『神様のバレー』アナリストが弱小チームを育てる戦略的スポーツ漫画
中学校のバレーボール部の活躍を描く『神様のバレー』。本作の特徴は、相手チームを分析して、勝つためのアドバイスをする「アナリスト」という役割に焦点を当てていることです。主人公は部員たちではなく、アナリスト出身のコーチ。万年1回戦負けだったバレー部を、見事な戦略によって生まれ変わらせます。その手腕は、まるで全知全能の「神様」のよう。
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※当記事に記載の内容は全て「ぶくまる編集部調べ」です。また、当記事には一部ネタバレを含みます。
目次
『神様のバレー』とは?
『神様のバレー』は、他のバレーボール漫画とどこが違うのか? まずは、基本情報とあらすじを紹介します。
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『神様のバレー』 1~24巻 渡辺ツルヤ・西崎泰正 / 芳文社
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知る人ぞ知る名作『神様のバレー』
『神様のバレー』は、「週刊漫画TIMES」(芳文社)で連載中のバレーボール漫画。原作を渡辺ツルヤ先生、作画を西崎泰正先生が担当。単行本は現在、24巻まで刊行されています。SNSやレビューサイトでも高評価を集める、根強い人気を誇る作品です。
『神様のバレー』のストーリー
アナリスト──それはベンチ外から相手チームを分析し、監督に的確な情報を送る、現代バレーボールにおいて最重要な裏方のこと。実業団バレーボールチーム・日村化成ガンマンズのアナリストだった主人公・阿月総一は、会長から「万年1回戦負けのチームを全国制覇に導けば、全日本男子の監督のイスを用意する」と言われて、私立幸大学園中学校のバレーボール部のコーチを引き受けることになります。
幸大学園中に赴任すると、そこで待っていたのは、「気合いと根性」が口グセの女性監督・鷲野孝子と今イチ覇気のない部員たち。阿月は部員たちが「負け犬の方程式」に当てはまっていると看破します。レギュラーを固定し、それ以外は球拾いという鷲野の練習方針は、チーム内の競争に勝った者には慢心を、負けた者には諦めをもたらすだけでした。
そんなチーム状況へのカンフル剤として、補欠陣を監督に内緒で指導し始めた阿月。そして始まった全国中学校バレーボール選手権の地区予選1回戦。阿月はメンバー表を勝手に書き換え、補欠陣をコートに立たせるという大胆な策に打って出ます。
試合中も数々の作戦を繰り出したことで、1回戦は見事に勝利。しかし、次の試合で敗退し、3年生達は引退していくのでした。
そして生まれた、阿月と1、2年生による新体制。大胆にも全国制覇を目標に掲げた彼らの快進撃が、ここから始まっていきます。
個性際立つ『神様のバレー』のキャラクター
新チームとなった幸大学園中のメンバーや関係者を中心に、『神様のバレー』の個性溢れるキャラクター達を紹介します。
阿月総一(あづきそういち)
主人公。優秀なアナリストにして、幸大学園中バレーボール部のコーチ。「バレーの神様」を自称する尊大な態度ですが、それに見合う実力を持った指導者です。
「嫌がらせ(I)と騙し(D)に満ちた“IDバレー”」
を掲げ、相手チームのあらゆる情報を分析して試合展開の先の先を読みつつ、相手の最も嫌がるプレイを重ねていくのが信条。「根性と気合い」で試合を戦ってきた幸大学園中バレー部を、頭脳集団に変えていきます。
阿月のすごさは、目の前の試合のためだけでなく、大会全体やその先のスケジュールまで見据えて、戦略を立てること。チームの快進撃が、すべて彼の計画通りに進んでいることに気づいた鷲野や部員たちは、プロのアナリストのすごさを改めて思い知らされます。
また、鋭い観察眼を持っていて、相手チームの選手のちょっとしたクセや好不調を見抜き、さらに監督の性格すら丸裸に。それによって斬新かつ大胆な戦術を打ち出し、チームに勝利をもたらします。
物語が進むと、彼の学生時代のことが少しずつ明らかに。阿月がバレーに関わり続けるのは、「どうしても解いてみたい謎」があるからということですが、それは一体どんな謎なのでしょう?
