澤田瞳子のレビュー一覧

  • 火定
    本作を敢えて一言で言えば「奈良時代を背景にした“時代モノ”の小説」ということにしかならないと思う。が、その「一言」に収まらないような、「憑かれる」かのように嵌ってしまうような側面も在る。
    余り経験も無いことであるが、本作に関しては「憑かれる」かのように夢中で読み進め、ふと顔を上げて、作中で展開してい...続きを読む
  • 日輪の賦
    「7世紀の終わり頃から8世紀に切り替わるような頃」というのは、日本史では「持統天皇から文武天皇の時代」というようなことになる。現在の奈良市に在った平城京に遷都する前の、現在の橿原市に在った藤原京、読んだばかりの小説では推定される当時の呼称の新益京(あらましのみやこ)が築かれて日が浅い頃のことである。...続きを読む
  • 孤鷹(こよう)の天 上
    (Yodobashi.com電子書籍版)
    基本的な歴史を知っているので若干つらいものはあるが、途中からはぐいぐい引き込まれた。さて、下巻は?
  • 能楽ものがたり 稚児桜
    能を題材にした短編八話。奈良時代、平安時代あたりか。不安な運命に生まれながらも、逞しく生きる決意を書いたものや、転んでもタダでは起きない女の底力、嫉妬を書いた物など、どれも30ページ程にも関わらず、グイグイ引き込まれる。最後の光源氏の妻、葵の上を書いた話などはとても印象的。能楽が元という先入観もある...続きを読む
  • 能楽ものがたり 稚児桜
    時代が明記されていない作品もあるものの、おおむね古代~平安時代あたりが舞台でしょうか。

    能楽の名曲からインスパイアされた作品が並ぶ短編集です。
    もちろん元ネタは知らないものばかりでしたが、能楽の名曲が基底にあるとはいえ、どれも絶妙なひねりを加えている印象を受けました。

    本書は貧しい立場に置かれた...続きを読む
  • 能楽ものがたり 稚児桜
    全編面白かった…!元の演目を知っていればもっともっと面白いンだろうなあ。掘り下げたいが、如何にせん。
  • 夢も定かに
    奈良時代、三人の采女たちの青春群像劇であり、難しく弱い立場で生きねばならない彼女たちの、意思と強さの物語。

    宮人である彼女たちの、現代の会社勤めに通じるような人間関係や様々な縛り、男女の差、その中でもがきながら友情を育む様がよく、終盤での大きな権力にしたたかに舌を出して守るべきものを守る姿に感動し...続きを読む
  • 火定
    友人に「絶対に好きだと思う」とオススメされた本。

    めちゃくちゃおもしろかった!
     
    天平の時代
    栄華を極めた藤原四兄弟をもおののかせ、
    都の京都をはじめ、日本国中を揺るがせた天然痘
    その病と闘った医師、
    疫病の恐ろしさから混乱する人々
    さらにその恐怖に乗じて国内を騒がそうとする人々

    死に至る病に...続きを読む
  • 火定
    奈良時代に猛威をふるった疫病とたたかう医師ら。
    重すぎて読みにくいかと思ったけれど、力強い筆致に引き込まれ、感動しました。

    聖武天皇の御世。
    都の施薬院に勤める名代(なしろ)は、病人の世話に飽き、出世の可能性がないことを嘆いていました。
    上司の綱手は治療に打ち込む良心的な医師ですが、思わぬ疫病がは...続きを読む
  • 火定
    コロナ騒動で日本中が騒然としているこのタイミングでこの本を読むことになるとは、なんという偶然か。

    奈良時代、日本を襲った天然痘。その病気自体の脅威も去ることながら、冷静な判断を失っていく人間たちの行動の愚かさ、恐ろしさ。

    マスクだけでなく、トイレットペーパーやお米までが店頭からなくなり、それを「...続きを読む
  • 孤鷹(こよう)の天 下
    2019年ベストの小説。

    国を思い、義を貫く若者たちの生き様を描いた奈良の時代小説。

    ■各人物の義を通す姿が熱い
    斐麻呂、雄依、上信を中心に仁義、仲間を最後まで優先させる姿に心惹かれる。それ故に政変に巻き込まれ、生まれる悲劇がより悲しく、涙を誘ってしまうのだと思う。
    また、義を貫く彼らへの単...続きを読む
  • 秋萩の散る
    初めての澤田作品。これが澤田瞳子かという衝撃。一気にファンになってしまった。当時の地名や呼び名を使いながらも、会話や地の文の説明は分かりやすく、何より当時の風景を想起させる巧みな情景描写が物語を唯一無二のものにしている。

    本作は聖武・孝謙天皇の時代を描いた5編の短編集。特に2作目の「南海の桃李」が...続きを読む
  • 火定
    大変面白かった。命を救えなかった人たちを無駄死にさせてはならないという気持ちで流行り病に立ち向かおうとする姿勢に感銘を受けた。
    天平時代て、まるで世の中の様子も想像できないけれど、緻密な筆致で充分補完できる。澤田さんの他の作品も読んでみたい。
  • 孤鷹(こよう)の天 上
    主人公と赤土は勿論、大学寮の魅力的な登場人物たちにあっという間に引き込まれた。こんなに夢中になって寝食も惜しんで読みたいと思った本は久しぶり。
  • 孤鷹(こよう)の天 下
    涙なしには読めなかった。。。それぞれがそれぞれの義を貫く姿に何度胸が熱くなったことか。1人1人の生き様が鮮明に心に焼きついた。
  • 若冲
    澤田先生は人の恨みが昇華される過程を描くのが本当に巧み。ラストシーンの弁蔵に胸が詰まった。動植綵絵。。。観に行けばよかった。。。
  • 夢も定かに
    歴史の表舞台に立つ人たちの話ではないけど、ちゃんと実在のモデルがいるところが、単なる物語(作り話)に思えなくてワクワクした。奈良時代って、平安時代よりも帝や妃との距離が近いのかな?
  • 若冲
    奇矯な絵で人々を魅了した伊藤若冲。
    取憑かれた様に彼を作画にのめり込ませるのは、贖罪の思いなのだろうか。
    彼を憎み、贋作を描き続ける義弟・弁蔵に描かせるものは激しい憎悪である。
    若冲は弁蔵に追われ、弁蔵は若冲を追い、さながら光と影のように、または撚り合わさった縄のように存在する、二人の絵師と、作品た...続きを読む
  • 日輪の賦
    古代日本史の本というのをあまり読んでないので、他の作品とは比較できないが、この本は面白かった。戦のシーンはほとんど出てこない政争劇なのだが、適度に緊張感があり登場人物たちの描写も分かりやすくて、ボリュームやテーマの割に読みやすい。

    持統天皇以前まで、天皇ではなく大王(おおきみ)であったこと。そして...続きを読む
  • 夢も定かに
    奈良時代、しかも聖武天皇の時代を描こうと思えば、藤原四兄弟と長屋王との権力争いや彼が大仏建立に至った気持ちの小説になるのだろう、ふ・つ・うは!

    だが、この作品で描かれているのは宮中で働く菜女と呼ばれる女性たちである。幾分、ライトノベルズのように描かれているのが不満だが、そこにあるのは現代の働く女性...続きを読む