澤田瞳子のレビュー一覧

  • 若冲
    なかなか味わい深い本で感想が難しい本です。まず、このタイトルが何を意味しているのか読むまで全く知らず。江戸時代の有名な画家だったのですね。その絵師、若冲の生涯を描いた連作短編ですが、この手の話を読むといつも、読みながら、思わずググってしまいます。今回も鹿苑寺障壁画とか、石峰寺とか、鳥獣図とか思わず調...続きを読む
  • 泣くな道真 大宰府の詩
    菅原道真というと、天神様。
    藤原時平の謀略で、無実の罪で太宰府に流され、失意のうちに亡くなった文人政治家。
    そして、その死後、雷神となり、都を脅かした…。
    しかし、それ以外、自分は何を知っているのだろう?

    本作では、道真が太宰府に流されてからの日々が描かれる。
    面白いのは、道真の目線ではなく、彼を...続きを読む
  • 泣くな道真 大宰府の詩
    奈良仏教史を専攻する作家が描いた太宰府へ流された後の道真さんの物語。本当にこんな風だったらいいな。有名な女性歌人も登場して、てんこもりで痛快。
  • 火定
    天平7年(735年)から同9年(737年)にかけて大流行した天然痘は首都・平城京(奈良)でも大量の感染者を出し、国政を担っていた藤原4兄弟も相次いで死去した。日本の政治経済や宗教が大混乱に陥り、後の大仏建立のきっかけとなる未曾有のパンデミックであった。
    本書はその混乱の中、病の蔓延を食い止めようとす...続きを読む
  • 火定
    奈良時代におこった天然痘のパンデミックを背景に、人の哀しい性や医療従事者の葛藤などを描いた作品。自分だけは助かろうと自己中心的になる人、混乱に乗じて一儲けしようとする人、デマや噂に翻弄されて理性を失う人など、色々な人が登場する。世界的なコロナ禍のいま読むと、似たような出来事が思い当ってリアルに思える...続きを読む
  • 火定
    奈良時代、天然痘。
    病を持ち込んだと罪悪感に苛まれるもの、
    流行を食い止めようと必死な医師、
    流行に乗じて儲けよう、流言で混乱させようとするもの、
    疫病への恐れ、不安、怒りから、混乱に巻き込まれ暴徒と化す民衆。

  • 若冲
    「若冲」と言えば、多彩な色彩とその美しい彩色を思い出す。「動植綵絵」は、その多色彩もさることながら、写体の生々しさの中に実物とかけ離れた幻想的な鶏、鳳凰、草花などに見ているとその迫力に疲れを感じる時がある。
    本作の第一章のタイトルとなっている「鳴鶴」は、以前行った特別展示会で、中国の文正の「鳴鶴図」...続きを読む
  • 若冲
    史実とは異なると思うが、とても面白い小説に仕上げている。著者は京都で学んだおかげで絵に対する造詣も深いのか。絵に対する描写も細やかで、物語が真に迫る。若冲が、なぜ独特の奇矯な絵をなぜ描けたのか、独創的な想像力で物語に仕上げている。しかもただ、単に面白い物語だけではなく、もしかしたら筆者が絵の中に見た...続きを読む
  • 火定
    友人の薦めで読み始め、最初の数ページは用語がなかなか頭に入ってこなくて、読み進める自信がなかったけど、段々読みやすくなり、一気に読んでしまいました。

    とにかく奈良時代、千年以上、気の遠くなるような昔の話です。
    どの程度、このお話がリアルなのかなんて、わかりようもない。
    お話として面白かったのでよし...続きを読む
  • 京都はんなり暮し 〈新装版〉
    京都人として「あ~あれね」、というローカル事情がつらつらと書かれていて楽しく読めた。

    あとがきのこの一文が京都の歴史をうまくまとめているかと。
    それらの出来事を眺めるに、結局京都に暮すとはそういった様々な変化を愛するということと同義なのかもしれないと思う。