鷲野孝子(わしのたかこ)
幸大学園中の女性監督。元全日本女子代表候補で、現役時代は「高く飛べイーグルアイ!」のキャッチフレーズを持つ人気選手だったとのこと。そのため、他校の指導者には彼女のファンも存在します。美人ですが、口の悪い阿月からは「ハゲワシ」と呼ばれています。
阿月がコーチとしてやって来るまでは、「気合いと根性」をモットーに非効率的な練習と試合運びをしていましたが、阿月の戦術や指導法に影響を受け、指導者として成長していきます。
木下勇紀(きのしたゆうき)
日村化成ガンマンズで、阿月の部下だったアナリスト。会社に所属しながら、幸大学園中で阿月のアシスタントを務めます。温和な性格で、部員達からは「キノコさん」の愛称で親しまれることに。太ってはいますがバレーボール経験者で、情報分析だけでなく、部員達への技術指導でも活躍します。女子バレーのアイドルだった鷲野孝子に憧れていて、部活で一緒にいることによって、彼女といい感じの仲になっていきます。
盛長緑子(もりながみどりこ)
日村化成ガンマンズで、かつて阿月の部下だった女性。盛長グループという総合企業の令嬢で、尊大な性格の持ち主です。ただ、大好きな阿月には、どんな仕打ちを受けてもメロメロ。幸大学園中のアナリストとして、献身的に彼をアシストします。主な仕事は、人脈と財力を駆使しての、ライバル校の調査。幸大学園中の1、2年生を束ねて、「グリ子部隊」を作り上げ、優秀なアナリスト集団に育てていきます。元選手で、現役時代はリベロとして活躍しました。
滝川三秀(たきがわみつひで)
幸大学園中バレー部の熱血キャプテンで、エーススパイカー。2年生の頃からレギュラーで、先輩とともに敗戦を経験。その悔しさから「全国制覇」を掲げます。バレーボール一家に育ち、両親や兄姉から「ミィ」と呼ばれていることがチームメイトに知られ、それ以来、みんなから「ミィ」と呼ばれることに。
福井直樹(ふくいなおき)
幸大学園中バレー部の副キャプテン。セッターですが、もともとはスパイカー志望でした。進学校の幸大学園中にあって、学年1位をキープし続ける頭脳派。ルックスもよく、他校の女子マネージャーから連絡先を渡されたりします。普段はクールですが、試合ではカッと熱くなってしまうことも。阿月からはたまに「インテリ番長」と呼ばれます。
倉木大河(くらきたいが)
3年生。センタープレイヤー。幸大学園中は進学校なので、バレー部も賢くて理解力が高い部員が揃っています。そんな中で他のみんなよりも少々ボーッとしているのが倉木です。彼の軽率さが原因でチームがピンチに陥ることもあるのですが、その実、したたかな一面を持った少年で、試合では相手をうまく欺いたり、駆け引き上手だったりといった曲者ぶりを発揮します。
上島亮(うえしまりょう)
3年生。優秀なリベロで、幸大学園中の守護神として活躍します。努力を惜しまず、誰よりも度胸があり、試合ではさまざまな指示を飛ばしてチームを後ろから支えます。相手の強烈なスパイクを見事にレシーブするかっこいい場面がたくさん見られるキャラクターです。
伊藤仁(いとうひとし)
3年生。ライトスパイカー。小学生時代に将棋の全国チャンピオンになったことがあり、阿月のコーチによって、最強のフェイントの使い手に育っていきます。理詰めのプレイとアフロのようなくせっ毛から、ライバル校の一つ、薬丸中学のメンバーから「爆弾博士」と呼ばれています。
坊山悟(ぼうやまさとる)
3年生。センタープレイヤー。幸大学園中で最も身長が高く、ブロックの要となります。真面目で実直な性格で、同じセンタープレイヤーの倉木とは真逆なゆえに、2人の連係プレイの幅が広がるという利点があります。
西浦雅人(にしうらまさと)
