澤田瞳子のレビュー一覧

  • 孤鷹(こよう)の天 下
    澤田瞳子の歴史小説オモロいよ、という評判を聞いたので読んでみた。
    評判にたがわず読み応えのある良い作品、しかも、これデビュー作らしいが、そうとは思えない手慣れた筆さばきで、飽きさせない。これ以降の作品も大いに期待できそうである。

    日本史選択の人なら知ってるだろう「藤原仲麻呂の乱」というマイナーな事...続きを読む
  • 孤鷹(こよう)の天 下
    澤田瞳子のデビュー作。
    藤原仲麻呂権勢、阿部上皇(孝謙天皇)の時代。遣唐使をめざして大学寮に学ぶ少年、奴隷の青年との友情と離反など。

    身分格差の問題は『満つる月の如し』にもあったが、時代劇学園物だった上巻の後半、きなくさい政争に巻き込まれて、大学寮の自治が危ぶまれる。

    全共闘世代の大学紛争や、昨...続きを読む
  • のち更に咲く
    いいタイミングで読めた!
    そして私の推量はことごとく外れていった。それでも面白い、平安貴族のロマンの香りプンプンするミステリー作品。
  • 月ぞ流るる
    藤原道長と三条天皇が勢力争いをしている様子を、その周りにいる三条天皇の妻で道長の娘である姸子(けんし)やその女房、とくに学者家系に生まれた朝児(あさこ)とそのもとへ学習のためやってきた頼賢(らいけん)などの目から真実がどこにあるのかをあぶりだすような内容。頼賢の育ての親、原子(げんし)が謎の死をとげ...続きを読む
  • 月ぞ流るる
    重厚な世界観と、息づかいまで聞こえてきそうな丁寧な登場人物の描写が、平安の宮中の独特の雰囲気と、その中で起こる様々な出来事を彩っていて面白かった。
  • 京都はんなり暮し 〈新装版〉
    京都ではお菓子の製造・販売業は、「お餅屋」「お饅屋」「お菓子屋」の三つ。関東でいうところの「団子屋」、フーテンの寅さんのおじさんの家・くるまやさんのようなお店は、こちらでは「お餅屋」に当たる。正しい京菓子屋さんは虎屋、川端道喜。一方各社寺の門前で参拝客相手に菓子を売る店 「お餅屋」「お饅屋」の走りと...続きを読む
  • のち更に咲く
    今昔物語の盗賊袴垂に題を取った?平安絵巻。

    主人公小紅は藤原道長邸である土御門第に暮らす下臈で、物語の大半は土御門第を舞台に進む。

    道長四天王である藤原保昌を兄に持ち、袴垂であるとも言われた末兄保輔の死の謎に迫る。

    藤原摂関家を嫌う和泉式部など実在の人物と架空の人物を組み合わせ、黒幕が今ひとつ...続きを読む
  • のち更に咲く
    謎だらけの話でした。
    名前などの漢字の読み方が難しくなかなか入り込めませんでしたが読み進めるうちに目が離せなくなりました。抗っても逆らえない出来事が沢山ある中での真実の解明に、拍手を送りたいです。
  • のち更に咲く
    平安、藤原道長の時代のミステリー。史実を交えながらの展開に、その手があったかと脱帽。紫式部は数行しか出て来ないのに大河ドラマにあやかってるのかな?全く違う作品です、期待以上です。声を大にして言いたい。
  • 月人壮士
    時は天皇が在命中にもかかわらずコロコロ入れ替わり、女帝も普通に存在し、まさかの再任すらあったという奈良時代。皇族を山族、藤原氏を海族になぞらえ決して交わってはいけない二族の混血として皇位に就いてしまった聖武天皇の苦悩を、周囲の人への聞き取りという形で綴ったという凝った作品です。
    史実と言われている事...続きを読む
  • 名残の花(新潮文庫)
    28年振りに維新後の東京変な戻って来た悪役界の超大物 鳥居耀蔵を通して、江戸時代の文化が失われていく町の様子を描いた作品。
    妖怪とまで言われながら徳川の世を守りたかった鳥居からすれば西洋風にかぶれた風潮が許せなく、また自分が弾圧してきた能や大衆娯楽がかたや凋落、かたや逞しく生き残っている様を見て複雑...続きを読む
  • 火定
    奈良時代の疫病大流行。単なる知識だけだったが、この物語のお陰でそこに生きる人々を想像することができた。
    現代よりもずっと未知のことが多い時代。疫病は計り知れないほどの恐怖だっただろう。何かにすがりたいのも当然。でも、そんな人間の姿は疫病と同じくらい怖い。
  • 吼えろ道真 大宰府の詩
    朝廷での政争に敗れ、太宰府に流された菅原道真を描く、第2弾。
    第1弾からだいぶ間が空いているので、この本を読むに当たって前作を再読しました。
    そうしたら、最初に読んだ時よりもずっと面白かった。ありがとう、第2弾!

