幸田文のレビュー一覧

  • おとうと(新潮文庫)
    美しい日本語の中に、力強さがある。

    どんな不良になっても、弟はやはり弟である。

    おとうとを愛するが故にとってしまう行動、そして生まれる哀しみを身にしみて感じた。

    ひとはあたたかい。
  • 黒い裾
    美しい日本語が読みたくて買いました。
    幸田文のことは「露伴の娘」で「随筆家」「着物の人」
    くらいのイメージしかなくて・・・
    でも、この本読んでひっくり返った!

    なんて雄々しい小説を書く人だろう。
    その雄々しさは明治女の雄々しさです。
    キリキリと働く。いちぶの隙もないくらい完璧を目指す。
    最高の仕事...続きを読む
  • 月の塵
    とても丁寧な文章で書かれた随筆です。

    幼いときからせまく細く生きてきた、だなんて謙遜だと思った。
    四季の移り変わりや、生活のほんの身近なことに目を向けていることのほうが、むしろ視野が広く、おおらかなことではないかと思う。
    だから、この文章を読んでいると、心穏やかな、落ち着いた気持ちになれました。
  • おとうと(新潮文庫)
    私にとって初めての幸田文本。情景が浮かぶような美しい文章。とても女性らしい細やかな描写。文章そのものがキラキラ輝いている印象。自分と弟に重ね合わせ、胸が詰まった。古い映画も素敵。
  • きもの(新潮文庫)
    日常生活からこんなにも多くのことが学べるのかと驚嘆した。大正時代の話で、人間の品位みたいなものを感じ取っていく主人公が素敵。好きなものは好き、嫌いなものは嫌いという態度も好き。おばあさんが主人公に対して、日常での出来事が意味するもの、各種ハレの舞台での振舞い方、人との接し方等を教えていく。それは主人...続きを読む
  • 草の花 現代日本のエッセイ
    幸田文の文章にはほんとうに何度も頷かされるが、今回は特に「夜長ばなし」になるほどなあと思わされた。

    ・「(映画と違い)物語は耳からはいって眼の底で立体化され、立体化された人物たちはまことに静かにじわっと心の奥へにじみこんでくるのです。話にはスローテムポの浸みこみかたがあっておもしろいものです。」
    ...続きを読む
  • 崩れ
    72歳、52キロの著者が、日本中の「崩れ」を見に行く。建設省富士砂防工事事務所の所長に「崩れるとか崩壊とかいうのは、どういうことなんですか」と聞くと、地質的に弱いところという答えがかえってきた。それを聞いた幸田さんは、弱い、という一語がはっとするほど響いてきたという。
    「読んだのではただ通り過ぎた ...続きを読む
  • 雀の手帖(新潮文庫)
    幸田文による〈ちゅんちゅん、ぺちゃくちゃと自分勝手なおしゃべり〉百日の手帖、西日本新聞連載(昭和34年)連日連載百回分。改めて…いやはやお見事!日に一編これほどのものが書けるんだ、でもそれは雀のおしゃべりなんだ……。ほんとうに、今あらためて、つくづく読み返したい。雀つながりで、タイトルからして「動物...続きを読む
  • 台所のおと みそっかす
    幸田文さんと言えば、幸田露伴のお嬢さん。  ず~っと昔、幸田露伴の「五重塔」を読んだ直後に、そのお嬢さんである幸田文さんの「父・こんなこと」を読んでみようとしたことがあるのですが、当時の KiKi にはどことなく古臭く感じられる一切合財(特に露伴さんのあれこれ)が何となくうざったくて、なかなか前へと...続きを読む
  • 流れる(新潮文庫)
    初めて読んだのは中学の時です。難しい話ではないけれど、古い言い回しや物の名前等、分からない部分も結構ありました。
    でも時にたゆたい、時に蕩々と流れる文章のリズムが心地よくて。
    何度も読み返し、少しずつ腑に落ちて、そのたび味わいが増すように思います。
  • 雀の手帖(新潮文庫)
    ときどき荒っぽい言葉が出てくるなと思うと方言なのか。
    妙に文章に馴染んでるのは幸田文さんにとって使い慣れた言葉だからなのか。

    実直な文章で好き。
  • 台所のおと みそっかす
    淡々としているのにあまりに美しく力強く迫ってくる文章に心がふるえます
    読み始めてからずっと感動しっぱなしでした
    これが100年前の人の文章なのか あまりの新鮮さに戸惑います
  • 父・こんなこと(新潮文庫)
    この本は幸田文の父、幸田露伴の最期を刻々とつづった作品です。露伴がだんだんと老い衰え病みそして帰らぬ人となるさまを文の書く文章を通して感ずるとき、私は同時に露伴ではなく、私の父との別れを思いました。いずれもう二度と会えなくなるときがくるのだと幹事、切なく胸が苦しくなりました。全くの他人の話なのに不思...続きを読む
  • 父・こんなこと(新潮文庫)
    父のことはよく知らないままに亡くなってしまった。
    時が経って、自分の中に父が居る、父の血を感じるのです。
  • 台所のおと みそっかす
    エッセイ・随筆を読むと、幸田文サンがとてもキチンとした、丁寧な女性だというのが伝わってきました。そして小説を読むと、幸田文サンをとても好きになりました。小説に出てくる人物の丁寧さ、素直さ、暖かさ、姿勢にはハッとなります。
  • きもの(新潮文庫)
    できれば続きを読みたかったです。ここに登場するおばあさんの「かわいい腰紐をつかってほしい。」という言葉がなんだか印象的で私もそうありたいと思いました。着物話にとどまらず、ここにでてくるお婆さんは素晴らしい事を伝えてくれます。。
    人に物を送るとき不用品を送っていながら、親切した気でいる事をとがめるシー...続きを読む
  • 父・こんなこと(新潮文庫)
    幸田文の文体が好きです。
    新鮮な形容のしかたをします。
    感性の独自で繊細なところや、それに対して使う言葉が読むたびに心地よいのです。
  • 雀の手帖(新潮文庫)
    見開き1ページのエッセイ。
    他愛のないことをどうしてこの人はこういう風に表現できるんだろう。
    何回読んでもおもしろいエッセイはそんなにない。
    寝る前のお供としてベッドサイドに置いてます。
  • おとうと(新潮文庫)
    弟を中心として家族4人の関係を描く。家族とは良いとか悪いとかではなく、とにかくそこにいるもの

    はじめは少しくどい心理描写に退屈するかとも思ったが、文章自体の歯切れが良いのにも救われ、読むにつれ引きこまれた。ストレートで胸に迫る
  • 木(新潮文庫)
     花や滝、もっと大きな単位の自然を見に行こうと思ったことはあっても、「木」を見に行こう!と思ったことはないかもしれない。身近な存在なのに。
    この本を読むきっかけは映画ですが、読んだことで相乗効果がうまれた気がする。
    作者が「木は生き物」という思いが強いというか当たり前のことと思っている。印象的だった...続きを読む