うつ病・双極性障害を知るための漫画おすすめ10選【体験談から専門家の解説まで】
※2020/08/13に『うつを甘くみてました #拡散希望#双極性障害#受け入れる#人生』『うつ病九段』『まいちゃんの双極取扱説明書 そう&うつなあなただってきっと大丈夫。』『にゃんともしんどい! 10年こじらせ脱うつ日記』を追加しました。
身近な病気として認知度が高くなってきた、「うつ病」や「双極性障害(躁うつ病)」。厚生労働省のWebサイト「みんなのメンタルヘルス」によれば、日本でうつ病を経験したことのある人は、100人中10人弱という調査結果があるそうです。いつ誰がなってもおかしくないと言われる一方で、うつ病や双極性障害がどのような病気なのか理解が進んでいない現状があります。
今回は、作者本人の体験や取材から、うつ病や双極性障害について描かれた漫画10作品を紹介します。病状も治療法も人によって十人十色。病気そのものについて知りたい方には理解の助けに、身近にうつ病や双極性障害になった方がいる方には次の行動を考える選択肢になれば幸いです。
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目次
『うつを甘くみてました #拡散希望#双極性障害#受け入れる#人生』
完結『うつを甘くみてました #拡散希望#双極性障害#受け入れる#人生』 全1巻 ブリ猫。 / ぶんか社
うつ病を“受け入れて”生きていこう
自身は美容系の会社を経営し、1歳年下の夫は華やかな芸能関係の仕事で活躍。2人の子どもにも恵まれて、キラキラで幸せな生活を送っていた主人公・ブリ猫。でしたが、夫の浮気が発覚して生活が一変します。「不安神経症」「強迫性障害」「摂食障害」「不眠症」といった症状が表れて心療内科を訪れると、「双極性障害(躁うつ)」という診断を下されて……。
夫の浮気疑惑をきっかけに発症し、彼のモラハラでさらに傷つけられて自傷、OD(オーバードーズ)、自殺未遂と、症状が悪化していく様が克明に記されていて、登場人物が全員擬猫化されているのに重い!! しんどい!!
自傷現場を発見して「そういう当てつけみたいなのやめてくれる!?」とか言えちゃう夫氏に言いようのない疲労感を覚えますが、これもまたうつ病患者のリアルなのでしょう……。
また、自立支援医療制度の申込みや障害年金の申請といった行政サポートの紹介があるのも他のうつ漫画とは一味違うところ。さらに共感できるページの写真を撮ってSNSにアップしてOKなど、うつに苦しむ読者の治療や、周囲の理解に役立つ仕掛けも。
企業の代表取締役を務める行動力抜群の父、優しく主人公に寄り添ってくれる母すら、「抑うつ状態(初期症状)」に陥ってしまうという患者家族の苦しみについて描いた、姉妹編『家族もうつを甘くみてました #拡散希望#双極性障害#受け入れる#人生』(ぶんか社)もおすすめです!
『うつを甘くみてました #拡散希望#双極性障害#受け入れる#人生』を試し読みする
『うつ病九段』
完結『うつ病九段』 全1巻 先崎学・河井克夫 / 文藝春秋
うつ病克服の過程を優しくユーモラスに描く
17歳でプロ棋士デビューを果たした“天才先崎”、洒脱な文章で知られるエッセイスト、人気漫画『3月のライオン』(羽海野チカ / 白泉社)の将棋監修者と、多才で知られる棋士・先崎学氏の同名闘病エッセイをコミカライズ。
7月から始まる順位戦のプレッシャー、将棋界を激震させた「ソフト不正使用疑惑」に関する深刻な話し合い、『3月のライオン』の映画封切による多忙などが重なった結果、うつ病を発症してしまい……。