    この第2弾では、大宰大弐・小野葛絃(おのの くずお)の甥であり、その仕事の補佐に当た...続きを読む
  • 星落ちて、なお
    おとよさんの葛藤が凄く良かった。
    ぽん太怖い。

    「顧みれば父と自分や周三郎は、赤い血ではなく、一滴の墨、一本の筆で互いを結び合わせていたのかもしれない」
  • 月ぞ流るる
    赤染衛門の栄花物語の背景、つまりは藤原道長の朝廷掌握の独断専横とそれに翻弄された女房や宮廷人たちの物語、三条天皇の皇后を恨む藤原原子の養い児頼賢の事件の真相探しのミステリー色もあって、面白い時代小説になっている。彰子や紫式部なども登場し、また違った視点から眺められるのが新鮮だった。
  • 星落ちて、なお
    2021年の直木賞受賞作品。祝文庫化。天才絵師•河鍋暁斎の娘「暁翠」の伝記。兄妹の、複雑ながらも揺るがない絆が良い。達観は天才にだけ与えられる境地ではないと思えた。
  • のち更に咲く
     今年の大河ドラマ「光る君へ」を観ている。
    その影響を受けて手に取った、この作品だった。
    ドラマのおかげで、時代背景など頭にあり楽しく読めた。
    いや、面白すぎて時代小説にはまりそうだ。
     後半に向かって、物語が盛り上がるのは当たり前だが、それがたまらなく心地よい。
     ″人はどんな淵からでも這い上がる...続きを読む
  • 若冲
    伊藤若冲。
    苦しく哀しい物語でした。

    その絵には圧倒され、不思議な感じも、少し怖い感じもすることがあるけれど、この若冲の物語を読んで、その不思議さや怖さに深みを感じるようになりました。
    池大雅、円山応挙、与謝蕪村、谷文晁といった絵師たちとの関わりも興味深かったです。

    原田マハさんの書かれる西洋ア...続きを読む
  • 龍華記
    平安時代末期、平家が栄華を極める中、平重衡による奈良の寺社勢力に対する南都焼討。

    藤原家、平家、源家。
    滅ぼした者が滅ぼされ、そしてその繰り返し。
    栄華を極めて他者を滅ぼしても、いつか滅ぼされるという憎しみや恨みの連鎖が辛いです。
    生きること、正しいことを説く仏教の世界でこんな乱暴で残虐なことがあ...続きを読む
  • 龍華記
    平安時代末期、平家によって焼き討ちにあった南都(奈良)の興福寺の僧、範長の悔恨と覚醒の物語。平家が滅亡してからのストーリー(第4章〜)が良かった。[電子書籍]
    南都の僧の目を通した平家滅亡の様が新鮮でした。また、物語の最後の旧山田寺本尊(興福寺国宝館に仏頭のみが現存)のストーリーが良かったです。