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【ネタバレ注意】実写映画化で注目度アップ! 『空母いぶき』の魅力を書店員が徹底考察

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2019年5月24日より、実写映画が全国公開された『空母いぶき』(小学館)。主演の西島秀俊さん、佐々木蔵之介さんをはじめ、豪華キャストが出演する注目作です。

作者は、『沈黙の艦隊』(講談社)、『ジパング』(講談社)といった大作を世に送り出してきた、かわぐちかいじ先生。重厚なドラマと、迫真の兵器描写にはさらに磨きがかかり、巻を追うごとにストーリーは複雑に。これから『空母いぶき』の世界を堪能したい! という方に向けて、書店員が徹底解説いたします!

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※当記事に記載の内容は全て「ぶくまる編集部調べ」です。また、当記事にはネタバレを含みます。

『空母いぶき』あらすじ

『空母いぶき』  かわぐちかいじ / 惠谷治 / 小学館

20XX年、尖閣諸島沖で海上自衛隊と中国海軍が衝突!!戦闘は回避したものの、危機感を募らせた日本政府は、最新鋭戦闘機を搭載した事実上の空母「いぶき」を就役させ、新艦隊を編成――――!!!艦長は、空自出身の男・秋津―――。

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押さえておきたい事前情報

『空母いぶき』の物語が本格的に始まるまでの流れを、まずはざっと説明しましょう

プロローグ/尖閣諸島事件

『空母いぶき』の物語は、20XX年10月4日に起こった、中国人3名による尖閣諸島上陸事件から始まります。尖閣は中国固有の領土と主張する彼らは、海上保安庁による救助を拒否。

中国政府は空母艦隊を救助に向かわせ、艦載機によるミサイルの威嚇射撃まで強行します。武力衝突を避けた日本政府は、上陸者を中国側に引き渡すことに。結果的に、一発の威嚇ミサイルによって日本が中国に屈服した形で、事態は収束します。

「ペガソス計画」〜「いぶき」護衛艦として就役

内閣総理大臣・垂水慶一郎は、かねてから「ペガソス計画」を進めていました。それは、日本が空母を持ち、アメリカに頼らず極東アジアの海の安全を守るというもの。

尖閣事件をきっかけに計画は急ピッチで進められることになり、事件から約1年後に、海上自衛隊に新型護衛艦「いぶき」が就役します

その艦長に選ばれたのが、主人公の秋津竜太です

日本、そして自衛隊にとって「空母」とは?

空母であるはずの「いぶき」が、なぜ、“新型護衛艦”と呼ばれるのか。それは、日本の防衛戦略である「専守防衛」を遵守するためです。他国に脅威をもたらす恐れのある戦闘機を搭載した攻撃型空母ではなく、あくまで敵潜水艦に対抗するための護衛艦、というのが「いぶき」の名目。艦載機も、航続距離が短い垂直離着陸機のみです。

それでも、「空母」の保有は憲法違反と、政府は与党から追求されることに。また、アジア諸国も日本に対する警戒を高めます。そんな中、中国海軍の新型空母「広東」が試験訓練を終え、基地に帰投したのでした。

「いぶき」と第5護衛隊群を紹介!

日中両国間に緊張が高まる中、就役した「いぶき」は、第5護衛隊群の旗艦となります。秋津らは、さっそく太平洋上に演習航海に出ることに。第1巻の後半では、その訓練の様子が詳細に描かれ、第5護衛隊群所属の隊員達が紹介されていきます。

『空母いぶき』の主人公である秋津と、彼を取り巻く魅力的な隊員達を紹介します。

「いぶき」の頭脳たち

まずは、「いぶき」の頭脳たるトップ3人を紹介します。

秋津竜太

第5護衛隊群・旗艦「いぶき」艦長。階級は一佐。

元は航空自衛隊のファイター(戦闘機)・パイロット。「ペガソス計画」に早くから参入し、アメリカ軍のノーフォーク海軍基地で研修を積み、海上自衛隊に転属後、艦長に選ばれました。

「いぶき」の戦闘は秋津が立案し、涌井がそれを承認するというパターンがほとんど。実質的な現場のリーダーと言っていい、存在感のある主人公です。

涌井継治

第5護衛隊群司令。階級は海将補。

「いぶき」をはじめとした艦隊の司令官で、秋津の上官です。元は、尖閣事件で威嚇ミサイルを受けた護衛艦「あたご」の艦長で、冷静かつ慎重な判断を下すタイプです。

新波歳也

「いぶき」副艦長兼航海長。

ノーフォーク基地での研修時代は秋津の同僚で、もう一人の「いぶき」艦長候補でした。その頃は秋津に対して同等な言葉使いでしたが、「いぶき」に配属されてからは敬語を使うように。