2年生。小柄ですがジャンプ力とパワーとスタミナを合わせ持つ、幸大学園中のスーパーエース。チームが窮地に陥ったとき、一撃でそれを救う頼れる存在です。ただ、ときに1人で突っ走り過ぎてしまうことも。
『神様のバレー』はこんな人におすすめ
試合中の作戦や、チーム育成の戦略に焦点を当て、他のバレーボール漫画とは一線を画す『神様のバレー』。こんな人におすすめしたいという、魅力のポイントを紹介します。
頭脳戦を楽しみたい
本作の一番の魅力は、なんといっても試合中に繰り広げられる頭脳戦です。第2巻で描かれる新人戦の地区大会決勝が、その好例です。新人戦に臨むにあたって、選手たちに15パターンのフォーメーションを叩き込んだ阿月。それによって快進撃を遂げたのですが、決勝の相手・二子石中学のメンバーには、とある理由から全てのフォーメーションがバレていました。
幸大学園中はピンチに陥りますが、それを阿月が逆手に取って──という展開が描かれていくのですが、試合が終わった後、阿月がこの試合のために、大会以前から長い時間をかけて仕掛けていた真の作戦が明らかに。幸大学園中のメンバーは、
「本物の神様なんじゃないか?」
と驚がくします。
このように、高度な頭脳戦が試合ごとに繰り返されるのが本作です。
爽快感を得たい
スポーツ漫画として、もちろん勝利の爽快感もたっぷり味わえます。選手たちはみんな、精神的にもまだまだ未熟な中学生。練習中も試合中も、いろいろなことに悩み葛藤し、今までの自分を乗り越えていきます。もちろん、阿月も彼らの精神的な成長をバックアップ。冷静なアナリストの一面だけでなく、選手たちと喜びを分かち合う姿も描かれていきます。ただ、それがどこまで素直な感情の吐露なのか、それとも作戦の一環なのかは、計り知れないところなのですが……。
とにかく、幸大学園中のメンバーもライバル校のメンバーも素直な少年揃いで、彼らの爽やかな姿に感動できることは間違いありません!
人生に役立つ学びを得たい
阿月のセリフには、スポーツだけでなく人生にも役に立つ名言がいくつもあります。学生にとっても社会人にとっても学びがあるのが本作です。そのいくつかをご紹介!
「古い情報に執着するのは足元の水を腐らせるだけだ」
努力して、自分の力でつかみ取った独自の情報は、どうしても信じたくなってしまうのが人間。それが刷新されて古いものになっても、手放したくないという心理が働いてしまいます。それは泥沼に足を踏み入れて、自分を動けなくしてしまうこと。この阿月の指摘にはドキッとさせられました。
「お前の中にもそんな“武士道精神”のようなものが刻まれてねぇか?」
エースはスパイクを豪快に決めるのが仕事。フェイントで相手をかわすくらいなら、ブロックで止められたとしてもスパイクを選ぶ。そんな選択をした滝川に向けて、阿月が言ったのが、このセリフ。武士道精神で相手に突っ込んでいくのは勇ましいですが、時として勝利の邪魔になり、エースならスパイクを決めろという固定観念はプレイの幅を狭めます。固定観念にとらわれると、うまく行かないというのは、あらゆる局面で言えるのではないでしょうか。
「体験してみるがいい… 情報も策も超越した勝負勘の世界をな」
どれだけ情報を集めて策を練っても、勝敗を分けるスレスレのところでは、イチかバチかのの大ばくちが必要になるときが来る。そのときに必要になってくるのが、理論を超えた「勝負勘」だと、阿月は言います。これは、努力に努力を重ねてきた人間だけが言えるセリフ。単なるヤマカンとは違います。こういう「勝負勘」が培われるくらい、日々の研鑽を重ねていきたいものです。
『神様のバレー』感想【ネタバレあり】
個性的な登場人物と一筋縄ではいかない展開が魅力の今作。読者のアツい感想をご紹介します!
