面白かったー!
登場人物が魅力的に描かれてるのがまず良かった。主人公の長瀬は器用で何でもそつ無くこなす感じ。でもそんな自分について理解もしてるからたまにちょっと嫌になるという人間らしさもある。
もう1人の主人公とも言える少年、慎一郎も16歳とは思えない冷静さで子供ならではのうるささ、青さみたいなのが
...続きを読むほとんど感じられず(彼の生まれ育った境遇によるもの)もしかしたら不自然というかこんな子供いないのかもしれんけど…読んでるぶんには無茶なことしたりせんからイラつかされんで良かった。
ベトナム現地の運転手のビエンや娼婦のメイ、長瀬の友人(と素直に言えるのか分からんくらいには仲良しこよしって感じの関係性ではないけど)の源内…皆それぞれ個性的で好感持てた。
魅力的なのはキャラクターだけじゃなくて話の内容も。次々先が気になってあっという間に読めた。時間としては3時間近くはかかったけど体感としてはあっという間。
スリルもあるし長瀬の機転をきかせる場面もあるし、うっすらロマンス的な要素もある。
長瀬は仕事もできるし人間的に頼りになるところが異性として魅力的やと思うから、最後メイとどうにかなるかな…とちょっと期待したけど実は彼女いましたーって言うのも妙にリアルやった。
慎一郎の周りの大人たちは皆勝手やな、、
皆親ではなく「男」であり「女」のままで…慎一郎なら大丈夫やと思って甘えてる。慎一郎だけは自分で自分の人生を選択することもできず雁字搦めになってて。
最後は父親が彼に逃げ道を多少与えたけどそれだって死ぬ思いでこっちから会いに行ったからこそで本来は息子には一生会うつもりなかったみたいやし。父も母も愛情が薄いというか慎一郎を息子ではなく個々の人間というか守るべき相手としては見てない感じと言うか。
それは今現在祖父が大きな力を持ってて経済的にも社会的にも十分に彼を守ってあげられると分かってるからこそでもあるんやろうけど…。
全てを知った慎一郎の胸の内を思うとひたすら切ない。そして最後に父から渡された腕時計を窓から投げ捨てたのはちょっとスカッとした。
慎一郎の今後の人生が幸多からんことを…と願わずにはおれんかった。