誇りを持つ祖父、差別を嫌って街を出たい孫娘どちらの気持ちも分かる気がする。それぞれの立場での葛藤が描かれている。
話の合間に出てくる北海道の自然の素晴らしさと失われていく文化や自然とのバランスなど学ぶべきことも多い。
読んでいて、単純に北海道に行きたい!摩周湖の霧滝が見たい!つつじ
...続きを読むが原のお花畑が見たい!えぞ鹿肉のカレーが食べたい!あと、「はんかくさい」という方言も何となく気に入った。
久しぶりに読んで良かったと思える小説だった。心が温まった。
あらすじ
アイヌの木彫り職人の敬蔵は、両親を事故で亡くした孫娘の悠と二人暮らしだ。敬蔵は木彫りと酒飲みにしか興味がなく、悠はアイヌであることを嫌い、街の外の高校に行って、いずれは誰もアイヌであることを気にしない東京に行きたいと願っていた。
そんな敬蔵の元にある日弟子にして欲しいと尾崎という青年が現れる。尾崎には何か事情がありそうだが、近くで働きながら、木彫りを学ぶことになった。
尾崎は母を福島の仮説住宅で亡くしており、似た境遇の樹と健吾と出会う。最初はボランティアに精を出していたが、次第に東電の社長に責任を取らせるという話になり、計画を立てて、元社長を拉致して謝罪させるつもりが、誤って死なせてしまう。
尾崎の祖母が、実は敬蔵の妹であり、尾崎にもアイヌの血が流れていた。健吾が尾崎を追って、北海道に来たことにより、東電社長の殺害は敬蔵と悠の知るところとなり、一悶着あったが、尾崎とケンゴは自首する。この事件を通じて、敬蔵と悠は言いたいことが言いあえる本当の家族となった。