読めばあなたも打ちたくなる!おすすめの麻雀漫画11選
技術や知略だけでなく、運や偶然も絶妙なバランスで絡み合う勝負事、麻雀。そんな麻雀をテーマにした漫画には、玄人同士の技や心理的な駆け引きを追求したものや、強運や場の流れという不思議な力を利用したものなど、様々な作品があります。また作品の舞台も、裏の世界やギャンブラーの世界を描いたものだけでなく、テレビアニメにもなった『咲-Saki-』のような女子高生が麻雀をする、いわゆる萌え系の作品もあって実に多彩!
そんな奥の深い麻雀漫画の中から、今回は厳選した11作品をご紹介します。
昭和の香り漂う博徒一代記『哲也 ~雀聖と呼ばれた男~』
完結『哲也 ~雀聖と呼ばれた男~』 全41巻 さいふうめい・星野泰視 / 講談社
戦時中の軍需工場でバクチに魅せられた主人公・阿佐田哲也は、戦後、バクチを糧にしようと、米兵相手の賭け麻雀にのめり込んでいきます。腕を磨いた哲也は、並外れた度胸と「天運」を武器に、全国の玄人(バイニン)たちと勝負を繰り広げていきます。
自動卓の普及した今ではできなくなった「積み込み」や「燕返し」、「エレベーター」など、イカサマが頻繁に使われていますが、
「イカサマってのは 相手にバレて初めてイカサマになるんだ」
という哲也の言葉が象徴するように、バレなければ、それはすべて生きるための技術。玄人たちはイカサマの腕を磨き、見破るか見破られるか、食うか食われるかの状況で行われる麻雀はとてもスリリング! 勝負の瀬戸際にしか生きている実感を持てないギャンブラーたちの姿が愚かしくも美しく、ピカレスク漫画としても傑作です。
本作は、「勝負師伝説 哲也」というタイトルでテレビアニメ化もされました。麻雀愛好家として名高い直木賞作家・色川武大先生の、阿佐田哲也名義の著作『麻雀放浪記』、『牌の魔術師』を参考にしているため、そこに登場するキャラクターも登場します。ルールの解説や役の覚え方を書いたコラムも載っているので、初心者の方でも楽しめますよ。
謎の雀士がバブル期の賭場を荒らしまくる!『むこうぶち 高レート裏麻雀列伝』
『むこうぶち 高レート裏麻雀列伝』 1~49巻 天獅子悦也・安藤満 / 竹書房
舞台は、バブル景気に浮かれる東京。高額を賭ける非合法の雀荘が乱立し、夜な夜な人を集めています。客の顔ぶれはヤクザ、プロ雀士、気軽に遊びに来た麻雀好きなど、スリルを求める金持ちから切羽詰まった借金持ちまでさまざま。そこに「傀」と名乗るスゴ腕の雀士が現れると、その場は傀の独壇場と化します。圧倒的な力で賭け金すべてをもぎ取ると、彼は夜の街へと去っていくのでした。
対局の詳細が丹念に描かれ、配牌・捨て牌の読み方やそれに左右される対戦者の心理、トータルで勝者になるための戦略など、勉強になる点が多い麻雀漫画です。主人公・傀のキャラが際立っており、どのような時もクールでニヒル! 欲むきだしの対戦相手の心理を読んで手玉にとり、「御無礼」という決め台詞でノックアウトする様子は、爽快なまでに魅力的です。超人的な傀を鏡にして、敗者たちの生きざまやバックグラウンド、ギャンブルに溺れていく経緯が生々しく描かれており、人間ドラマとしても秀逸です。
本作は、天獅子悦也先生が作画し、雀士の安藤満先生らが協力する本格派だけあって、単行本も42巻を超える長期連載となっています。スピンオフ作品『むこうぶち外伝 EZAKI』等も出ていますので、本作でファンになった方はそちらも要チェックです。
自動卓でもイカサマは可能!?『バード 最凶雀士VS天才魔術師』
完結『バード 最凶雀士VS天才魔術師』 全2巻 山根和俊・青山広美 / 竹書房
米国一のマジシャン「バード」のもとに、「蛇」という名の雀士を倒して欲しいという依頼が届きます。バードは海を渡り、マジシャンとしてのプライドを賭けて蛇との勝負に臨みます。しかし蛇は全自動卓において、33万分の1の確率である天和(親番に牌が配られた時点で上がりが完成している役)を連続で上がるという凄腕なのです。
機械による洗牌(牌のかき混ぜ)や、牌数確認等の防止策がとられている自動卓で、イカサマは可能なのか? 蛇のイカサマを、バードがマジシャンならではの着眼点とテクニックを活かして見破り、そして対抗していく過程がとてもスリリングで読みごたえがあります。