ある朝起きると疲れが取れておらず、それから起きているときは常に頭が重く気分が暗い。寝起き・寝入りがつらくなってきたかと思うと、対局中に思考がまとまらない、得体のしれない不安に襲われる、さらには自分が線路に飛び込む夢を見る――と、みるみるうちに症状が悪化していく様から、うつ病の恐ろしさが伝わってきます。
基本的に、河井克夫先生節のきいた素朴なタッチで淡々と日常が綴られますが、休場を決めた時に妻の穂坂繭さん(囲碁棋士)が「先崎学が将棋を指せないなんて…」と涙するシーンは静かに胸に迫るものがあります。一方で、エロ動画が見たくなって回復を感じるなど、思わずクスリとしてしまうシーンも。
エッセイが原作なので、治療に関するアドバイスやノウハウなどはあまり描かれていませんが、退院後はじめて将棋を“まともに指せた”ときの喜び、王座戦の中継を見た時の胸の高鳴りなど、物語の端々に表れる「将棋愛」がほっこりさせてくれます。「壮絶な体験記だと辛くなってしまう」という人におすすめしたい、しみじみとした魅力あふれる作品です。
『まいちゃんの双極取扱説明書 そう&うつなあなただってきっと大丈夫。』
完結『まいちゃんの双極取扱説明書 そう&うつなあなただってきっと大丈夫。』 全1巻 まい・寺島康 / 合同出版
働きながらうつを克服したい人の手助けに……
26歳の春から、印刷会社のDTPオペレーターとして働き始めた主人公・まい。研修を終えていよいよOJTに移行することになり、意欲に燃えていたまいですが、研修の内容と実務内容は全くの別物、帰るのはいつも終電と、3年ほどハードな生活を送ります。その翌年、違う部署に異動すると、新しいソフトが使えなくて上司に叱られ、今まで出来ていた業務でもミスを連発と、仕事はさらにハードに。そしてメンタルクリニックを訪れると「双極性障害」と診断を受けて休職することになり……。
真面目に働いていた主人公が、会社での激務がストレスとなってうつを発症――という多くの社会人が共感しやすい設定に加え、「双極性障害」と診断されたらどのような保障が受けられるのか、といった制度案内も具体的に描かれているので、うつ病当事者や周辺の人におすすめしたい作品です。「退職日に出勤していなければ、退職後も傷病手当を受け続けられる」など、知らないと損をする受給条件のレクチャーもあります。
そうした手当を受けながら復職を目指すも、焦りすぎて復職後3ヶ月でうつが再燃するなど、治療と仕事の両立に悩む患者の心理描写がリアル。休まないといけないと頭では分かっていても、心がついていかないといった、うつ病独特の辛さがしっかり描かれています。
また、「双極性障害」と「うつ病」の違い、「双極性障害」特有の症状も明記されているのも本書の特徴。「躁の時期は妙な行動力がある」「活動的だからといって寛解したわけじゃない」といった躁うつエピソードは大いに参考になるはずです。
『まいちゃんの双極取扱説明書 そう&うつなあなただってきっと大丈夫。』を試し読みする
『にゃんともしんどい! 10年こじらせ脱うつ日記』
完結『にゃんともしんどい! 10年こじらせ脱うつ日記』 全1巻 逢川里羅(naked ape) / 永岡書店
頑張り過ぎな漫画家の、10年以上にわたるうつ病との戦いの記録
『DOLLS:』(一迅社)や『ツツジモリ‐遺品整理始末録‐』(講談社)といった作品で知られる人気漫画家ユニットnaked apeの原作担当・逢川里羅先生が、うつ病を発症してから回復するまでの約10年間を描いた“体験漫画”。漫画界の第一線で働きながら10年以上うつをこじらせてきた作者だからこそ描けるリアルな体験談がここにある……!
