【感想】
・カッコイイ気分になれる小説。さてたばこでも一服しようかって感じ。
・マーロウ、テリー、アイリーン、ウェイドの造形が際立っている。
・細かでストーリーに関係ない余計な部分がおもろい。
・はるか昔『長いお別れ』で読んでるけどすっかり忘れてるので再読。
【一行目】
テリー・レノックスとの最
...続きを読む初の出会いは、〈ダンサーズ〉のテラスの外だった。
【内容】
・酔いつぶれているテリーをマーロウは助け、次第に友情を感じるようになるが、彼は大金持ちの妻シルヴィアを殺害、逃亡先で自殺した。さまざまな勢力からその事件に深入りするなと脅されるがマーロウは言うことを聞かない。
・飲んだくれの作家ウェイドが行方不明なので連れ戻してくれと超絶美女の妻アイリーンに頼まれたマーロウはいやいやながらに関わっていくことになる。
・別件と思われた二つのできごとだが・・・
▼マーロウについての簡単なメモ
【アール】ガウチョ姿の若者。ブラス・ナックルをはめて殴りかかってくる。ドクター・ヴェリンジャーのところにいる。
【アイドル・ヴァレー】湖の周囲を金持ちの邸宅が取り囲んでいる地域。ただし金をもっているだけでは住めず人品賎しからずでないとアカンらしい。おそらく奥にいくほどステータスが高い。
【アイリーン・ウェイド】ロジャー・ウェイドの妻。ブロンドで、居合わせた男性たちの時間を停めてしまうほどの美女。娘時代に愛し合った男は戦争で死んだと思われるが死体は発見されていない。小説的にはだいたい生きてて登場人物の一人ってことだろう。彼のイニシャルは偶然PMのようでマーロウと同じだった。どこか歪んだところがある。登場人物の中ではテリーと並び最も印象的なので犯人(何の?)かもしれない。
【アメリカ人】マーロウ《アメリカ人はでかくて、荒っぽくて、金があって、向こう見ずな国民だし、犯罪というのは我々がその見返りとして支払わなくちゃならない代価なんだ。》p.552
【あるいは】《しかしそれはあくまで「あるいは」であり、どこまでいっても「あるいは」でしかない。》p.38。まあ、「もしも」の話はしてもしかたがないってこと。
【アルコール】《「アルコールは恋に似ている」と彼は言った。「最初のキスは魔法のようだ。二度目で心を通わせる。そして三度目は決まりごととなる。あとはただ相手の服を脱がせるだけだ」》p.39
【ヴァーリー】エイモス・ヴァーリー。ちょっと怪しい医師。大きな屋敷で診療しておりどうやら多くの自己判断が難しくなった老人を入院させており搾取しているのかもしれない。かつて麻薬関係で問題があったようだ。
【ウェイド】スペンサーが抱える流行作家。歴史ロマンスものを書くらしい。一冊読んだマーロウは「ひどい代物だ」と思った。フィッツジェラルドを好む。超絶美女、アイリーンの夫。自分の中に何かのしこりのようなものを抱えているようでおそらくそれが原因で飲んだくれている。
【ヴェリンジャー】ドクター。芸術家のコロニーのようなものをつくっていた。
【ヴュカニック】レスター・ヴュカニック。ちょっと怪しいことをやってるんじゃないかと思われる医師。マーロウの事務所があるビルよりおんぼろなビルで開業している。治療のフリをして調査に行ったマーロウは十ドルの治療費を踏み倒した。
【エイモス】リンダのとこの運転手。T・S・エリオットの詩集なら持っている。
【エディー・ダウスト】もとカーン機関の社員だが人間的だったので辞めた。
【エドワード・ローリング】→ローリング
【演技性】《張りつめた空気の中では、どんな些細なものごとも演技性を持ち、大事な意味を示す動きとなるからだ。》p.47
【エンディコット】スーウェル・エンディコット。弁護士。彼が地方検事をしていた頃にマーロウは会ったことがあるらしい。
【オールズ警部補】バーニー・オールズ。マーロウとは旧知。誠実で優秀。賭博嫌い。「おれは年をとってくたびれた、ぽんこつの警官なんだ。気持ちなんておさまるもんか」p.551
【オルブライト】市警本部長。事件に横やりを入れてきたようだがマーロウは面識もなかった。もっと偉い誰かと面識があったのだろう。
【カーン】「カーン機関」のトップ。元憲兵隊大佐。堅固な巨漢。《いけ好かない人物になるための方法は百九十ばかりあるが、カーンはその全てに精通している。》p.177。作中に登場はしない。
【カゴの鳥ファィル】カーン機関がつくっているちょっと怪しい連中のプロフィール等が記録されているファイル。わりと役に立つ。カーンはこういうものには金をかけることができるのでけっこう無能ではなさそうだ。
【彼女のため】テリー《そしてこの近辺では、欲得を抜きにして彼女のためを思う人間は僕のほかにいないんだ。しかしそのころには、僕は既にお払い箱になっているだろう》p.40
【鞄の中身】《中に何が入っていようが私の知ったことではない。》p.25
【空威張り】マーロウ《意味のない空威張りはごめんだ。本当に実力があるなら、そんなものは必要なかろう。》p.98
【ギムレット】マーロウ「ギムレットを飲むには少し早すぎるね」p.586。うーん、「ギムレットには早すぎる」の方が印象的かな?