秋津の過激とも捉えられる発言や攻撃的な判断に対して、心の中で異をとなえることもありますが、それと同時に一番の理解者でもあります。

「いぶき」を守る第5護衛隊群

第5護衛隊群に所属する艦船と、その艦長を紹介します。対空兵器を多く持たない「いぶき」を彼らが守ります。

  • イージスミサイル護衛艦「ちょうかい」 艦長・浮船武彦 一佐
  • イージスミサイル護衛艦「あたご」 艦長・浦田鉄人 一佐
  • 護衛艦「ゆうぎり」 艦長・瀬戸斉明 二佐
  • 護衛艦「せとぎり」 艦長・清家博史 二佐
  • 潜水艦「けんりゅう」 艦長・滝隆信 一佐
  • 第92飛行団司令兼飛行隊長 淵上晋 一佐

この中で特に見せ場が多いのが、「けんりゅう」の滝一佐です。海中に潜む敵の姿を探しながらの潜水艦戦は駆け引きの要素も強く、緊張感溢れる戦闘シーンが多く描かれます。

また、第92航空団司令の淵上一佐は、「いぶき」に搭載された15機の垂直離着陸機F35JBを束ねる存在。彼自身も出撃することがあり、男気溢れる人物です

さらに途中から第5護衛隊群に加わるのが、護衛艦「あまぎり」。艦長の海老名洋子一佐は女性で、これからの活躍が期待されます。

「いぶき」の戦い

『空母いぶき』の物語が本格的に始まるのは、第1巻のラストから。「いぶき」就役の約半年後、20XY年4月25日に、日本を揺るがす事態が発生するのです。

「いぶき」はその事態にどのように対処し、敵との戦闘を繰り広げていくのか? 既刊12巻分の戦いの流れを、ネタバレありで解説します!

中国軍、突然の軍事行動(1巻2巻

20XY年4月25日未明、中国軍が尖閣諸島を占拠。

それと同時に沖縄県先島諸島の与那国島と宮古島の自衛隊基地にあるレーダーサイトをミサイル攻撃。与那国島と多良間島に侵攻し、これを占領。島民を拘束します。

また、与那国では中国軍との接触によって、自衛官ひとりが戦死してしまいます。

「いぶき」、先島諸島へ(2巻

演習を切り上げ先島諸島海域へ向かえとの命令を受けた「いぶき」は、約3000キロ離れた太平洋上から、現場海域を目指して出航します。

そこに、中国軍の潜水艦2艦が出現。「いぶき」を牽制します。

秋津

「あの2艦は、我々が脅しに負けて屈するか、それとも闘う姿勢をとるか、それを見ようとしているのです」

その言葉を受けて、涌井群司令は直進を命令。高まる緊張の中、潜水艦の魚雷射程圏内に突入していきます。

「いぶき」初の対空戦闘(2巻

4月26日午前8時、中国政府は日本への軍事侵攻を公式に認める声明を出します。

その約1時間後、航空自衛隊の偵察機が中国軍戦闘機に撃墜される事態が発生。

日本政府は、史上初となる「防衛出動」を閣議決定します。

秋津

「力でしか分からぬのなら力で知らしめる。「防衛出動」とはその“力”のことだ」

しかし、海上で補給を受けていた「いぶき」を狙って、中国軍空母「広東」から艦載機が出撃、ミサイル攻撃を開始します。

第92飛行団、初出撃(3巻

休むことない、「広東」艦載機の攻撃。第92飛行団のアルバトロス隊が迎撃のため、出撃。敵機10機に対して5機という数的不利の中、F35JBとパイロット達が、その優れた戦闘能力を見せつけます。

ミサイルに追われたF35が必死の回避行動を取るシーンは、大迫力!

潜水艦vs潜水艦(3巻

「いぶき」を海中から守る潜水艦「けんりゅう」は、僚艦の「せとしお」と合流。その時、中国軍潜水艦が出現し、第5護衛隊群に向けて魚雷の先制攻撃をしかけます。

迎撃すれば、中国軍潜水艦の乗組員150名を殺すことになる。「けんりゅう」艦長・滝が葛藤する中、「せとしお」が捨て身の行動に!

「せとしお」の勇気、そして「けんりゅう」の高い操艦技術が、敵を殺すことなく勝利する、胸アツの戦いが繰り広げられます

このように、敵に大きな被害を与えずに勝利を得るというのが、『空母いぶき』の戦闘の大きな特徴です。それはなぜか? 新波副艦長が、その理由を語ってくれます。

新波

「戦闘はやっても、“戦争”は回避せねばならんのだ。戦争への口実を与えるような攻撃は、断じてしてはならぬ!!」

しかし、新波は

「それができる余裕のあるうちはな」

と言葉を続けるのでした。

オペレーション「はやぶさ」発動(4巻〜)

宮古島まで200キロの海域まで到達した「いぶき」。

中国政府との交渉が決裂したことを受けて、日本政府は占領された島々の武力奪還を決定します。

そのために結成された陸海空混成の統合任務部隊(JTF)が、奪還作戦を計画、発動。それが、オペレーション「はやぶさ」です。

「いぶき」は、JTFからの命令により、先島諸島空域の航空優勢を確保する任務に。島へ上陸する部隊を上空空域へと導く重要な役割です。

秋津

「ここで我々が負けたら、日本が負ける」

いよいよ自衛隊と中国軍は、大がかりな戦闘に突入していくことになります!

