幸田文のレビュー一覧

  • 崩れ
    崩れを大地の暴力のように感じていた筆者が、「崩れとは地質的に弱いことだ」と言われて衝撃を受ける場面は印象的だった。日本は古来、災害を克服しようとし、災害と共に生きてきた国なのだと実感。
    崩れの痕跡を求めて日本各地をゆくエッセイだと思っていたけど、痕跡ではなくいまなお崩れが続いており、しかもそんな崩れ...続きを読む
  • おとうと(新潮文庫)
    姉と名のつくものは共感して止まない話ではないだろうか。しかも、ちょっと生きるのが下手な弟を持つ身には特に。冒頭の、雨の中傘をささずにぐんぐん歩いて行ってしまう弟の描写からもう引き込まれていった。
    ゲンが碧郎を思うときの、可哀想と可愛いが絡み合って、胸がぐっとつまる感じ。いたたまれない。
    可哀想に思っ...続きを読む
  • きもの(新潮文庫)
    最後がなんだか急いだ感じだったけど…
    着物欲がふつふつと。でも洋服も着物も元をたどれば同じだなあと。
  • おとうと(新潮文庫)
    文さんの文筆デビューは43歳と比較的遅い。
    おそらく当時の読者は文さんに、父・露伴を描いた作品を過度に期待したはず。彼女も当初は随筆で、亡父の面影を公けにしていたが、この小説で“満を持して”自分の家族について世に出した観がある。しかし、世間の期待をわざと少しはぐらかすかのように、主人公は父ではなく、...続きを読む
  • きもの(新潮文庫)
    2015.11.9
    昔の女の人の物語が読みたかった。
    着物に関する用語がわからないから、調べながら読んだ。その当時は誰でも知ってるような当たり前のことが、わからない。当たり前は移り変わっていく。その当時の生活のこまごまに対する考え方や心遣い、今より丁寧な印象を受けた。丁寧だけど、ちょっと面倒くさいか...続きを読む
  • おとうと(新潮文庫)
    「洗いざらい云いつくさせてあげて、そのかたからいやなことばを抜いて、お見送りするんです」姉さんへ語る看護婦の言葉。心しておきます。「持っているだけの悪たいをつかしておあげするのがこの職業」とも。心にささります。脳梗塞で倒れ入院しました。自暴自棄で家族に辛く当たったことがあります。心で詫びながら口から...続きを読む
  • きもの(新潮文庫)
    るつ子、みつ子、朝霞ゆう子など、名前がかわいいというか、名前からキャラクターがにじみ出てる。例えば和子とゆう子の名前がもし逆だったなら、なんだか違和感。べつに和子をバカにしてるわけではない、たぶん。

    あとお気に入りの古風な?表現
    ・ふっくら人間が炊き上がる
    ・ねっちりと腹を立てる
    ・大福はわずかに...続きを読む
  • 父・こんなこと(新潮文庫)
    NHK番組「グレーテルのかまど」で紹介されていた幸田露伴と幸田文の関係を見て興味を持ち読みました。

    露伴が亡くなった時の話から始まり、思い出を回想する形式なので、本全体を通してお父様を懐かしむような寂しさと愛おしさが感じられました。丁度自分の父親の病気が発覚したタイミングで読み進めたため、より一層...続きを読む
  • 雀の手帖(新潮文庫)
    最後でようやくタイトルに合点がいった。
    が、あとがきにもあるように、ピーチクパーチクおしゃべりに見えて、学ぶ所は非常に多かったように感じる。
    日常のように、取り留めもないこと、と油断していると、大事なことを見落としそうだ。
  • 包む 現代日本のエッセイ
    いただいたお寿司(それもおそらく巻物)を全部食べられなくて勿体ないからと食べてくれる人を探して右往左往する幸田文さんがこの時代の一般の人の姿だったのか、当時としても珍しいくらいの凛とした方だったのか?凛とした人であることは異論はなくとも、おそらく前者だったのではあろうなぁ。
    昭和すら遠くなりにけった...続きを読む
  • きもの(新潮文庫)
    この作品を読んで、幸田文さんが好きになりました。
    だいぶ前に読んだ本なので内容はうろ覚えですが、雰囲気はとても良く覚えています。

    いつか読み返そうっと。
  • 流れる(新潮文庫)
    なんだか現代にも通ずるものがあって良かった。
    ただ、この作品の深いところまでは分からなかった気がする。

    いつかもう1度読みたい
  • 流れる(新潮文庫)
    芸者置屋で働く女中の話。
    白粉とアンモニアの匂いが同時に香ってきそうな女の意地と見栄だらけの世界と、
    主人公・梨花の凛とした佇まいの対比が印象的だった。

    面倒事にはあくまでしろうと女中として一線を引き、
    情を動かされた事には素直に感動する。
    舞台も時代も違うが、梨花の姿勢はそのまま現代の
    働く女性...続きを読む
  • 父・こんなこと(新潮文庫)
    【本の内容】
    幸田露伴の死の模様を描いた「父」。

    父と娘の日常を生き生きと伝える「こんなこと」。

    偉大な父を偲ぶ著者の思いが伝わる記録文学。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    家事全般に人づきあい、果ては男女のことまでも、あらゆる作法を父・幸田露伴から習ったという著者。

    「こんなこと」に書...続きを読む
  • きもの(新潮文庫)
    一度目は高校2年の時。その時はただ読んだだけに終わり、内容もそんなに残らずに終わった。

    二度目は23の歳。全く違った。全て自分にはない体験ではあるのだけれど、だけれど何と言うのだろう、書かれている内容が全部染み込んでいった感じ。共感?すごく、「よくわかる」のような気分で読んでいた気がする。恐らくる...続きを読む
  • 流れる(新潮文庫)
    初めての幸田文、先ず言葉の瑞々しさにドキリとした。打ちたての蕎麦のようなしゃきっとした潔さとともに、主人公の立ち働く様子がテンポよいリズム感で流れている。
    そして冷静な人間観察の中にも、人情の機微がチラチラと見え隠れして温かい。
    主人公の梨花に共感できたのも、芸者置屋という異世界の景色を僅かながら思...続きを読む
  • 流れる(新潮文庫)
    ”女中が見た芸妓の艶。”
    様々な経験をして、自分らしくもフラットな目線で人を見ることができるようになりたい。
  • きもの(新潮文庫)
    現代人、いや私には理解できない着物の肌感覚。今の洋服にそこまでの感覚を持って洋服をきていないなぁと感じる。色、柄、触感。どれも大切なことなのに、おろそかにしている自分を感じた。
    着物を通じて、主人公は成長をしていく。いや、成長を通して着物について深く考えていく主人公。それは女子なら通る道ではあるだけ...続きを読む
  • きもの(新潮文庫)
    名作なんだろうが、小公女とか灰かぶり姫とか、文学少女が好きな童謡を下敷きにされているのではと思うほど、主人公が辛らつな目に遭っていく。

    幼い頃は着物に対する美意識がとにかく高くきかん気で、高いものねだりをするヒロイン。末っ子の我がままかと思うが、長ずるにしたがい、気位の高い長女、金に賢しい次女に、...続きを読む
  • 北愁
    潔くってそれでいて懐深い。
    日々のこと、まわりのこと、そして思うことをただ書き連ねる。ドラマチックでもなんでもないけど、文才あってできることだ。
    強さは、ただ強いってだけではないんだよ。