漫画家としてデビューを果たし、作画担当のパートナーとルームシェアをして、寝ても覚めても漫画を描いていたという作者。漫画家になることを夢見て、見事デビューを果たした彼女がワーカホリックの鑑のような働き方をしてうつになってしまうのは、「そうだろうな」という感想が半分、「まさか彼女が」という感想が半分、といったところでしょうか……。「漫画家になりたかったら人の3倍以上努力せんと!」が口癖の母親、二極思考が強く好戦的な自我、といった自身のバックグラウンド紹介も相まって、うつ病予備軍的な読者への啓発的要素も備えています。少しでも「わかりみ〜」と思った人はすぐに頑張りすぎるのを辞めてください、切に……!(筆者も身に覚えあり)
そんな作者、逢川里羅先生が編み出した「自分のご機嫌をとるコツ」を紹介したコラムや、「いい人になろうとしてうつのトンネルに入り込んでしまう」「うつを克服しようとしてスピリチュアルにハマってしまう」といった、うつ泥沼エピソードは必見。いつでも頑張りすぎてしまいがちな逢川先生だからこそ、「自分にとって楽なほうを選んで」というメッセージに説得力あり。頑張りたいけど頑張れないギャップに苦しんでいる人にこそ、読んでほしい作品です。
『にゃんともしんどい! 10年こじらせ脱うつ日記』を試し読みする
『うつヌケ』
完結『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち【電子書籍限定 フルカラーバージョン】』 全1巻 田中圭一 / KADOKAWA / 角川書店
作者自身と17人のうつ病・双極性障害の体験談から、希望に繋がるヒントを見出す
お下劣パロディ漫画家としてご活躍の田中圭一先生。2005年頃から謎の苦痛に苛まれ、のしかかる辛さや不安に耐えきれず、自殺まで思いつめたそうです。それから紆余曲折を経て約10年、先生は「うつのトンネル」を抜けることができたのでした。本作は、田中先生のうつ病を抜けるまでの体験と、総勢17名のうつ経験者へのインタビューをまとめた漫画です。インタビューのお相手は、ゲームクリエイターや雑誌編集者、高校教師やメーカー勤務のサラリーマンなど様々で、中にはミュージシャンの大槻ケンヂ、作家の宮川悠介、脚本家の一色伸幸といった著名人も。インタビューする側もされる側も、うつ経験者ということで、その内容は具体的かつ、うつ病の寛解(かんかい:全治ではないが症状が軽減した状態)への示唆に富んだものになっています。
生い立ちも、うつになった要因もさまざまな経験者たちの中には、うつから抜けたと思えばぶり返す「ちょいちょいリターンする人」や、うつ状態と躁状態が交互にくる「双極性障害」だった人も。彼らはみんな、自分を見つめ直すことで、少しずつ立ち直っていくのです。田中先生は、うつの原因は「自分をキライになったこと」であり、うつヌケするには、ただ「自分を好きになればいい」と、ずばり言い切ります。この単純明快な言葉がいかに深い意味を持つか、うつヌケした人たちの体験談と田中先生の分析を読めば、納得できることでしょう。
本作は、作者1人の経験談ではなく、複数の人の体験が描かれているので、今悩んでいる人がどこかしらに共感できるポイントを見つけやすいのではないでしょうか? ちなみに、電子書籍版は全ページフルカラーになっていて、うつに悩んだ時期はモノトーンで、トンネルを抜けた時期は鮮やかな色彩で表現されています。田中先生のメッセージがより強く伝わってきますよ。
うつ病に悩んだ期間に田中圭一先生が実際に読み、あらゆる”キッカケ”になった本を自ら紹介!
特別記事「『うつヌケ』田中圭一が読んだ“キッカケ本”4冊」 はこちら
『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち【電子書籍限定 フルカラーバージョン】』を試し読みする
『ツレがうつになりまして。』
完結『ツレがうつになりまして。』 全3巻 細川貂々 / 幻冬舎
家族がうつかもしれないと思ったら……。まずは読んでおきたい
うつ病を扱った漫画といえば、まずはこの作品。2009年にTVドラマ化、2011年に映画化もされた『ツレがうつになりまして。』です。自分の家族がうつになったらどうしたらいいのか、ほのぼのとしたタッチでツレのうつ病と向き合う日々が綴られています。
作者の細川貂々先生の夫(ツレ)は、メーカーでバリバリ働くスーパーサラリーマン。明るく自信に満ちあふれた性格でしたが、仕事の負担が激増したことによって、変化が起こります。ミスを連発し、仕事がイヤになり、不眠になり、そして、ある朝つぶやいた「死にたい……」のひと言。驚いた妻(細川先生)が病院に行かせたところ、うつ病という診断が下されました。