「いぶき」や上陸部隊の奮戦で、多良間島、与那国島を巡る戦いは膠着状態に。次なる一手として秋津は、中国の真の狙いである尖閣諸島領有を阻止するための攻撃作戦を進言します。

その手段は、艦砲射撃。膨大な死傷者が出ると反対する新波に対して、秋津はある策を打ち立てます。それは現地中国軍に対しての事前通告。相手に対策の時間を与えるというものでした。

秋津の提案は、横須賀のJTF司令部を通して官邸へ。垂水総理は国家安全保障会議を招集して、これを協議。作戦を認可します。

垂水が出した条件は、攻撃24時間前の事前通告。

秋津

「どんな苦しい状況でも敵・味方を問わず人命を第一に考慮する、垂水慶一郎は信頼すべき政治家だな」

通告時刻は5月3日午前4時。もちろん、攻撃前の24時間が、何もないまま経過するわけはありません。「いぶき」と第5護衛隊群に、敵潜水艦が迫ります。

「いぶき」VS「広東」、現代空母同士の対決へ(8巻〜)

尖閣諸島への砲撃は成功しますが、中国軍はまだ現地に残り、基地再建のための資材が運び込まれることに。

秋津の次の一手は、尖閣上空の航空優勢を日本が奪還すること。そうすれば、尖閣に残った中国兵を殺傷することなく、押さえ込むことができるのです。

そのための手段は、敵空母「広東」の無力化。物語はついに、空母同士の対決へ

秋津

「この有事、これが最終決着となる」

5月8日未明、逆に「広東」が「いぶき」に先制攻撃を仕掛けてきたことによって、戦闘の火蓋は開かれることに。「広東」艦長・劉長龍(リォウ・チャンロン)と秋津竜太との、「竜」と「龍」の激闘がついに始まります!

「いぶき」の戦いの意義を検証

今まで詳しく見てきたように、「いぶき」と日本政府の戦いは、いかに戦争に突入することなく、中国軍に占領された尖閣諸島、与那国島、多良間島を奪還し、拘束された島民を救うかです。

そのために、秋津と第5護衛隊群の自衛隊員達は、敵兵士をなるべく殺傷しないように努力を重ねるのですが、戦闘が激化するごとに、それはどんどん困難になっていきます。

『空母いぶき』の物語は、中国軍の侵攻という架空の設定からスタートし、その状況下で日本政府と自衛隊の、最も理想的な対応を描いたものと言えるのですが、それでも、戦線は次第に拡大。いかに国家間の武力衝突が危険なものか、教えてくれます

現場で奮闘する秋津だけでなく、人命尊重の立場に立ちながら苦渋の判断をくだしていく垂水総理、大使館や国連の場で外交努力を続ける官僚達、そして、戦闘の状況を国民に伝えるために、危険を冒して現地入りするジャーナリストと、さまざまな立場のキャラクターが登場。

日本全体を巻き込んで描かれる壮大な「歴史if」のシミュレーション。それが『空母いぶき』です。

これからも緊迫の展開が続いていくことになりますが、秋津と第5護衛隊群の面々、そして日本政府は、この難局を見事に乗り切って、国土と国民を守ってくれることを信じています!

注目の映画化と、その他の展開

豪華キャストによる、実写映画『空母いぶき』

2019年5月24日から劇場公開が始まった映画『空母いぶき』

主人公・秋津を西島秀俊さんが、副長の新波を佐々木蔵之介さんが演じ、他にも、高嶋政宏さん、玉木宏さん、市原隼人さんといった、日本を代表する男性俳優が出演。豪華キャストが、日本の危機を救うために奮闘します。

また、映画オリジナルのキャラクターとして、ネットニュース「P-Panel」の記者として、本田翼さん、その上司として斉藤由貴さんといった女性陣も出演。

かわぐちかいじ先生の漫画の実写映画化はこれが初。原作との相違点もいろいろあるようなので、ぜひ漫画『空母いぶき』を読んでから、映画館に足を運んでみてはいかがでしょうか?

『空母いぶき』プラモデルも発売中

TAMIYAからは、「DDV192 空母いぶき」の1/700スケールのプラモデルが発売中。

F35JBをはじめとした艦載機もついていて、漫画で描かれた「いぶき」を三次元でリアルに再現。全長35.4センチで、艦のディテールまでしっかりと見ることができます。

パッケージイラストは、かわぐちかいじ先生による描き下ろしです。

終わりに

漫画『空母いぶき』の世界、いかがだったでしょうか?

かわぐちかいじ先生には、日本初の原子力潜水艦を描いた『沈黙の艦隊』、自衛隊のイージス艦が太平洋戦争さなかの時代にタイムスリップした『ジパング』、震災によって東西に分断された日本を舞台にした『太陽の黙示録』、極秘任務に就く警察官と、日本人武装勢力を組織した元自衛官の暗躍を追う『サガラ〜Sの同素体〜』(原作・真刈信二)などなど、いくつもの戦記、架空歴史モノがあります。

エンターテイメントとして楽しみつつ、政治や軍事、社会情勢について深く考えさせてくれるかわぐち作品を、この機会に楽しんでみてください!

映画『空母いぶき』公式サイト

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