【キャンディー】ロジャー・ウェイド家のハウスボーイ。本名「ファン・ガルシア・デ・ソト・ヨ・ソト=マヨール」でチリ出身だと言うがメキシコ人かもしれない。ナイフ使い。ウェイドに対しては忠誠心を抱いているようだ。
【凶器】グレゴリアス《毎度おなじみの真鍮の彫像でな。独創的とはいえんが、道具としては不足ない。》p.75
【グリーン部長刑事】殺人課。灰色がかった金髪で気難しそう。マーロウとはけっこう気が合うんではなかろうか?
【グレゴリアス】その年の殺人課の課長。贅肉のつきかけたマッチョでかなり暴力的。後にクビになって馬に踏まれて死んだらしいが、マーロウが「取り調べ」を受けたときにはまだ生きていた。
【グレンツ】底意地が悪そうな、検事かな? スプリンガーの部下。
【結婚】マーロウ《百人のうち二人にとっては、結婚は素晴らしいものだろう。》p.568
【原則】《しかし何はともあれテリー・レノックスは彼なりの原則を守って生きているのだ。それがどんな原則であるにせよ》p.24
【コーヒーを淹れる】《細部をおろそかにしない男、マーロウ。なにをもってしても、彼のコーヒー作りの手順を乱すことはできない。》p.47。《大量のコーヒーを。深く強く、火傷しそうなほど熱くて苦く、情けを知らず、心のねじくれたコーヒーを。それはくたびれた男の血液となる。》p.500
【今夜】女「今夜みたいに?」/男「今夜は二度と戻らない」p.570
【作家が駄目になったことがわかる基準】ウェイド《インスピレーションを求めて、過去に自分が書いたものを読み返すようになったら、もうおしまいなんだ。》p.381
【さめた目】《私はしばらくそこに座ったまま、人生をさめた目で眺めてみた。それから何かおかしなことを考えて大笑いしようと思った。しかしどちらの試みもうまく行かなかった。》p.250
【さよなら】《さよならを言うのは、少しだけ死ぬことだ。》p.571。《警官にさよならを言う方法はまだみつかっていない。》p.594
【シャンパン】女「何のためにとっておいたの?」/男「君のために」p.560。恥ずかしいほど気障で月並みな口説き文句やなあマーロウさん。
【定石】《定石どおりの行動をとるのは、好むところではない。》p.253
【ジョージ・ピーターズ】大手興信所「カーン機関」に勤めている。マーロウとは旧知の間柄らしい。全天候型。
【シルヴィア】大金持ちの女。大富豪ハーラン・ポッターの末娘。その結婚が社交界ニュースとなるレベル。男遊びが激しい。文庫カバーの内容紹介に書いてるので書くけど、殺されたと思われる。それも顔を潰されて。ミステリで顔が判別不能になるときはだいたい別人なのだが今回は? フルネームは「シルヴィア・ポッター・ウェスターハイム・ディ・ジョルジョ・レノックス」。
【新聞】ロニー《新聞社というのはね、金持ち連中によって所有され、経営されている。そして彼らはみんな、ひとつの社交クラブに所属しているようなものなんだ。》p.109
【信用】マーロウ「誰も私のことは信用しない。しかし私は君を信用しよう」p.496
【スター】ランデイ・スター。メンディーとともにテリーの友人らしい。やっぱりやくざな商売をしているようだ。どうやらヴェガスの市警本部長のやうな立場らしい。物静かな話し方をする。
【スプランクリン】地方検事局の人間らしい。《どっちにしても俺がとっちめられるんだよ。》p.94
【スペンサー】出版業者。相手から目をそらさないタイプ。すぐ隣に信じられないほどの美女がいるのに不自然。ウェイドの作品を出版している。探偵に頼むようなことではない依頼を持ちかけてくる。