「うつ病ってなに? どう看病したらいいの?」うつ病に対しての知識がゼロだった妻が、ツレの言動や医師の説明、本やネットで得た情報によって、少しずつ理解を深めていく過程が描かれた本作は、まさにうつの入門編として最適です。「うつ病は神経の伝達物質セロトニンの減少でおこるらしい」とか、「一直線によくなるのではなく振り子がゆれるようによくなったり悪くなったりしながら回復する」とか、うつ病の基本的な情報がしっかり書かれています。
好きだったクラシック音楽が突然聴けなくなったり、本や新聞を読んでも内容が頭に入ってこなくなったりして辛いと、しくしく泣いているツレに対して、妻はそれを「宇宙人のカゼ」のようだと表現します。ツレが何に対しても「申し訳ない」と繰り返した時も、自殺したいと言った時も、突然お金が数えられなくなった時も、妻は「宇宙カゼおそるべし」と心の中で思うのです。深刻な状況でもユーモアのある接し方や表現をする妻は、ツレだけでなく読者の心も明るくしてくれます。
続く『その後のツレがうつになりまして。』ではツレがうつになって諦めたことや細川先生がツレとどう接していたかなどより具体的に描かれ、『7年目のツレがうつになりまして。』では映像化の裏話や2人の子育ての様子についても描かれています。
『マンガで分かる心療内科』
『マンガで分かる心療内科』 1〜19巻 ゆうきゆう・ソウ / 少年画報社
心療内科の専門医がうつや双極性障害などの症例を軽快に解説
精神科医のゆうきゆう先生が原作を務め、専門医の立場から心療内科の症例を解説していく『マンガで分かる心療内科』。というと、漫画ながらマジメで難しい内容になっているのではないかと思われるかもしれませんが、心配ご無用。ギャグに笑いながら、心療内科について詳しく知ることができる、とても読みやすい作品です。進行役の2人のやりとりは軽妙ですが、語られる内容は濃密。心療内科の専門用語や具体的な診断法がわかりやすく解説され、具体的な診断法についても知ることができるのが利点です。
第1巻収録の第3回では、「うつ病」になると起こすことが多いと言われている「3つの妄想」について説明されています。自分は病気なのではないかと思いこむ「心気妄想」、罪深い存在だと思いこむ「罪業妄想」、貧乏なのではないかと思いこむ「貧困妄想」がそれです。これらを総称して、「微小妄想」(自分は小さい存在であるという妄想)と言われています。また、第6回(第1巻収録)では、うつの診断テストCES-D(セスデー)が紹介され、「何かに集中することができない。」「自分の人生は失敗だったと思う。」「何か、恐ろしく感じることが多い。」など、全20項目ある質問の中からいくつかを自分に問いかけてみることができます。
第49回(第5巻収録)では、「双極性障害」について紹介されています。双極性障害には「Ⅰ型」「Ⅱ型」があり、それぞれの症状の特徴や躁状態の時にでる代表的な症状「誇大妄想」について、わかりやすく教えてくれます。「うつ病」と診断されたが薬が効かなかった…周期的に攻撃的になることがある…など、思い当たることがあれば心療内科に行ってみるとよいとのアドバイスも。
他にも、幻聴やパニック障害、摂食障害や発達障害など、あらゆる項目を取りあげており、人の心の問題はこれほどまでに多岐にわたるのかと考えさせられます。うつ病をはじめとした心の病を、より専門的に知りたい方にうってつけな本作。一見ハードルが高く思える心療内科を、身近にしてくれる作品です。
▼『うつヌケ』田中圭一先生×ゆうきゆう先生のインタビューも公開中!
「わが生涯に一片のコマあり」第11回:ゆうきゆう先生
『ぼくのオカンがうつになった。』
完結『ぼくのオカンがうつになった。』 全1巻 佐口賢作・サトウナオミ / PHP研究所
もし実の親がうつになったら……。うつの母と過ごした体験記
働く世代に多いと思われがちですが、意外と中高年の患者も多いうつ病。本作は、うつの母親を持つフリーライターの佐口賢作先生が、自らの体験をまとめた実録漫画です。佐口先生の母は慢性的な体調不良で、「電話が怖い」「眠れない」「人混みキライ」といった状態が続いていました。実は、これらは全てうつ病の兆候。やがて佐口先生が20代の頃に発症し、先生と母のうつとの長い付き合いが始まることになります。母ひとり子ひとりの関係で長年にわたるやり取りは、心に迫るものがあります。
