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『ドロヘドロ』とは?トカゲ頭の男と魔法使いが対決するカオスな世界

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『ドロヘドロ』とは? トカゲ頭の男と魔法使いが対決するカオスな世界

2018年に、18年間もの長きにわたる連載の幕を閉じた『ドロヘドロ』。現在『大ダーク』(小学館)を連載中の林田球先生による本作は、2020年1月12日よりTOKYO MXでのアニメ放送開始も決定している、今こそ読みたい大作です。

唯一無二の独特の世界観の中を、クセが強すぎるキャラクターたちが縦横無尽に駆け回る『ドロヘドロ』はまさに混沌(カオス)! 好き嫌いの分かれる絵柄、設定かもしれませんが、だからこそ勇気を持ってこの世界に飛び込んでいただきたい。決して損はさせませんから。
そこで本記事では基本情報と本作の魅力、読者の感想などをご紹介し、ビギナーにも優しくドロヘドロの世界をご案内します。

※当記事に記載の内容は全て「ぶくまる編集部調べ」です。また、当記事には一部ネタバレを含みます。

『ドロヘドロ』とは?

『ドロヘドロ』を楽しむために、独特の世界観やあらすじなど、基本的な設定をご紹介します。

『ドロヘドロ』の基本情報

『ドロヘドロ』が始まったのは2000年。小学館発行の『スピリッツ増刊IKKI』(後の『月刊IKKI』)にて連載開始し、『ヒバナ』を経て『ゲッサン』2018年10月に最終回が掲載されました。

かなりざっくりあらすじを説明すると、魔法で頭部をトカゲに変えられた男・カイマンが、相棒のニカイドウと記憶を探し続ける、そんなお話。

『ドロヘドロ』

しかし、シリーズの魅力はストーリーの面白さにとどまりません。メタルバンドSlipknotを彷彿とさせるおどろおどろしいマスクをかぶった魔法使いたち、しぶとく生きる人間たち、おぞましい遊び心を忘れない悪魔たち、ユニークな魔法、臓物と血しぶきが飛び交うハードコアな世界観、緻密かつ大胆な設定……などなど、一言で語れないカオスぶり。18年間も支持されたのには、一筋縄ではいかない理由があるのです。

『ドロヘドロ』

あまりにも衝撃的な内容のため、映像化不可能といわれた本作。そのアニメ化を手がけるのは、『どろろ』や『ゾンビランドサガ』などハイクオリティかつ挑戦的な作品を制作してきたアニメ制作会社MAPPAです。主人公・カイマンの声を高木渉さん、ニカイドウの声を近藤玲奈さんが担当するほか、堀内賢雄さん、細谷佳正さん、小林ゆうさん、高梨謙吾さん、富田美憂さん、市来光弘さんなど、名だたる声優陣の出演が決定しています。

また、シリーズ構成・脚本に「進撃の巨人」「BANANA FISH」などの瀬古浩司さん、世界観設計・美術監督には「青の祓魔師 ―劇場版―」「血界戦線」などの木村真二さんらが参加。現在見られるPVでも、そのクオリティを実感できます。

コミックスでは全23巻で表現された壮大な世界観が、アニメではどこまで描かれるのか、今から楽しみですね(すでに2期の予感……!?)。なお、アニメはNetflixにて先行配信される予定です。

あらすじ

舞台は魔法が使えない「人間」と、マスクをつけた「魔法使い」が存在する世界。人間が生活する世界は「ホール」と呼ばれ、魔法のドアによって魔法使いの世界と繋がります。

魔法使いの体内には黒い“ケムリ”を作る特殊な臓器があり、ケムリを出すことによって魔法が行使されます。魔法の種類は一人ずつ異なり、あらゆるものをキノコに変える、生きたままバラバラにする、死者を復活させる……など千差万別。

ケムリをうまく使いこなせない魔法使いは学校に入ったり、ホールを訪れては人間を練習台にしたりして、各自その力を磨いているのです。

『ドロヘドロ』

終盤では、練習台として売られる人間の凄惨な様子なども描かれています。

物語は、主人公のカイマンが魔法で頭部をトカゲにされて、それ以前の記憶を失ったことから始まります。彼が覚えているのは、かつて自分が人間だったことと、目の周りに十字模様を入れた“十字目の男”の存在。カイマンは自分の記憶と本当の姿を取り戻すため、相棒のニカイドウとともに魔法使いを狩り続けます。

やがて魔法使いの世界の大物・煙が率いる煙ファミリーや十字目の組織、さらには悪魔たちが入り乱れ、混沌は極まるばかり。巻を追うごとに少しずつ謎が明かされ、最終巻まで読んだあかつきにはまた1巻から読み直したくなる、それが……ドロヘドロ!