【頭痛】《こういう女はいつだって都合のいいときに頭痛が起こるのだ。》p.142
【スプリンガー】地方検事。名を売りたい。
【退屈】テリー《僕は自分自身をすら退屈させている。》p.37
【チック・アゴスティーノ】メンディーの用心棒。
【デイトン】刑事。ハンサムで底意地が悪そう。遠くにいてもわざわざ近寄っていって殴り飛ばしたくなるタイプ。どうやらデイトンの方もマーロウに対して同じように感じているらしい。
【手遅れ】マーロウ《君のような人間はいつだって、手遅れになってからすまながるんだ》p.56
【テリー】酔いつぶれているところをなぜか放っておけなかったマーロウに救われたことが縁で親しくなる。大金持ちの妻シルヴィアと離婚しその後復縁。フルネームは「テレンス・ウィリアム・レノックス」。白髪で頬に傷がある(整形している)。ソルトレイク・シティの孤児院にいたらしい。文庫カバーの内容紹介に書いてるので書くけど、妻シルヴィア殺害で容疑者にされると考え逃亡、後に自殺したらしい。伝聞として劇的でない死なので、小説的には本当に死んだかどうかは怪しい。マーロウにとって《彼は長い船旅で知り合った誰かに似ている。とても親しくなるのだが、実際には相手のことを何ひとつ知らない。最後までそんな具合だった。》p.115。だが、《私の中には彼の一部が残っている。》p.115。《彼はそういう男だった。自分ではいつも正しいことをしようと思うんだが、結果的にはやらずもがなのことをやってしまう。》p.583。百ページほどで退場するけどこの作品のもう一人の主人公とも言える。
【逃避】マーロウ《誰だって何かから逃避しようとしている》p.274
【涙】《彼女は私に恋をしていたわけではないし、どちらもそのことは承知していた。私のために泣いているわけでもなかった。たまたま少しばかり涙を流すべき時期にあたっていただけだ。》p.570
【人間】マーロウ《どこにいようと人間さして変わりがあるわけじゃない》。ウェイド《しかし変わりはあるべきなんだ。そうじゃなかったら、救いがないじゃないか?》p.276。マーロウ《世間の多くの人々は、自分のエネルギーの半ば近くを、もともとありもしない威厳を護ることに費やしつつ、汲々と人生を送っているのです。》p.295
【値打ち】テリー《僕は値打ちのない男だって言ったじゃないか。》p.53。同様に思っている人は多いだろう。ぼくもそうだが。逆に自分には値打ちがあると思っている人はもっと多いだろう。で、だいたいの場合、両者の値打ちは同程度だろう。
【バーニー】→オールズ
【ハーラン・ポッター】大富豪。二メートルを越す巨漢。インタビューを受けることはほとんどない。《彼に会うのはダライ・ラマに会うのと同じくらい難しいのだ。》p.129。そういう珍獣のような人物とマーロウは合うことになる。リンダ《もし父が本心を打ち明けたなら――そんなことはこれまで一度もなかったし、これからもあり得ないでしょうが》p.260。冷酷な男、とテリーは言った。リンダは《しかしとても人間味のある人です。》と言った(p.259)。そしてテリーを好いていた、とも。マーロウは《彼はすべての物事を憎悪しているのだ。》と感じた(p.368)。
【腹が立つ】《腹が立つのはきまって些細なことなのだ。》p.116
【ハワード・スペンサー】コンマが多く混ざるしゃべり方をする男。
【ピーターセン】警察署長。馬好きのようだ。馬に乗りながら片手で煙草を巻くことができる。鷹のように細い顔立ちのハンサム。
