幸田文のレビュー一覧

  • 季節のかたみ
    暮らしの手帳的、というか非常に生活という地面にしっかりと足をおろした「哲学」を感じさせる文章だな、と思う。そのあたりは親子の血は争えない。何気ないことを書いていながらはっとさせられるのは、こうした随筆の書き手として最高の手腕ではないか。男性にもおすすめ。
  • 父・こんなこと(新潮文庫)
    「父」
     「じゃ、おれはもう死んじゃうよ」、死を身近に感ずる年齢の自分もこういう風に行けたらよい。文さんの、時にはユーモアすら感ずる看病の七転八倒が如何にもであり、こういう人が傍に居た父親露伴は幸せ者かも知れない
    「こんなこと」
    「おまえが馬鹿なのはものをよまないからだ」幸田親子の戦いの模様が誠実に...続きを読む
  • きもの(新潮文庫)
    もう女性のバイブルという言葉は
    会わないだろうが、
    随所に学べる箇所がある。
    こういう時は、こう考えろ。
    こうなったら、こうしろ。
    と粋でかっこいいおばあさまが
    教えてくれる。

    着物もたくさん出て来て、
    詳しくないながらも、
    興味深い。

    るつ子に共感しすぎてしまって、
    上の姉が疎ましくてならない...続きを読む
  • 台所のおと みそっかす
    大好きな幸田文さんの本を岩波少年文庫で見つけた。
    読んだことのあるものとないものが入り混じっていたが、表題の「台所のおと」
    は初めて読んだ。(「みそっかす」は読んだことあり)

    著者得意の人情の機微が台所仕事で生まれる「おと」に込められており、心に沁みたり、ホロリとさせたりする。
    料理人のとても繊細...続きを読む
  • 崩れ
    エッセイでも体験記でもなく見てある記。読んでいると本当のことだか本当のことでないんだかわからなくなってくる。ただ事実が人の見たままに書かれていると言うだけでこんなにドラマになるのかというのに驚くし、それだけのドラマをはらんでいる自然をわたしもみたいなあと思う。
    あとどうでもいいことだけどこの人の乙女...続きを読む
  • 崩れ
    初めて幸田文さんの作品を読む。
    幸田さんはどちらかというと
    家庭での事を書くイメージが強かったため、
    初めて読むには違う作品を読んだ方が
    彼女の個性をつかめたかもしれない。

    しかし、齢七十を越えてこの鋭い観察眼。
    時には自分では歩けないような場所を、
    誰かにおぶってもらいながらも、
    幸田さんは、...続きを読む
  • おとうと(新潮文庫)
    主人公である「げん」と、弟の碧郎、父親、継母の、四人の家族の物語だが、それよりも「げん」の姉としてもあり方、母の代理としての在り方、若い娘としての在り方など、とかく「女」を感じさせる作品だった。
    だからか、どんどん「げん」に感情移入していった。感情的になっているかと思えば、ふと冷静になる「げん」の思...続きを読む
  • 番茶菓子 現代日本のエッセイ
    戦前、戦後あたりの日常のエッセイ。
    上品で綺麗な日本語。
    きものについてが特に良い。
    ただの衣服を越えたもの。

    おしゃれの考察は深い。
    ただ小奇麗にセンス良く装うだけでない。
    その人に似合わしい装い方、振る舞い、気遣いすべてが
    合わさって印象に残る「おしゃれな人」と呼ばれる。
    現在、文さんのいうよ...続きを読む
  • おとうと(新潮文庫)
    弟に世話を焼く姉がいじらしかった。弟がグレてしまう理由が書かれていたが、大抵の不良はこういう理由でグレてるのではないかと感じた。(勝手な思い込み)
    泣けると聞いていたが、じんわり程度であった。
    評判通り、文章はとても綺麗だった。
  • きもの(新潮文庫)
    見せ場や晴れの場ではなく、きものが生活に密着した体の一部だった時代に触れる事ができました。裏読みすると家族への複雑な心境と疎外感、兄がいかにも想像の産物で浮いた存在に見えてしまう点に、他の小説作品にも増して著者自身の経験と願望が大きく反映されているように思えます。るつ子とおばあさんは幸田文本人という...続きを読む
  • きもの(新潮文庫)
    おなじ表現がでてこない。
    そのことに感嘆。

