名称未設定さんのレビュー一覧
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尻上がりに面白くなってく
第1巻はそれほどでもなかったのですが、2巻3巻と巻を重ねるに連れ尻上がりに面白くなっていくシリーズです。
この第3巻目までくると主要登場人物達のキャラクターも立つようになって、物語の世界に入り込みやすくなります。
繊細でぶっきらぼうな天才肌の主人公無量、それに恋する体力自慢のお笑い担当萌絵、無量の保護者のような冷徹イケメン忍、おっさんを絵に描いたようなやり手所長の立石と、読むほどに味が出てくる各キャラクターが物語を盛り上げてくれます。
なによりストーリーがよく出来ています。
考古学や歴史をよく調べて、緻密なストーリーを作り上げています。
歴史好きはもちろん、そうでなくてもミステリーありスリル...続きを読む -
水族の生態と人間の成長ドラマ
ドジで一生懸命な主人公がまた帰って来ました。
今作では更に水族館員として成長しています。
ただ、ドジっぷりもパワーアップ。でも、そんな時はやっぱり先輩が助けに来てくれる?かな?
そんなお約束もありつつ、今作でも水族と水族館の裏側を紹介しながら、昨今の社会事情も絡めながら、爽やかに物語が進んでいきます。
但し、今回は今まで以上に難問が水族館に降りかかります。
そして、主人公だけではなく、水族館全体、館員全員が右往左往の大騒ぎ。
しかも、それを取り仕切るリーダーにドジ主人公が立候補で、騒動はエスカレート。
頼りの先輩は出張延期でこっちも大忙し。
果たして水族館と恋の行方はどうなるのか?
全...続きを読む -
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クスっとくる、水族館裏話
1巻より面白い。尻上がりに面白くなってく感じです。
水族館の裏方、苦労話を個性豊かな面々がコミカルに物語ってくれます。
水族館のお仕事のみではなく、水族館の社会的役割や意義、海洋生物の生態等のためになる話が多く、でも登場キャラクター達がコミカルに掛け合いながら教えてくれるので、知識が意識せずともスーッと自然に頭に入ってきます。
新しい事にチャレンジし、失敗しながら成長してゆく主人公、それを温かく厳しく見守る豪快な上司達、癖のある外部業者とのやり取り等、リアルお仕事系小説としても面白味があります。
また、職人気質な梶先輩との恋に四苦八苦、しかも今回は遠距離で右往左往してる主人公の姿も面白い...続きを読む -
ゆるりとした、怪しい物語
陰陽師安倍晴明と、音楽の才人源博雅を中心とした、雅な都に起こる奇怪な物語です。
様々な怪異を解決する天才陰陽師と、本人は自分でよく分かってないながら鋭いアドバイスをする人の良い博雅のコンビに、妖怪じみたライバルの芦屋道満、面倒は全て晴明に丸投げの師匠賀茂保憲。それぞれがそれぞれに活躍します。
基本的にはショートストーリー集なので読みやすいです。あまりアップダウンのある物語ではなく、ゆるゆると進んでいくので、読んでいる側も雅な気分になります。
人の執念や欲や情が人を鬼に変え、または人と神や仏と呼ばれる力を持つものとのこじれた関係を直してゆく、というのが基本となっており、そこに人々のドラマが垣...続きを読む -
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長い双方向片思いの末に
最後は愛、で締めますか。しかも急展開、なようでいて、実はそれまでの全てが最終話の振りだったと。
最初はトキワ荘のような、作家の卵の集まるアパートでの個性的な住人にそれぞれ降り掛かる悲喜こもごもの人生劇場を描いてるのかな、と思ってたら、あら不思議。まるで関係ないように思えた1つ1つの小さなお話が、最後にミステリー小説の謎が解ける瞬間のように1つに繋がっていく、辻村深月小説の醍醐味、最終話での大どんでん返しが待ってます。
上巻は盛り上がり処に欠け、主人公の環にも共感できず、そんなに面白くないなと思ってたら、下巻になってからストーリーが深くなっていき、一気に面白くなってきます。なので最後まで読み...続きを読む -
退屈
世界的な評価は高いらしいですが、自分には正直言って退屈でした。
理由としては、基本的に一神教的な価値観に基づいて書かれた物語である点です。結局全ては神の手によって人の運命が決められていると、それを学ぶ旅をする少年の物語が本書の肝な訳ですが、信じてない人間にとっては何でもかんでも神頼みで、信じてれば必ず助けてくれるとか、非常に宗教的で御都合主義です。
自力で成長して運命を切り開いていくハリーポッター等の小説の方がよっぽど好感を持てます。
同じ様な心の旅系の児童書なら、特定の価値観や哲学に固執していない星の王子さまの方がずっと面白いです。
一神教徒でなければ特に共感もできず、面白いとも感じない...続きを読む -
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続きが気になる
一言で言えば、誰かの精神世界に閉じ込められた8人の高校生のお話で、ミステリーとホラーの要素が混じってます。
そしてよくある、この中の誰か1人が実は。。。といった展開なのでしょうか、下巻を読まないと分かりませんけど。
なにより引き込まれるのが、この辻村深月という作家のストーリー作りの巧みさです。無関係に思える各登場人物の細かなサイドストーリーが、複雑に絡み合い1つの大きなストーリーの全体像を徐々に浮かび上がらせていく。それでいて一人一人のキャラクターがしっかりと描かれている。その構成のストーリー作りの巧みさは女性作家の中ではNO.1なのではないかと思ってます。
上巻を読み終えた時点ではまだス...続きを読む -
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江戸末期の浪漫譚
まず、歴史小説としては書き方が現代的であり、非常に読みやすいです。なので若い人でも十分に楽しめます。むしろ若い人向けといえる無いようです。
七夕の織姫と彦星を連想させるような、くノ一の織江と賢い変わり者の彦馬。お互い再会を願いながらも、くノ一という過酷な運命を背負って孤独に戦い続ける織江、それを一途に追い続ける彦馬。ロマンチックでもあり、ドラマチックでもあり、悲劇も喜劇もありの恋物語です。
そこに彦馬の上司でもある松浦静山のスケールの大きな野望が絡んでくるので、壮大な歴史小説ともなっています。
そして実在の人物である松浦静山と彼が実際に記した甲子夜話も、物語の重要な鍵となっており、これらへの...続きを読む -
摩訶不思議な恋物語?
古めかしい語り口で語られる、卑猥なる四畳半パラレル恋物語。
主人公は孤高なる生き様を貫く?自堕落な大学三回生。
それに付け入るは、パラレルワールドを行き来し悪事の限りを尽くす妖怪小津。
無茶な要求ばかりする、仙人のように達観した小津の師匠、樋口。
樋口師匠と激しい悪戯合戦を繰り広げる城ヶ崎先輩。
そんな人々 (主に小津) の巻き起こす騒動に巻き込まれながらも、怠惰さを以て抵抗する主人公の前に現れた一輪の華、黒髪の乙女、明石さんとの四畳半での目眩く恋の物語。
なのでしょうか。
独特の語り口が印象的な作品です。
表紙は可憐で古風な乙女が幻想的なタッチで描かれていますが、内容は大正ロマンな乙女の恋...続きを読む -