1巻の感想
中学バレーとの事で食わず嫌いしてましたが、内容は下手な高校生スポーツ漫画よりも見ごたえありました。
少年誌のスポーツ漫画より、技術面や戦略/戦術などに深く踏み込んでいるため、絵柄とあいまって中学生スポーツ漫画を読んでいる印象がありません。
バレーボール素人にも分かりやすく楽しめる半面、経験者が読んでもかなり面白い内容です。
内容は完全にロジカル系/頭脳戦系なので『フットボールネーション』『ベイビーステップ』『ジャイアントキリング』『おおきく振りかぶって』などが好きな方へオススメします。内容は『アナリスト』と言う、細かくデータ解析/分析を行い、監督/コーチとともに試合に参加してデータをもとに、試合中リアルタイムで細かい戦略方法のアドバイスをしたり、
分析したデータを監督に送り、監督が戦略を立てたりするための情報スタッフが主人公。
プロバレーでは必須の職業です。全日本代表の監督になる交換条件で万年1回戦負けの学校の監督として就任し、中学全国制覇を目指します。
本来アナリストの分析をもとに監督が最終的に指示を出しますが、本書ではデータ分析による選手の動き方・戦い方指示をアナリスト/監督兼任で主人公が行います。
ロジカルな部分が徹底されているため、『ジャイアントキリング』などよりも戦術戦略部分にフォーカスされています。本質的なテーマとして日本人の『お行儀のいいプレー』『エースはフェイント邪道で真っ向勝負などの不合理な武士道精神』への問題提起。
これらは、他のスポーツにも言えることで、本来は合理性の上に成り立つべき、プレーを日本人気質が邪魔する傾向にあります。
そして、バレー教育/指導者側への問題提起など、『なぜ日本バレーは勝てなくなったのか、勝つためには今後のバレー界はどうあるべきか』などのテーマが根幹にあります。
この辺は『フットボールネーション』のテーマと似てますね。もちろん、主人公や選手達の成長も描かれていますが…精神論スポコン以外が読みたい方に是非オススメです。
久々の当たり作でした。
なかなかに新しいタイプだと思います。
主人公がバレー部のコーチ。
それも根性と努力ではなく、嫌がらせ(策士と言う意味で)で勝たせていく。
いい性格してます笑
チームの子達もありがちな高校ではなく中学生。
ぱっと見派手な子はいないけれどある意味リアル。
面白いです。
ハマりました
興味本意で見てみましたが、ハマってしまいました。競技におけるデータと分析力、相手の心理を知ることの重要性を知ることのできる作品だと思いました。
最新24巻の感想
対戦相手の分析
これから勝たねばならない試合を外から観察して、相手の戦略を分析する。単なる選手目線でなく、試合の流れ、戦略の分析、気になる点が
いっぱい。はやく続きを読みたい気分です。
思考バトル
バレーって、こんなに瞬間に考えるスポーツなのかと感心する…。
やはり面白い
バレー経験者でなくても楽しめる漫画。
この先が気になります。
終わりに
中学バレーの世界では、全国制覇が可能なのは年に一度だけ。それが「全国中学校バレーボール選手権」です。地区大会から始まり、県大会、関東大会、そして全国大会という長い道のり。最新刊の24巻でも、幸大学園中はまだ全国制覇への道を歩み続けています。
勝ち進むごとに新たなライバル校が登場し、息をもつかせぬ試合が続く『神様のバレー』。阿月が繰り出す作戦にワクワクしながら、中学生たちの活躍を応援してください。