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菅原道真が、大宰府に流されて五カ月。京からの左遷に怒り泣き喚いていた道真も、身分をやつして博多津に出かけ、唐物の目利きをする愉しみを覚えた。そんなある日、京から唐物使の役人が来た。昨年朝廷に献上された品に不審な点があったため内偵中という。調べの間、道真は館に閉じ込めとなり……。大宰府を欺いた悪党を炙りだすため、大学者の才を惜しみなく発揮する左遷男の活躍を描いたユーモラスな歴史小説。『泣くな道真』に続くシリーズ第2作。
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Posted by ブクログ
朝廷での政争に敗れ、太宰府に流された菅原道真を描く、第2弾。 第1弾からだいぶ間が空いているので、この本を読むに当たって前作を再読しました。 そうしたら、最初に読んだ時よりもずっと面白かった。ありがとう、第2弾! この第2弾では、大宰大弐・小野葛絃(おのの くずお)の甥であり、その仕事の補佐に当た...続きを読むる大宰少弐・小野葛根(おのの くずね)の目を通して描かれる。 葛根は早くに親を亡くし、自分と妹を親代わりになって育て、後見にもなってくれた葛絃を父とも慕い、心から敬愛している。 葛絃が仕事をしやすいように気を配り、葛絃の立場を守るのが自分の使命と思っているが、顔も四角四面なら頭の中も四角四面、真面目すぎるが故の猪突猛進というか・・・ とにかくやりすぎてしまった。 ・・・いや、良い子なんですよ! 人や、何かを恨(うら)んで恨んで、苦しくて仕方がない時、どう生きるか。どうやって報復するか。 結局、己の心を救えるのは、己の心の持ちようだと言う道真。 恨みの心を宥めるには、まず恨む相手に対しての執着や期待を捨てることだろう。 大宰府への左遷を恨んで京都の貴族に祟ったと言われた道真だが、この道真なら、もうそんなことはしないだろうと思われる。 大宰府に下ることで、京にいては見られないものを見て、得られない体験をした。 文房四宝に詳しいという己の特技を生かすことも知った。 流謫地にあっても己の才を生かし、人と交わり、人間らしく、心の赴くままに生きる道真。 雷神とも恐れられた道真の恨みを、この小説を書くことによって作者が浄化したような気さえする。 後の小野道風・阿紀と、道真の娘・紅姫もかわいい。
実に面白かった。後半、物語にのめりこんで、朝の通勤、一駅乗り過ごしてしまった。(笑) 延喜の年号改元の詔の中で、自らのことを謀反人と表現され、そのことに猛り狂った道真が、唐物を、目利きしながら、次第に静かな目に世の中を見るようになる。それと併せて、中央から来た官人が、大宰府の政庁で唐物を密かに...続きを読むとりえて、京に送っていた犯人を捕縛しにやってくる。 そのことに対して、小野葛根などの大宰府政庁の官人たちが大宰府を守ろうとする物語と言えばいいのかな。 最後に、道真が、人が生きようとすると必ずぶつかり合う、何処かで折り合いをつけていかないけないと語り場面はなんだか心にしみる。 考えたら、道真公は、2年程しか大宰府にはいない。残された時間はわずかなのだなあ。
道真シリーズ第二弾。一作目よりも読みやすかったかも。 心のひだの奥があばかれ、さらけ出された感じ。 小野の息子が書道に傾倒して……もしやあの人?!っていう展開も良かった。
流謫の身である菅原道真の”その後”を描く、第二弾。 この巻では太宰少弐である小野葛根の眼から、献上されるべき唐物のすり替え事件の顛末が描かれる。 序盤で丁寧に状況や人間関係を描いていくのは、澤田さんのいつものやりかた。 読者にとってはありがたい一方、人によっては、もうちょっとテンポよく!と思う人も...続きを読むいるかも。 でも、本作は物語上必要な内容がしっかり描かれている。 必要があってそれだけの紙数が費やされるのだということが、読者にもよくわかる。 しかも最後も駆け込みで終わっていくのではなく(他の作品ではその気味があるものも、残念ながらあるが)、しっかり満足感が味わえ、なおかつ少ししっとりした終わり方でよかった。 俊蔭という人物が出てくる。 (つい、宇津保の彼を思い出す。) 唐物史として都から使わされる一本気な官吏である。 この人物の「忠義」と、道真の潰えた「忠義」、そして葛根の叔父への「恩義」が対比されている。 読者としてはいろいろと考えさせられるところだ。 のちの東風となる小野葛絃の次男阿紀と、道真の娘紅姫などかわいらしいカップル(?)も登場した。 続編が書かれるなら、また会いたい子たちだった。
