澤田瞳子のレビュー一覧

  • 輝山
    『輝山』というタイトルの思いが込められた、
    とても素晴らしく輝く物語でした。
    江戸表から石見国大森代官所に赴いてきた金吾が、銀山の町で懸命に生きる人々と出会い、触れ合いながら魅せられていく様、またその銀山で暮らす人々のドラマ、そして時代劇特有の何か匂う役人たちのドラマ、全てが面白かった!
    堀子頭であ...続きを読む
  • 漆花ひとつ
    鎌倉殿の前日譚といった位置付けの、保元の乱前後の京を舞台にした様々な視点のドラマ。

    討ち取られたはずの「鬼対馬」こと源義親を名乗る者が二人も現れた事件
    鳥羽天皇に寵愛された美福門院得子を呪詛したとして待賢門院璋子が失脚した事件
    後に文覚と名乗る武士・遠藤盛遠が人妻に懸想しその夫を殺害しようとして誤...続きを読む
  • 恋ふらむ鳥は
    長い物語だし、古代のなじみ薄い時代の小説ですが登場人物が生き生きと人間らしく、生き方について自分ならどうするか考えさせられるなど、深く入り込める物語でした。
  • 若冲
    江戸時代に京都で活躍した画家の生涯。物語の根幹を成す「妻の自死」が作者の創作によるところに小説の自由さを感じる。確かに300年も前の画家の生活の記録などは残っているはずもないものの、同世代に活躍した画家達を上手くかけ合わせつつ、人間、若冲いきいきと描いています。
    実在の市川君圭を生涯の宿敵、盟友とす...続きを読む
  • 輝山
    時代物なので難解なのかと警戒して読み始めだが、読みやすく、どんどん話に引き込まれていった。死についての解釈が良かった。
  • 与楽の飯~東大寺造仏所炊屋私記~
    東大寺造仏所で働く人々のために飯を作る炊屋(かしきや)の炊男(かしきおとこ)、宮麻呂。
    客である造仏所の働き手たちのために、自ら材料を集めに回り、少しでもうまい飯を提供する。
    ぶっきらぼうだが面倒見がよい彼の周りには、多くの人々が集まってくる。
    近江の国から仕丁として働きにきた真楯もその一人だ。
    ...続きを読む
  • 孤鷹(こよう)の天 上
    奈良時代が意外と戦乱の時代だったことを知った作品です。澤田瞳子さんの作品は、10冊以上読んでますが、これがデビュー作(だったと思う?)とは思えない傑作で、まさに「栴檀は双葉より芳し」だと思います。
  • 泣くな道真 大宰府の詩
    菅原道真については、教科書に書いてあるくらいのことしか知らなかったので、こんなに大人げない人だとは!と驚いた。(いや、これフィクションだし)
    何しろ身に覚えのない罪で左遷されちゃったので、ひきこもる、人にあたる、物にあたる。
    とてつもなく教養のある文人貴族じゃないの?

    藤原氏全盛の時に、実力(教養...続きを読む
  • 泣くな道真 大宰府の詩
    歴史小説の醍醐味の一つに、史実では証明されていない同時期の人物の邂逅があげられる。
    今回楽しんだのは道真と小野小町のやりとりだった。
    現代以上にもののけや闇を恐れた平安人に恐怖を感じさせた菅原道真が、こんな気さくなおじさんだったと知ったらさぞや驚いただろう。
    話は面白く読みやすいのでお薦めできる一冊...続きを読む
  • 夢も定かに
    平安初期の後宮に仕える女官たち。
    平安中期の、道長の時代辺りに材をとった小説はたくさんあるが、奈良時代を舞台にするものは初めて読む。

    へえ、こんなもの食べてたんだ。
    油飯って、割とおいしそう。
    年老いた女官は光永寺という寺で隠居したのか。
    女官の官舎に舎監がいるなんて、何か学校の女子寮みたいだなあ...続きを読む
  • 輝山
    読んでいるうちにどんどん気持ちが温かくなってきた。とても味のある本だった。命の重み、儚さを教えてくれた。
  • 漆花ひとつ
    武士の台頭が始まる頃の平安末期の物語。こんなムダな権力争いばっかりしてたら、そりゃ武士も台頭するわ!と思いました。平清盛がなんだか素敵で珍しい。短編なので読みやすいです。
  • 輝山
    巻頭の登場人物の説明はかなり詳細なんだけど、銀山特有の用語の説明もあるとよいなと思った。
    人物説明の方は、少々親切過ぎて、実直とか、情が篤いとか、読者が読んで理解すればよいのでは。
  • 輝山
     江戸から派遣された金吾を主人公に、落盤・気絶(けだえ:鉱山のガスや油で罹患)などから命短いとされる銀山の「堀子」たちの人情話を展開しています。
     金吾が勤める代官所や堀子たちの話が前半まで続きますが、この本の面白さは後半から。手に取ったら、最後まで読まれることをお薦めします。
     巻末につけられた参...続きを読む
  • 若冲
    名だたる代表作の描写が想像を掻き立て、詳細を求めてネット検索してその作品を見ながら読んだ。設定が面白い。若冲の明らかに逸脱している作風に対する考察にストンと腑に落ちるものがあった。
    著者の作品を読むのは初めて。同志社大学で史学の修士号を取得されてるという著者ならではの作品はこれからも読んでいきたい。
  • 与楽の飯~東大寺造仏所炊屋私記~
    奈良時代の仏像の造営現場を通して、当時の人々の様子や食べていたものを垣間見ることが出来る。仏像の話なのに、仏教でいうところの仏ではなく、市井の人の中の「仏」を描いているのがいい。
  • 輝山
    4.5

    舞台は江戸時代後期の石見銀山。
    江戸表から石見国大森代官所へと派遣された中間(小者)・金吾は、実はここの代官・岩田鍬三郎を監視し、何らかの瑕疵を暴き報告する密命を帯びていた。

    だが…
    極めて過酷な労働条件下で働きながらも、素朴で明るい大森の人間達との交流を通して、岩田の何よりも民の安寧を...続きを読む
  • 輝山
    2021年夏に直木賞を受賞した作家の歴史小説。江戸後期の石見銀山を舞台にいろいろな人の生きざま、人情を描く。
    江戸から石見国大森銀山代官所の中間として派遣された金吾は元上役の小出から代官・岩田鍬三郎の身辺を探るという密命を受けていた。
    彼は、代官所での勤めのかたわら、鉱山で働く男たちが集まる飯屋に通...続きを読む
  • 輝山
    『星落ちて、なお』で直木賞を受賞した澤田さんの受賞後第一作。石見国大森銀山で中間として働く金吾をメインに、様々な切り口でそこに暮らす人々を活写する。金吾は代官・岩田を探る密命を帯びており、そこもまた読みどころの一つだ。
    銀山の中で鉱石を掘り出す話かと思ったがそんな描写はまったくなく、それなのに当時の...続きを読む
  • 満つる月の如し 仏師・定朝
    平等院の阿弥陀如来像へと至る仏師定朝の軌跡を藤原道長全盛の時代の中で描く.延暦寺の僧侶隆範との関係,関わってくる貴族の横暴,国母彰子の苦悩,貧しい人々の救いなどたくさんの登場人物のそれぞれがそれぞれの苦しみに喘いでいる末法の世が現れている.読みながらとても息苦しく感じた.
    敦明親王の苦悩にみんなが同...続きを読む