幸田文のレビュー一覧

  • 木(新潮文庫)
    いやこの表紙じゃないんだけどね、わたしの持ってるのは。。
    『PERFECT DAYS』で平山さんが求めてたのと同じやつ(わたしも彼と同じく古本屋で100円で購入)。その表紙のほうが全然かっこいい。

    その昔、幸田文を見つけては買っていた時期があり、買ったものの読んでいなかった作品。上記映画に出てきて...続きを読む
  • 木(新潮文庫)
    人生を共にしたい本
    木の話なんだけど、確実に人間が生きる上で大切なことが書いてある
    「人にも木のように年輪があって…」とかどっかで聞いたような生半可な教えではなかった。若いわたしにはまだまだ分からないような核心があった。時が経ったら読み返して、どんな気持ちになるのか知りたい。

    文字量は多くないが、...続きを読む
  • 流れる(新潮文庫)
    ミーハー極まり無いけど『PERFECT DAYS』で作家に興味がわいて。

    登場人物たちの日常の、流れるように移ろい行く様を利発な女中の主人公の視点で柔らかく描く。
    舞台となる芸者置屋のちょうど転換期を描いてはいるけど、派手な事件が起きるでも無く、淡々と日常が過ぎていく。

    芸妓の着物や持ち物や化粧...続きを読む
  • 台所のおと 新装版
    短いストーリーの中に、人生の機微や細やかな感情の動き、五感を研ぎ澄ませなくては味わえないような描写がたっぷりと詰っていて、読み終わるたびに余韻が残ります。しゃきっと背筋がのびるような文体も美しい。20代の頃に読みかけたままおいてあったのですが、40代の半ばになって改めて読むことができてよかったです。...続きを読む
  • 流れる(新潮文庫)
    芸者置屋で働くことになった梨花という女性のお話です。華々しい世界の裏側の描写も面白かったし、梨花の心理描写も小気味良いテンポで描かれていて、読んでいて飽きなかったです。筆者の流れるような美しい文章に圧倒されました。とにかく物語の世界に没入できましたし、読んだあとの余韻が凄くて中々現実世界に帰って来れ...続きを読む
  • 台所のおと 新装版
    1960年代に発表された10作品を収録した短編集。
    「台所のおと」「濃紺」「祝辞」「おきみやげ」という4作品が、特に良かった。
    「草履」は、幸田文の作品には珍しく、ですます調で語られる一人称小説。物語の展開も探偵小説っぽく感じた。
    〈食べ物〉と〈病〉に関する物語が多かった。


    幸田文の短編を読むと...続きを読む
  • 木(新潮文庫)
    「幸田文 木」この字面だけでもう、手に取らずにはいられませんでした。

    幸田文さんの名前は知っていても、著書を読んだことはありませんでした。ある時ふとこの本を見かけ、この潔いタイトルだけで引き込まれてしまったのです。
    「幸田文 木」。なんとも気持ちがいいこの字面。シンプルで強くはあるけれど、どこかあ...続きを読む
  • 男

     北の国はあらゆることに強さを要求している。覚悟のないものには辛い土地。知床半島、羅臼町。胸もズボンもずぶ濡れ、海の男。すなどりびと。獲る業は荒くとも獲る心は優しい。鮭は4年で産卵に戻る。遡上する鮭の夫妻。その努力と産卵後の結末があまりにいじらしくて正視できないほど。すっかりみじめになり、最後の努力...続きを読む
  • 台所のおと 新装版
    幸田文さんの本を読むと、小説家ってすごいんだなと心から思わされる。全話良くて、特に『台所のおと』は自分が間近で夫婦のやり取りを見ているかのようだった。文章としては『食欲』のこの部分が刺さった。

    ネタバレ



    ・光るなんてことは自分一人が光っても、肝腎の自分には明るさを見て楽しむこともできはしない...続きを読む
  • きもの(新潮文庫)
    感傷的なところが全くなく、現実的な考えで成長していく主人公の感度の高さが勉強になる。

