幸田文のレビュー一覧

  • 崩れ
    読み時が来たと言おうか、読むべくして読んだ。

    幸田文さんの独特の言い回しの文章が好きで、文学作品のほとんどを読んでいるのだが未読だったので。(あとがきにもあるが「心がしかむ」「遠慮っぽく」「きたなづくり」「ひよひよと生きている」などなどの表現が好きで)

    これは「崩れ」という地球地質的現象を文学的...続きを読む
  • きもの(新潮文庫)
    着る、ということについて
    深く考えさせられた。

    おばあさんが、るつ子に教えること、
    戒めることは、
    女性が美しく生きるために大切なこと。
    着ることも、疎かにせず、
    きちんと考えて向き合うことが
    生き方に、すっと一本筋が通る気がする。


    気になる部分(それはたくさん)を
    折り、何度も読み返したくな...続きを読む
  • 崩れ
    著名な作家さん。70を過ぎて崩壊地形に関心を持ち全国を探索する。名文で淡々と語る自然災害の脅威。

    何とも不思議な作品の感。
    名文家で知られる幸田文が、全国の崩壊地形を旅する紀行。

    写真も地図もなく、淡々と語るところが筆者でなければ成し遂げられなかっだろう。
    大自然の力の前に立ち尽くす大作家の姿が...続きを読む
  • 流れる(新潮文庫)
    本当は「木」の前に読んだ本。
    この「流れる」を読んで、もっと彼女の本を読んでみようと思った。

    どんな場所に身を置いても、彼女の描く人間の様子、とりわけ女の描写に、背筋を伸ばさずにはいられなくなる。


    こんな人が周りにいたら、わたしは何を学ぶことができただろうか、わたしは、何を学ばずに今まで生きて...続きを読む
  • 父・こんなこと(新潮文庫)
    父:恥ずかしさから父親と向き合って生きていくことをあまりしてこなかったが、これを読んでそれを少ししなければいけないと感じた。
    また、作者の表現に植物が多く用いられるところは作者らしくてとても好き。
  • 流れる(新潮文庫)
    女の話。
    女が女を見る目は鋭い。見逃さない。

    夫を亡くして自分の食い扶持を自分で稼がなければならなくなった時、今までの生活とは全く重ならない芸者の置屋での女中を選ぶとは、それまでの人生、いったいなにがあったのか?と気を揉ませる主人公の来し方。

    足元すくわれないよう、でも出過ぎぬよう、能ある鷹は爪...続きを読む
  • 流れる(新潮文庫)
    卒論のテーマにさせていただきました。

    「しろうと」と「くろうと」の世界の違いがはっきり現れる瞬間がいくつかあるのが印象的。
  • 流れる(新潮文庫)
    花街のあるひとつの経営の傾いたお屋敷の話。
    主人公は女中の視点から人や金が出たり入ったりする様を一番冷静に見ている。
    主人とあまりこころの通じていない場合の「小さなおうち」という感じかな。
    このくらいの年代の小説は、人の虚勢や格好のつかなさダブルスタンダードなどを詳細に書き、その上で「まあこのくらい...続きを読む
  • 包む 現代日本のエッセイ
    小津安二郎の映画みたいな昭和の生活風景が浮かんでくる、言葉遣いもゆかしいエッセイ。

