坂東眞砂子のレビュー一覧

  • 葛橋
    徳島県は祖谷渓にあるかずら橋を2度ほど訪れたことがあり、書店で本作を見かけたときにそれを思い出して購入。しかし本作はそんなノスタルジックな気分をかき消すような、少し陰鬱な気分になる中編三作が納められた作品。

    「一本樒」「恵比寿」は地方での安寧な暮らしぶりが、外界の異物ーー坂上と鯨の糞ーーによって歪...続きを読む
  • 道祖土家の猿嫁
    高知の一村に漂う伝奇的な空気と近代日本史が融合した一冊。
    だけど、蕗と蔦くらいしか印象に残らなかった。
    百年の物語は軽くも重々しくもない文章で書かれ、テンポよく読めた。
  • 死国
    板東眞砂子のミステリー小説であるが、四国の霊場をベースに死者が蘇る物語。日本ならでは不気味さがあり、面白い。後から映画も見たが、なかなかよくできた映画であった。 板東眞砂子の独特な世界は好きである。
  • ブギウギ 敗戦後
    「愛」という名のもとに、強く逞しく信念に向かって生きるリツとオルガと、戦争に翻弄される法城と。
    ミステリー要素も良く、早く先を読みたくなると引き込まれたが、とにかく三様の生き方に、いろいろ考えさせられる。ヘラヘラしつつもどこか憎めないリツがいい。
  • 死国
    小さい頃、いろんな時に神頼みをした。縋る術がなかったのもあるけれど、目に見えないものは怖くて偉大だった。

    死んだものより、生きているものが強い。そう信じて読んでいたけれど、死者も強い。苦笑
    もっといろんなものを大切にしたい。
  • 蛇鏡
    期待以上に面白かった!
    大好きな奈良と神話が題材となっていて物語にのめり込めた。
    玲の気持ちの変化も、丁寧に書かれていたし。
    ラストがん?という感じも、するけど良かった
  • 蟲

    これがホラー小説大賞佳作とは思えない文章力。自分は本当に巧いと思った。
    男と女という性を強く意識させられる、繊細で丁寧にかつねっとりと描かれた心情や思考は著者独特の領域。妄想ではないかという疑いをうっすらと持たせられながらも進行していく描きっぷりは「ローズマリーの赤ちゃん」を連想した。振り返ると、大...続きを読む
  • 隠された刻―Hidden Times―
    南の島に古くから伝わる砂絵サリタを軸に、戦前、戦争末期、そして現代のストーリーが交代で進んでいく。途中からは、死んだ人間の視点も時折加わり、それぞれのストーリーがひとつにつながって、伝承の謎も解明された…と思いきや、時間が巻き戻され…。
    夢だったというよりも、もうひとつの未来だったのか。

    視点が変...続きを読む
  • 逢はなくもあやし
    ~5月3日

    旅に出たまま戻らない恋人を探すため、OL・香乃は彼の故郷である奈良・橿原を訪ねる。しかし彼の母親から彼は既に亡くなったと告げられる。「すぐ戻るから待ってろよ」と言ったのに、なぜ…。時が止まったような町で答えを探す香乃は、考古学者から亡き夫の復活を待ち続けた女帝・持統天皇の逸話を聞かされ...続きを読む
  • 死国
    四国と死国の意味。古事記をモチーフに、四国が死国であるがため、代々様々な役割をこなす人々。役割に着く前に早世した少女の復活。死者の復活のより、忘れていた過去の過ちにさいなまれる老女。
  • 逢はなくもあやし
    鸕野讚良の最後の解釈が、なるほどね。と思った。
    そうかもしれない。
    「朱鳥の陵」を読んだばかりだったので、なおさら

    篤史の母と鸕野讚良が重なる。 
    香乃は額田と重ねているのか

    私は待たない。過去ではなく今を、これからを生きる。
    2011の東日本大震災の後に書かれたこの話は、そう宣言しているよう...続きを読む
  • 傀儡
    小さい妖精みたいなものが現れるっていうのは、本当に良い芸を実際によく観ているからこその表現だと思う。まあその点も含めラストに関してももっと巧く描いてくれないと、良い芸に妖精が現れるというエピソードが陳腐になってしまうことが個人的には残念。全体に流れる雰囲気は基本的に好きだし4.5の高評価にしたい。
  • 傀儡
    北条氏の専制体制を確立した宝治の乱を起点に、平安時代中期以降に流行した今様、傀儡、鎌倉時代に始まった踊念仏などを取り入れ、タクマラカン砂漠に故郷がある宋の禅僧の目で当時の日本の状況を描いた物語

    鎌倉中期の武士による政治に代わろうとしている状況を背景に
    信仰に生きる人と市井に生きる人々、信仰の本質を...続きを読む
  • 狗神
    横溝作品のどろっとした部分を抜き出してモチーフにしたような作品。
    憑き物筋という家系に一生を翻弄される女性の諦観や情念がわかりやすく・でも情感たっぷりに描かれていて面白かった。
    最後まで血筋に振り回され、ついに幸せを手にすることができなかった主人公・美希の無念さに涙。

    「死国」に比べると大風呂敷を...続きを読む
  • 死国
    展開が早く文章も上手なんでさくさく読めました。

    生者と死者の対比が小野不由美の「屍鬼」を連想させる。
    少女の粘りつくような執念が恐ろしかった。

    怪奇現象に散々悩まされてるわりに主人公の比奈子と文也の行動が能天気すぎる気がした。
    読んでる自分ですらぞっとしたんだから、登場人物二人もあんな目に遭った...続きを読む
  • 死国
    板東眞砂子。好んで読んでいた作家の一人。生と死、それに纏うような男と女の愛憎。古来伝承を交えながら話が展開していき、どっぷりとその世界に引きずり込まれる。いつもながら、凄い。

    「生きていくとは、こういうことだ。山積する問題を背負いこんで歩く。それが亀の甲羅。」だけど「甲羅を抱えこむこと自体、生きて...続きを読む
  • 曼荼羅道
    曼荼羅道を探しに行くといって出て行ったまま行方不明になった麻史と静佳。
    戦局が厳しくなりまた戻るといったまま日本に帰国した蓮太郎とサヤ。
    歴史を超えたストーリーに、楽しく読めた。

    12/03/22-35
  • 蛇鏡
    今年初めての一冊は、日本人でよかった~!と思える伝奇小説。坂東さんの狗神に衝撃を受けて、虜になってしまった。これも、日本的な湿った怪奇小説で、舞台が奈良の土着的なお話。とにかく世界観がドハマリなんです。好き嫌いあると思うけど、日本人でヨカッタ!
  • 逢はなくもあやし
    久しぶりの坂東さんを読む。

    今度はどんなドロドロした怖さが出てくるのかと、怖いものみたさで読み終えたけど、意外とアッサリ系だった。

    ただ、この本の「待つ」というテーマは、しっとりとワタシの心にしみ込んだ。
    ワタシも、密かに待ち続けてるのかもしれない人がいるから。

    ・・・この世のヒトだけどね...続きを読む
  • 道祖土家の猿嫁
     最初、道祖だの猿嫁だのという単語があったので、民俗学を取り入れたホラーなのかと思いましたが、全然違って、蕗という一女性の一代記でした。
     蕗は猿みたいない顔なので、嫁入りしたときに「猿嫁」と軽蔑されます。しかし懸命に、地道に日々励むなかで、次第に閉鎖的な村社会にも受け入れられていき、かけがいのない...続きを読む