    よそさんもぜひ読んでみては。
  • 泣くな道真 大宰府の詩
    一度目は始め数ページでリタイア。
    もう一度と思って再チャレンジしたら
    まぁ面白い‼️
    道真のイメージががらっと変わった。
  • 与楽の飯~東大寺造仏所炊屋私記~
    澤田先生得意の奈良時代。しかも設定は大仏造成所。この時代は人よりは知っているつもりだが、知らないことが多く、全てが新鮮に感じた。

    解説にはホームズとワトソンとなったが、ミステリ(謎)自体はそんなに複雑なものではない。その前後に見え隠れする時代の特殊性、過酷な環境などが物語を盛り立ていると思う。蝦夷...続きを読む
  • 腐れ梅
    幕末よりもっと昔の平安時代とかの歴史小説の方が好きかも
    まぁこの小説はピカレスクロマン(ダークヒーローもの)だったからかもしれないけど。

    とにかく読みやすくて面白かった。
    登場人物が全員クズなんだけど(唯一康明だけは光だったかな)

    女の人怖いよ〜
  • 火定
    2015年に雑誌連載された作品らしいがテーマは実にタイムリー。
    裳瘡(天然痘)が大流行し夥しい人々が亡くなりパニックに陥っていく寧楽(なら)の都を、施薬院で働く蜂田名代(はちだのなしろ)と冤罪により投獄されたことにより世を怨む元侍医の猪名部諸男(いなべのもろお)の視点を通して描く。

    『病とは恐ろし...続きを読む
  • 火定
    藤原氏の大きな危機を招いた天平の天然痘の大流行を描いた作品である。
    単行本から文庫化するのを待っていたのだ、まさか、コロナという新たな病のパンデミィック下で読むことになろうとは皮肉なものである。

    舞台は二つ。一つは貧しい人々を受けいれ治療している施薬院で不満を抱えながら働く下級役人名代の行く道のり...続きを読む
  • 泣くな道真 大宰府の詩
    ナツイチのノベルティ欲しさで買った一冊でしたが、本当に面白かったです。
    徹底的に史料を読み込まれた裏付けによって書かれた物語は映像化して、もっと多くの人達に知って貰いたい位です。(道真は野村萬斎さんかな。ただ、平安時代はヒットしないか。)
    いつの時代にも通じるテーマで、読後感もすっきりでした。
    他の...続きを読む
  • 夢も定かに
    奈良時代の女官たちの働きぶり。
    キャラ設定がわかりやすい歴史小説です。

    1300年前の平城京、聖武天皇の御世。
    宮廷を支える後宮には、多くの女性たちが働いていた。
    表紙のイラストのようなキャラ設定で、読みやすい。
    おっとりした若子が上京し、しっかり者の笠女、色っぽく可愛い春世と同室に。
    3人とも1...続きを読む
  • 泣くな道真 大宰府の詩
    太宰府に左遷された道真は
    毎日毎晩悲嘆に暮れて見る影もなし。
    お相手役に任命された保積は
    噂の文人に憧れていたものでショックを隠せない。
    ところが同じく過日の道真を知っている
    歌人の恬子が道真の文具好き心をくすぐって
    博多津に連れ出してみたら…。

    え〜、こんな道真、嫌っす。
    と思いながら読んでいく...続きを読む
  • 日輪の賦
    持統天皇の治世、律令制の確立に奔走する者たちを描いた壮大な物語。概略だけを見れば地味なテーマではあるが、過去の遺産を捨てきれない古い勢力による反抗により話は国家を揺るがす大きな事件を生み出す。

    主人公の廣手たちの行動が律令国家の未来への希望を原動力としている点が非常に気持ち良い。制度は作るだけでは...続きを読む
  • 孤鷹(こよう)の天 下
    (Yodobashi電子書籍版)
    なるほど、下巻はかなりフィクション色が強くなるのか。歴史とはかけ離れてきている部分がちょっと引っかかるけど、面白さは増す。これが奈良時代と思われるとちょっと困るけど。その時代らしさをまとったパラレルワールド小説としては一気に読める面白さ。まあでもこの著者の奈良時代物...続きを読む