    昭和29年〜30年ころの作。
  • 包む 現代日本のエッセイ
    著者のエッセイをまとめた本です。

    本書の表題になっている「包む」という文章では、かつてお菓子屋に務めていたひとが著者のもとをおとずれ、菓子折りを包装紙で包む手順などが昔のままであることを見て、包を受け取ったとたんに心のなかのわだかまりが解けていくのを感じたと語ったことが記されています。そのひとの心...続きを読む
  • 父・こんなこと(新潮文庫)
    父の病臥、逝去の前後とその後。
    娘・幸田文による幸田露伴の記録と想い出の記。
    ・父ーその死ー
        菅野の記 葬送の記  あとがき
    ・こんなこと
        あとみよそわか このよがくもん ずぼんぼ 著物
        正月記 そつ(口偏に卒)啄 おもいで二ツ  あとがき
    巻末の解説は塩谷 賛。文中に登場す...続きを読む
  • 季節のかたみ
    細やかな感受性に引っかかる生活の事柄。この人の手にかかると練り直され、新しい味付けをされ読者に提示される。ゆったりとした気分でないと自分には堪能できないことがわかった。
  • さざなみの日記
    昨夜は、『さざなみの日記』を読みながら寝落ちした。まあ「落ちる」というよりは「ふんわり着地」したかのような寝つきだったのだけれど。あれが、幸田文の文章のなせる技なのだろう。急かされることのない文章で、それはそれでありがたい。文庫本も十数冊入手済みで、死ぬまで「寝落ち本」を任せられる量だと思う。著者で...続きを読む
  • 流れる(新潮文庫)
    芸者の置屋に女中に出た人の話。
    ところどころにでてくる、女のこけかた?や起き方が男に見せる美しさっていうのが、女子会みたいですごくおもしろい。
    主人のおねえさんが姿がよくて所作もきれい、三味線も上手で一世を風靡した芸者さん。その周りにいる芸者たちもみんななんだかんだでかっこいい。花柳界はその狭さがす...続きを読む
  • おとうと(新潮文庫)
    平松洋子さんが幸田文のことを書かれていた。それで家事や着物について書かれたエッセイを手にしてみたのだが、歯が立たなかった。少し古い言葉が判らなかったのか、僕はこういう凛とした文が駄目なのか、敗北感が残った。

    立ち寄った本屋で見つけた本書。
    何事も蔑ろにしない文章。冒頭の向島の大川の土手の風景。風の...続きを読む
  • 崩れ
    幸田文と言えば、露伴とか着物とかしつけとかのイメージなんであるが、老境になってどういうわけか崩れに惹かれて訪ねて行く。
    今読むと、その格好でいいの?!というような装備で心配にもなるが、崩れの様を表現する目は真摯で細かい。あばれ川や山崩れ、地滑りが、温度のある生き物のように表現される。
    なんだか妙な魅...続きを読む
  • おとうと(新潮文庫)
    姉は弟を想い、弟は姉を想う。
    それは偏った愛情ではなく、読んでいてとても美しいと思えるものでした。
    学生時代のやんちゃな弟は、迷惑ばかりかけては姉や親を困らせているけれど、どこか憎めない青年。
    姉は家族を支える縁の下の力持ち。縁の下というより、一家が生きていくためになくてはならない存在。
    弟が結核を...続きを読む
  • きもの(新潮文庫)
    読み進みながら主人公るつ子は幸田文と重なって思えました。女学校から結婚までの子供から大人になるまで、姉の結婚、母の死、震災を経て少しずつ変わってゆく、るつ子が幸田文の文章で生き生きと描かれていました。
    るつ子は、新しい木綿をきりりと着た。無骨な木綿が身を包むと、それでやっと、いくぶん誇りと自身がもて...続きを読む
  • おとうと(新潮文庫)
    私自身弟を思うとその身勝手さに苛立ちを覚え、同時に切なさと愛くるしさとがない交ぜになって泣く一歩手前のような気持ちになる。
    兄には抱かない特別な感情。
    ここまで的確に表現されている作品に初めて出会った。
  • 崩れ
    崩れを大地の暴力のように感じていた筆者が、「崩れとは地質的に弱いことだ」と言われて衝撃を受ける場面は印象的だった。日本は古来、災害を克服しようとし、災害と共に生きてきた国なのだと実感。
    崩れの痕跡を求めて日本各地をゆくエッセイだと思っていたけど、痕跡ではなくいまなお崩れが続いており、しかもそんな崩れ...続きを読む