社会に出て働き、結婚などの将来を見据えて、自分の人生を作っていくのが20代。そんな時、親がうつになってしまったらどうなるのか? 頼もしかった親が手がつけられないほどわがままになるという精神的な苦しみ、時間や金銭の負担、そして自分の恋愛への影響など、うつの親を持った若者世代ならではの葛藤と、その時にどう考え、どう行動していったのかが綴られています。専門の本を読んでも、「うつ病になった親との接し方が説明されているページはほんのわずか」だったという佐口先生。それが本を書く動機になったそうです。
取材経験豊富なライターならではの冷静な視点が、この作品の特徴。漫画の間に挿入されたコラムでも、中高年のうつへの考察や、その対処の仕方がしっかり書かれています。サトウナオミ先生による作画も穏やかなタッチで、母と子の絆を描く、優しさに溢れた物語としても読み応えがあります。
『夫婦で鬱るんです』
完結『夫婦で鬱るんです』 全1巻 稲垣みさお / 少年画報社
妻のうつが夫に伝染って……。出産・育児とうつの治療が重なった
「うつ病でも、妊娠・出産・育児は可能です!!!」と力強く宣言するのは、『猟奇伝説アルカード』や『死体処理請負人 アマネ』などを手掛けるホラー漫画家の稲垣みさお先生。『夫婦で鬱るんです』は、うつになった夫婦の毎日を描く体験談であり、出産・育児の記録です。
幸せな結婚をした漫画家で妻のみさお先生と編集者で夫のキイトさん。しかし、みさお先生がうつ病になり、それが快方に向かったところで、今度はキイトさんがうつ病に。うつが抜けきっていない妻と、うつの真っ只中にいる夫という状況での妊娠・出産でした。
妊娠前からうつ病治療と妊娠について、精神科医や産科医に尋ねたり、本を読んだりして、うつの薬を飲みながら妊娠していいのか、飲んでいる薬は胎児に影響はないのかなど、情報を集めていたみさお先生。最終的に薬剤師の、
今のあなたの薬で胎児に影響が出るということはほとんどなく 薬を飲んで精神的に楽な生活を送る方が大事ですよ
という言葉に後押しされ、女の子を無事出産します。しかし、うつの夫婦による育児は大変。実家の母が大いに助けになるのでした。1歳になると、娘のひーちゃんは保育所へ。周りの人に支えられて、みさお先生は育児を続けていきます。そんな中でもすくすくと育っていくひーちゃんは、うつに陥ったみさお先生の涙をハンカチで拭いたり、抱きしめてなぐさめたりと、子供という存在の大きさを感じさせてくれます。
実は、双極性障害であり、うつの薬が効いていなかったキイトさん。双極性障害を抱えるキイトさんの暮らしとそんな夫を救うためのみさお先生の奮闘は、『ソーウツ夫を救え!! ウツな私の熱血ライフ』で読むことができます。
『わたしは働くうつウーマン』
完結『わたしは働くうつウーマン』 全1巻 安部結貴・大葉リビ / 小学館
うつになっても、働くワケは? ワーキングウーマンの奮闘
本作の安部結貴先生の場合、うつ病だと診断されるまで、長い紆余曲折がありました。もともとは広告制作ディレクター。バブル時代にバリバリ働き、月200時間の残業もこなすキャリアウーマンでした。ところが過労で倒れ、自律神経失調症の診断を受けます。なんとか多忙な会社を辞め、ハワイで療養することに。元気になって帰国し、今度はフリーライターとして活躍しますが、そんな時再び体の変調とともに、「死にたい」とまで思う不安がやってきます。心療内科の診断結果は、うつ病でした。
本作のポイントは、安部先生がうつ病を患い、投薬と通院を続けながら、仕事をしているところです。それは生活のためであったのと同時に、「一人になるのが怖かった」からだと、安部先生は自己分析します。実はその頃、同棲中の恋人がいたのですが、協力的なところはほとんどなし。2人で暮らしながらも、1人でうつに立ち向かう孤独。想像しただけでも、切なくなってきます。
それでも明るさを失わず、うつと向かい合って約15年。仕事で人に会うと、翌日は寝込んでもしょうがないと前向きに考えたり、興味を持っていた社交ダンスを始めたり、うつを自分の一部と考えて、次第にポジティブになっていく安部先生。そして、見事に寛解! と思いきや、再び発症し、今度は「双極性障害」と診断されて……。安部先生の奮闘は『入院しちゃったうつウーマン』へと続いていくのです。
最後に
人付き合いが怖くなったり、将来に不安を覚えたり、仕事でミスをして自信がなくなったり……こういうことに身に覚えがある方も多いのではないでしょうか? うつ病や双極性障害はほんの些細なことがきっかけで、自分や自分の身の周りの誰かがなる可能性があるのです。必要以上に怖れないためには、まず知ること。うつ病や双極性障害について考えるきっかけとなれば嬉しいです。