さすが澤田さん、ユーモラスな中に人間くさい道真公(神的凄さも)が描かれていて、いろんな意味で感心した。
「泣くな道真」の続編。道真が太宰府に流されて5ヶ月。唐物の目利きという愉しみを覚えて落ち着いてきたかと思っていたら、延喜への改元の詔を読んで、あろうことか天皇の正式文書を怒りに任せて破り捨てて仕舞う。道真今日も元気です。 集英社「いきなり文庫」シリーズ。元はWEB連載だったらしい。前回は、キチンと...続きを読む描かれることがなかった太宰府が舞台と新鮮だった。今回はあまり目新しさがなかった。前回は、お世話係に抜擢された保積という小役人の目を通した道真だった。今回は、太宰小弐の小野葛根の目を通した道真だ。面倒を起こさぬよう、叔父の太宰大弐小野葛絃(くずお)に迷惑がかからぬようのみ気を配る管理職役人の目を通して描かれる。道真も「吼えた」のは最初だけで、推理も前回ほどの「鋭さ」がなくて少しガッカリ。 歴史書では、あと一年と数ヶ月で道真は太宰府配流の地で失意のまま亡くなることになっている。あと2-3冊は作れそうだ。その時に向かって、どのように道真が活躍するのか、最後まで見たくなった。 今日からちょっと旅に出ます。少しの間レビューお休みします。
菅原道真のイメージが180度変わる。人間とは、本当はもっと人間臭くて渋といものなのかも知らない。 その時代の太宰府が、今日の都に真似て坊城制をとっていたこと、想像もつかないくらい国際色豊かだったこと、新しい発見だった。
昨年末に読んだ「泣くな道真」の続編。 道真が大宰府に流されてから5か月。 今回は道真よりもその行動に振り回される太宰少弐・小野葛根の右往左往を楽しむ話。いつの世でも宮仕えの身はつらいね。 その周囲で登場する生臭坊主の泰成、水城の門を護る三百樹、唐物商の善珠、相変わらず業突張りの幡多児など個性豊かな...続きを読む面々が楽しく、肩肘張った葛根が彼らと交わる中で徐々に己を顧みていくところが宜しい。 葛根が支えているつもりの伯父、太宰大弐の小野葛絃の食わせ者振りもなかなかで、恬子が出てこなかったのが寂しいが、代わって葛絃の息子・阿紀が登場。小野家は逸材の宝庫だな。
澤田瞳子さんの初読みは、8年前に『泣くな道真 大宰府の詩』からだ。それから『孤鷹の天』『関越えの夜 東海道浮世がたり』『若冲』と読み継ぎ『火定』で(医療物が苦手)終わっていた。 本作は『泣くな道真 大宰府の詩』の続編となっていて期待は裏切られなかったが、前作のような驚きは少なかった。 道真が「人は...続きを読むな、畢竟他者を救うことも助けることもできはせぬ。人を救うのは己自身。おぬしはこれまで人に助けられ守られてきたと考えているのかもしれん。されどそんな時も真実、自らを支えてきたのは実はおぬし自身だったはずだ」と若い葛根を諭しながら、左遷された道長自身にも言い聞かせているのだろう。 私もしっかり受け止めました、道真さん! 菅原道真が、大宰府に流されて五カ月。左遷に怒り泣き喚いていた道真も、身分をやつして博多津に出かけ、唐物の目利きをする愉しみを覚えた。ある日、京から唐物使の役人が来る。昨年朝廷に献上された品に不審な点があったため内偵中という。調べの間、道真は館に閉じ込めとなり……。
前作『泣くな道真』がおもしろかったので 続きを読んでみました。 博多津通いで鬱憤ばらしができて 落ち着いた生活を送るようになった道真。 ところが、帝に献上された輸入品に 不審な点があるからと 京から役人が来ることになり 屋敷から出られなくなってしまうのだが。 いやいや(笑) 大人しくしてるわけな...続きを読むいよねぇ、道真様。 太宰府役人の小野葛根がイライラするほど 余計に動き回っております。 手に負えないけど、憎めないお人ですね。
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