題名は「移民が増えて、いいことって何だろう?」です。「良くないことって何だろう?」ではありません。昨年参議院選挙以来、移民が問題になり、排外主義が高まっています。此処には「対話と議論にむけた12の疑問」に答える形で、「いいこと」を探っていこうという本です。だったらこの本は偏っているのか?違う、と私は思います。正確に事実を確かめ、机上の論理ではなく、直に目にしたことを丁寧に展開することで、移民共生の課題を丁寧に解説した本になっていると思います。主には著者の生活圏である松本市の経験を基に書いているので、歪な都市移民論に傾かずにとても説得力ある本になったと思います。ただ、いいことってのは、最後の12章にしか書いてません。いろんな課題をクリアしないといいことは現れないんですね。
ちなみに、マナーが悪いとされる外国人旅行者と移民は違います。
12のギモンは以下の通り。
①移民が増えたら日本の治安が悪くなってしまうんじゃないかな?
②外国人には日本語を使いこなせないんじゃないの?
③日本の学校は不登校とかで大変なのに、さらに外国の子なんて入れたら混乱するんじゃないの?
④移民が増えると日本の文化が壊れちゃうんじゃないの?
⑤日本代表で活躍するのは「ガイジン選手」ばかりになるのでは?
⑥日本には外国人を入れるための法律とか制度とか、しっかりあるの?
⑦これから、急いで取り組まなければならない多文化共生の施策は何?
⑧移民が増えたら、かえって差別や偏見が増えるんじゃないの?
⑨移民が増えたら日本人の仕事がなくなっちゃうんじゃない?あったとしても、給料が下がるんじゃないの?
⑩移民が増えたら医療費とか年金とか、社会保障の負担が重くなるばかりでは?
(11)世界で、多様性はどうなっていくんだろう?
(12)移民が増えて、いいことって何だろう?
ネットで良く言われるのは①⑨⑩です。でも、これらの不安は不安でしかありません。
①1988年から2024年までの38年間に、在留外国人の数は100万人未満から約377万人と約4倍に増えていますが、刑法犯の検挙人数(率ではない)は横ばい、いっとき増えた2005年から比べれば2/3に減っています(つまり率で言えば1/4に減っている)。増えていると感じるのは、メディアやSNSの影響だと思われます。外国人が情報交換で集まっているだけで「怖い」と感じてしまう私たちの方に課題があると著者はいいます。
⑨無くなる仕事を2通りに分けてみる。1「工場、工事現場、農業、漁業」2「会社、行政機関、学校」。
1は深刻な人手不足にあり、そのために政府は受け入れ制度(育成就労→特定技能)を創設したばかり。奪い合う関係ではない。
2はやや深刻な人手不足。こちらは移民日本人問わず競争に勝たなくては職は得られない。どちらかと言えば、移民に不利な条件がある。
著者は、「いがみ合うのではなく、穏やかに共生してゆく」ことを目指そうと述べます。
⑩移民は、ただで医療費・年金を貰っているのではなく、働いて保険料を払い、税金を払っている。寧ろ何もしないで居ると、日本に居続けることは難しくなる。在留資格の関係でそうなります。移民が日本人と結婚し、子供ができ、その後に離婚して生活困窮し、生活保護を受給するケースはあるが、微々たるもの。移民の多くは社会保障制度の担い手になっている。
寧ろ移民受け入れでは、台湾、韓国に遅れている。ちゃんと基本法を制定し制度を作らないと、若い移民の受け入れに失敗して、社会制度の維持は極めて困難になる。日本は今「選ばれない国」になりつつある。
今はポピュリズム、排外主義が、非多様性が流行っているが、歴史の教訓は必ず再認識される事を教えている。
著者は、単純に人手不足解消のみを目的に移民政策を作れば、かつてドイツ首相がいったように「我々は労働者を呼んだが、やってきたのは人間だった」と同じ轍を踏むだろう。という。今の受け入れ制度では、「このまま人数が増加していけば確実に大きな問題が起こる」それが「さらに多くの日本人の「受け入れ意識の低下」を招く」と警告しています。
反対に、基本法をつくり、体制を整備し、日本人の受け入れ意識を高めれば、「いいこと」は増える。外国とのブリッジ人材育成、日本の子供の意識改革、多様性から米国のようなイノベーションが生まれる。
と、著者は言います。
基本はやはり政治家が変わらないとどうしようもなさそうです。