    物語としては完結?と首捻りしてしまったが、
    とちゅうとちゅうの時代に沿ったできごとや、
    家族の変遷、それぞれの登場人物の個性、綿密でとても真実味深く、ときに苛立ち、共感し、立腹し、はらはらした。

    つまるところ、きもの、を通して、「まっとうな常識」を着る...続きを読む
  • 雀の手帖(新潮文庫)
    古き良き日本の習わしや言葉が散りばめられてとても素敵だし、幸田さん独特の言葉遣いも魅力があって面白い。
    短編集なので読みやすいけど、少しずつ味わいながら読み進めていきたい本。できれば100日とは言わず、365日それぞれの季節感全てを幸田さんの言葉で読んでみたかった。
  • 父・こんなこと(新潮文庫)
    父を題材にした2編。再読です。最初に出会ったのは中学生の時、国語の先生に薦められて。名文というものは、こういうものですよ。と言われるまま手に取り、当時はさほど内容には興味を持てず、ああ、文章ってこういうものなのね。と、半ば作業的に読んだものでした。そしてそれからだいぶ年月を経た今回。身近な人の死に幾...続きを読む
  • きもの(新潮文庫)
    着物に造詣の深いことで知られる、幸田文さんの自伝的小説。
    小説を楽しむためには、和服の知識(生地、柄、各部分の名称など)が多少問われるが、いつの時代も女というものは衣服にかけるこだわり、執着、執念が強いということは、伝わってきます。TPO、見栄え、着心地、それら全ての要素が納得のいく衣服に出会うとい...続きを読む
  • きもの(新潮文庫)
    るつ子の人生ときもののお話。
    おばあちゃんがイキすぎて素敵。
    イキと野暮ってこういうこと。
    書いている時に幸田文は亡くなったので、若干続きは気になる遺作。
  • 番茶菓子 現代日本のエッセイ
    「番茶菓子」は、○○の小品という章立てに分かれて、短いエッセイがつまっています。花、夏、きもの、・・・など。
    この中で、強烈に記憶に残ったのが梅のエッセイ。
    その決め台詞は、「奥さん。どこへ逃げたって、あなたのからだからは梅の花の匂いがするんですよ」ちょっとどきっとしますね。
  • きもの(新潮文庫)
    淡々と綴られる情景と、感情。
    当時のきものそのものや作法を殆ど知らずに読んだので、るつ子と共におばあさんに躾られているような心持だった。
    細やかな心配り、真心が伴ってこそ、装いや振舞いは美しくなるのだろう。
  • 父・こんなこと(新潮文庫)
    幸田露伴の実生活に基づく像が見えてきて、興味深かった。
    幸田文さんの悪戦苦闘の日々を通して、昔の父親は絶対と考えられていたころの時代の空気を感じることが出来た。
    現在のわれわれの世代ではあまり父親の威厳というものは強く感じる機会はないが、この作品を読んで、古き良き日本を感じることが出来た。
  • 猿のこしかけ
    読んでいて、心地よくて仕方ない。使われることば、文の調子。。。「はなし」の文というか、話芸を感じさせる、声に出して読みたい気持ちの良さがある。
    対象との距離が「冷たい」というほどあるでなしに、しかし程よい突き放し感を覚える。自分自身さえも軽く突き放してみせる。その観察眼からの描写がたまらず、知らぬは...続きを読む
  • 崩れ
    日本は地震の多い国であると同時に火山国でもあるんだよね。
    日本人は自然災害を受け入れながらしなやかに生きている国民なんです。3.11の自然災害も原発事故も乗り越えられる、そう強く思いました。