本作は、青山広美先生の『バード-砂漠の勝負師-』を、山根和俊先生がリメイクしたもの。青山先生の作品には硬派な雰囲気があり、山根先生の作品にはプラスお色気要素もあり、それぞれに見どころがあるので、読み比べもおすすめ! また、本作の2年後を舞台にした続編『バード 雀界天使VS天才魔術師』も、青山先生原作・山根先生作画で描かれています。いずれも全自動卓麻雀におけるイカサマの可能性を追求しながら、ハラハラドキドキのストーリーが繰り広げられています。
萌えの皮を被った麻雀漫画『ナナヲチートイツ』
完結『ナナヲチートイツ』 全3巻 森橋ビンゴ・前川かずお / 竹書房
主人公の桐島中也は、少年ながらも雇われて賭け麻雀を打つ「代打ち」を生業としています。ある日、同じく代打ちの父に裏切られた結果、女ヤクザの奴隷にされてしまいます。ドSな女ヤクザは中也に毎晩「お勤め」を強制。中也はその悲惨な状況から抜け出そうと、麻雀の天才少女・萩原七緒と組んで、麻雀大会に挑むことになります。
森橋ビンゴ先生作のライトノベルを前川かずお先生が漫画化した作品で、森橋先生いわく「ライトノベルという業界で萌えの皮を被った麻雀小説」を書いたとのこと。麻雀ファンはもちろん、ライトノベル好きや萌え好きな方にもおすすめの作品になっています。かわいい絵柄とシビアな内容のギャップが強烈で、中也がいたぶられながらも自由を求め、麻雀で復讐を果たそうとする、テンポの良いストーリー展開も魅力です。
雀荘に集まる人々を見つめた人間ドラマ『東大を出たけれど 麻雀に憑かれた男』
『東大を出たけれど 麻雀に憑かれた男』 1~3巻 須田良規・井田ヒロト / 竹書房
ヤクザや大金は絡まず、天才や超がつくような麻雀好きも登場しない、現実的なところが逆に魅力的な作品で、雀荘の店員が目にした勝負や体験した人間模様を描いた、ドキュメンタリー調の麻雀漫画です。
作者であり主人公のモデルでもあるプロ雀士・須田良規先生が、東大卒というのもまたユニークです。就職した会社を2ヶ月で辞め、好きな麻雀の世界に戻ってきてしまった主人公の須田。とはいえ、それが良いと思っているわけではなく、同級生たちとの社会的なギャップが気になる……。そんな須田の心情は、麻雀漫画でありながら人間ドラマとしても読みごたえあり。雀荘に来る客たちも、それぞれ何らかの想いを抱えていて、打ち方から人生が垣間見え、麻雀の奥深さがしみじみと伝わってきます。雀荘で起きるドラマと麻雀のシーンとの絡みがおもしろく、一話完結で読みやすいのも魅力です。
作画の井田ヒロト先生は、伊坂幸太郎先生のサスペンス『グラスホッパー』のコミカライズを担当したほか、『お前はまだグンマを知らない』を手がけています。
野生を解き放て!『兎 -野性の闘牌-』
完結『兎 -野性の闘牌-』 全17巻 伊藤誠 / 竹書房
武田俊はいじめられっ子で、周囲の顔色をうかがってばかりいる高校生。そのウサギのような危険察知能力を買われ、プロの代打ち集団「ZOO」にスカウトされます。
天性の勘と運で危険牌を読む能力を開花させ、麻雀も性格も強くなっていく俊。まるでバトル漫画やスポーツ漫画のような、小気味よい展開にグイグイ引き込まれます。ZOOメンバーがそれぞれ動物名をコードネームにしていて、その動物を思わせる個性的な打ち方を見せてくれるのも面白いところ。麻雀ビギナーにもおすすめの作品です。
どこかで見たような政治家たちの熱い戦い!『ムダヅモ無き改革』
完結『ムダヅモ無き改革』 全16巻 大和田秀樹 / 竹書房
各国の政治家がそろいもそろって麻雀マニアで、外交問題を麻雀で解決しようと、国策の名をつけた役をぶつけ合うという超ナンセンス・コメディです。どこかで見たことがあるような見た目の政治家達が、その独特の世界観で暴れ回ります。
作者は『大魔法峠』や『機動戦士ガンダムさん』などで知られる大和田秀樹先生。とにかくドタバタ、奇想天外な政治家たちが繰り広げるぶっ飛んだ展開に、麻雀好きならずとも引き込まれること間違いなしです。
硬派な麻雀漫画『天牌』
『天牌』 1~95巻 来賀友志・嶺岸信明 / 日本文芸社
対局シーンや打ち方、登場人物の麻雀哲学をじっくりと描いた硬派な麻雀漫画で、80巻を超える大作です。主人公の沖本瞬は「王者の才」と呼ばれるほどの抜群の記憶力と運が最大の武器。対戦相手達もそれぞれ得意な打ち筋があり、じっくりと描かれる彼らの戦いは見ごたえ充分です。
スピンオフ作品『天牌外伝』、『天牌列伝』では、本作のサブキャラたちが主役級で活躍し、渋い勝負を見せてくれるので、ぜひそちらもチェックしてください!