    きものは日本人に取ってただの服とは違うんだな、と思う。
  • 木(新潮文庫)
    もっとも好きな本の一つ。木の命が、存在が、迫ってくる。これほどつぶさに描ける感受性、表現力、追い求めて全国へ木を見に行く情熱。何年かけても表現する胆力。心から尊敬しあこがれる。
  • 幸田文 老いの身じたく
    幸田文...明治生まれの随筆家
    その孫が編纂している...本書

    『しつけ帖』でその文体に惹かれてまた手に取る。

    いい文体です。そしてやっぱり心のひだに入り込み琴線に触れます。
    書かれた当時は現代と違い「老い」を意識する年齢が今よりずっと早い(若い)のもそれぞれのエッセイ一編の最後に書かれた時の年...続きを読む
  • おとうと(新潮文庫)
    読みおえたばかりで、もう悲しさにじわじわと打ちのめされてます。人は皆いつか死ぬもので、家族とも永遠に別れる日が来るなんてことは、頭では納得していても、実際に迎えるそれは果てしなくしんどいものだというのを強制擬似体験させられてしまったような気分です。文章の密度が尋常じゃないレベルです。幸田文おそるべし...続きを読む
  • 台所のおと 新装版
    日本での婦人参政権が得られたのは戦後の1945年、GHQの指示のもとに叶えられた。
    戦後、夫人にも参政権が与えられたからといって、ガラリと社会状況が変わるでもなく、多くの女性は家庭内にとどまるのが常だった。
    今の時代、女性の社会進出は目覚ましいものがあるのだが、果たして女性の役割分担は昔に比して軽減...続きを読む
  • 流れる(新潮文庫)
    めっちゃ面白い。
    それからすごく不思議。
    1955年に書かれた小説なのに、すごく今風っていうか、
    なんかね、すんごい面白いお姉さんのツイッター見てる感じ。
    何十年も昔の小説だなんて思えない。

    ……って考えてたら、高橋義孝先生の巻末の解説でちゃんとした文章で説明されてた笑
    「文字によって構成される文...続きを読む
  • きもの(新潮文庫)
    ルツ子の気の強さや負けん気な子ども時代から姉の行動をみて繊細な心も持ち合わせている。
    近所の人からは不幸な子と思われていたみたいだが本人はそうとらえてはいないところからも負けん気があふれている。それを祖母はルツ子の性格から先回りして助言、手助けしてたしなみを教えていた。祖母の言葉は今の自分にも当ては...続きを読む
  • 台所のおと 新装版
    21.09.16~09.27
    やっぱり、日本語の使い方が美しい。
    こんなに素敵に日本語を使えたら、世界が変わるだろうな。

    心がすっとして、すがすがしくなる。しばらくの間は、きれいに言葉を使おうと思う。

    すぐに雑な表現になってしまうけど。
  • 月の塵

    想いは月にまで

    筆者の小説・エッセイでは、身近でありふれた題材を繊細で新鮮な視点で垣間見ることができるので楽しい。遠い宇宙空間でさえも筆者の世界に取り込まれてしまうのが、筆力のなせる技なのだと思う。
  • 父・こんなこと(新潮文庫)
     幸田文さんの父、幸田露伴氏は戦中の大空襲以来、寝たきりになってしまわれた。寝たきりでもそれ以前の規則正しい生活は変わらず、毎朝同じ時間に目覚められて、すぐに文さんと娘の玉子さんが、洗面の用意をし、煙草、ほうじ茶、朝食、搾りたての牛乳、新聞を決まった順番に用意するなど、厳しいお父上の看護はなかなか大...続きを読む
  • 流れる(新潮文庫)
    凋落していく置屋で、くろうとを眺めるしろうと主人公の視点が巧み。芸妓たちの時に激する直接的な台詞よりも、交わされる無言の視線が彼女たちの関係性、そして内面感情をはっきりと指し示している。間と目線を行間にありありと浮かび上がらせる幸田文の表現に敬服。