【ビッグ・ウィリー・マグーン】風俗取締班の刑事。身長二メートル十、横幅一メートル二十はありそあうな巨漢。マッチョなチックを片手で投げ飛ばした。
【フィリップ・マーロウ】→マーロウ
【プライド】テリー《僕のプライドは、それ以外に何も持ち合わせていない人間のプライドなんだ。》p.23。プライドだけてもあるんならいい方かと。
【ヘルナンデス】警察の課長。冷静で有能で危険な男。
【法律】エンディコット《法律というものが本来目指しているのは、メカニズム以上の何ものでもないんだ。》p.90。マーロウ《法律というのは法律家の仕事をこしらえるためにあるようなものだ。》p.494
【ポール・マーストン】ロイ・アシュターフェルトがニューヨークで見かけたテリーとよく似た酔いどれの名前。イニシャルがマーロウと同じやね。
【マーロウ】主人公。小説の登場人物として最も有名な探偵の一人。クールなわりに、好みに合った相手にはお節介の世話焼きという珍しい属性。おそらくチカラを持つ相手にはとりあえず反発し、チカラのない相手には手を差し伸べるタイプかと。でも、強情で誰にも媚びず自分の意志を通す。素直に「yes」と言わないタイプ。扱いにくそうだ。他者を挑発し敵をたくさんつくりながら捜査する。《あなたの好みにあった音楽をかなでることは私にはできない。》p.262。《私は薄汚くよこしまな大都会に生きる方を選ぶ。》p.392。《私は独歩する死の時計なのだ》p.497。オールズ《君は収まりの悪いほつれなんだ。》p.508。《髪はダークブラウン、白髪が混じっている。目は茶色。身長は百八十四センチ。体重おおよそ八十五キロ。》p.85。フットボールでキックを受け鼻の中を手術したことがある。
【マイオラノス】シスコ・マイオラノス。「S」が寄越した男。おそらくメキシコ人。上品なところが鼻につく。
【間違い】《言うまでもないことだが、彼女はどこまでも正しく、私はどこまでも間違っていた。でもなぜか、自分が間違っているという気がしなかった。ただ割り切れぬ気持ちが残っただけだ。》p.27
【メイディー】クリス・メイディー。ネヴァダをほとんど取り仕切っている大立者。作中には登場しない。
【名誉】マーロウ《名誉ってのは盗人の隠れ蓑になるんだ――往々にしてね。》p.583
【メンディー・メネンデス】テリーの友人らしい。マーロウのことを「真っ赤なスクーターに乗ったターザン」と称した。褒め言葉ではなさそうだ。自称大物で金持ちで袖の下渡し。やくざのボスってとこか。悪党だがテリーに対する友誼は本物のようだ。なぜかマーロウを挑発する。マーロウいわく《タフぶっている人間というのは、だいたい話が退屈なんだ。エース札ばかりのトランプでゲームをしているみたいだ。》p.126
【ランディ・スター】→スター
【リンダ・ローリング】ヴィクターズでギムレットを飲んでいた女。シルヴィアの姉。とんでもなく鬱陶しい邸宅に住んでいる。
【ロイ・アシュターフェルト】カーン機関の社員。
【ローフォード】地方検事の代理として来た。
【ローリング】エドワード・ローリング。リンダの夫。医師。嫉妬深い。リンダ《エドワードは常にとても疲れているの》p.271。マーロウ《いつも手遅れになってからやってくる男だな》p.499
【ロジャー・ウェイド】→ウェイド
【ロニー・モーガン】「ジャーナル」紙の記者。190センチくらいの身長で針金のように細い。普段は市庁詰め。なんとなく疲れた雰囲気を醸し出している。
【ワイス】検死官の代理で来た医師。
【罠】《自分で自分に仕掛ける罠が、何よりたちの悪い罠なのだ。》p.137