天才少年は裏社会を生き残れるのか!?『凍牌(とうはい)-裏レート麻雀闘牌録-』
完結『凍牌(とうはい)-裏レート麻雀闘牌録-』 全12巻 志名坂高次 / 秋田書店
昼は高校生、夜は麻雀打ちという二重生活を送る少年・ケイ。驚異の記憶力を武器に裏レートの雀荘を荒し回り、その冷静な言動と打ち筋から「氷のK」という異名を持っています。裏社会を舞台に打ち続けるケイを主人公としたダーク・テイストなストーリーは、先の読めなさもあって、ページをめくる手が止まらなくなります。
また、濃い脇役キャラにも注目! 中でもライバルの堂嶋は、非凡で冷酷なケイとは真逆の直感的で熱い打ち筋で「ライオン」と呼ばれています。番外編『牌王伝説 ライオン』では主役を張るほどの人気キャラクターです。
なお、現在は続編である『凍牌(とうはい)~人柱篇~』が連載中。ケイの戦いはまだまだ続きます。
誰もが一度は言いたい「背中が煤けてるぜ」『哭きの竜』
完結『哭きの竜』 全9巻 能條純一 / 小学館
ドラマ化もされた『月下の棋士』の能條純一先生の麻雀漫画。主人公は、徹底的に鳴く打ち方から「哭きの竜」と呼ばれる謎の男・竜。リーチができなくなる、手が読まれやすくなるなど、考えなしにすれば不利に働きがちな「鳴き」が、竜にかかればすべて有利に展開し、意外な和了につながるという、ドラマチックな勝ち方が魅力です。
そんな竜の不可思議な強運と孤高の生きざまに魅せられた極道たちが、意地と美学の張り合いで命を落としていくさまも描かれており、任侠漫画のようなロマンチシズムも漂います。
麻雀をやる人なら一度は聞いたことがある、
「あンた 背中が煤けてるぜ」
などの竜のクールな台詞には、逐一しびれます!
スピンオフから麻雀漫画の定番に!『アカギ』
『アカギ』 1~35巻 福本伸行 / フクモトプロダクション
ギャンブル漫画の名手・福本伸行先生の『天 天和通りの快男児』に登場する伝説の雀士・赤木しげるの若かりし頃を描いた本作。スピンオフではあるものの、元の作品を超えて連載は続いており、麻雀漫画の定番として挙げられる作品の1つです。
一番の魅力は、福本信行先生らしい心理描写の細かさ。一局や一ツモどころか、配牌にもキャラクターの心理描写が詳細に描かれることで、一局がとてつもない濃厚さになっており、思わず没頭して読んでしまいます。
特に、鷲巣巌との命をかけた勝負は、1998年に話が始まり、2015年の現在も続いている大一番となっています。麻雀のヒリヒリする心理的駆け引きを堪能できる傑作です。
最後に
麻雀は、初心者でも勝てる敷居の低さと、高みをどこまでも追求できる奥深さが同居する、魅惑的なゲームです。ご紹介した作品はどれもそんな麻雀に対する愛が満ちています。
年末年始、皆さんも家族や友達と、漫画を読みつつ一局打ってみてはいかがでしょうか?