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『ドロヘドロ』のキャラクター

基本情報をおさえたら、本作の大きな魅力である個性的なキャラクターたちをチェックしましょう。

カイマン

主人公。顔をトカゲに変えられた上に記憶を失い、路地裏に倒れていたところをニカイドウに助けられます。名前はカイマントカゲに由来し、名付け主はニカイドウ。大きな体格と目の周りの十字模様が特徴的で、主にナイフを使って戦います。

『ドロヘドロ』の登場人物:カイマン

自分の本当の顔と記憶を探しており、手がかりを得るため魔法使いを狩った上、片っ端からその頭部をガブリ。口の中にはカイマン同様目の周りに十字模様のある謎の男が潜んでおり、カイマンがかぶりついた人間に“あること”を確認しています。

カイマン

なぜか魔法が効かないため、魔法使い相手でも怖いもの知らず。

魔法使いがホールに現れないときは、ゴミ処理場でアルバイトしています。大好物はニカイドウが作る大葉ギョーザ(料金滞納の常連者)。

ニカイドウ

カイマンのパートナー。一見可愛らしい女性ですが、戦闘能力が高く「本気出すとすぐ殺っちまう」とのこと。

『ドロヘドロ』の登場人物:ニカイドウ

実は魔法使いですが、ある過去のためにそれを隠してカイマンと一緒に魔法使いを狩っています。外見はいたって人間そのもので、ホールで食堂「空腹虫(ハングリーバグ)」を運営。

煙(えん)

悪魔でさえ一目置く魔法使い集団「煙ファミリー」のボス。

『ドロヘドロ』の登場人物:煙(えん)

あらゆる物をキノコに変える魔法を使います。カリスマ性と指導力があり、人の上に立つことが得意。イトコの能井を除く部下からは厚く信頼されています。かつてはラーメンチェーン「花煙」を世界中に展開し、大儲けしていたとか。

死体に命を与える謎の生き物「キクラゲ」を溺愛しています。

『ドロヘドロ』の登場人物:キクラゲ

心(しん)

『ドロヘドロ』の登場人物:心(しん)

心臓をかたどったマスクを付けた、煙ファミリーの掃除屋(殺し屋)。本気モードになると前向きにつけるマスクは普段裏向きにつけており、マスクを取るとさわやかメガネの優男。

『ドロヘドロ』の登場人物:心(しん)

武器としての金槌と、生きたままなんでもバラバラにする魔法を持っています。

人間の父親と魔法使いの母親との間に生まれたハーフですが、魔法が使えずホールで人間として暮らしていました。やんちゃした結果、魔法使いの世界で煙ファミリーに所属することに。

能井(のい)

『ドロヘドロ』の登場人物:能井(のい)

心のパートナーでよき後輩。好戦的、ポジティブ、タフと、悪魔の素養をバッチリ身につけています。マスクを付けた状態では筋骨隆々の大男のようですが、その正体はボディビルダーのような体型のパワフルな美女(バストは驚異の104cm!)。

『ドロヘドロ』の登場人物:能井(のい)

生きてさえいればなんでも治す魔法が使えます。イトコの煙のもとで悪魔候補生として修行している最中に心と出会い、悪魔との約束を破って心を助けたことからかけがえのない仲に。少女時代は……可憐でした……(過去形)。

恵比寿(えびす)

『ドロヘドロ』の登場人物:恵比寿(えびす)

ドクロのマスクをつけた貧乳の女の子。実はいいところのお嬢さん……だったのに、流れ流れておかしなことに。彼女自身は正確には煙ファミリーではありませんが、ファミリーで下っ端扱いの藤田がパートナー&お世話役を健気に務めています。

カスカベ博士

『ドロヘドロ』の登場人物:カスカベ博士

魔法使い研究の第一人者。実年齢は60歳ですが、魔法使いの練習台にされて子供の姿に。「カスカベ」は別居中の妻の名前で、博士の本名はヘイズ。

ジョンソン

魔法のケムリが溶け出したホールの雨水の影響で巨大化し、カスカベ博士のペットポジションに落ち着いたゴキブリ。

『ドロヘドロ』の登場人物:ジョンソン

スニーカーを履いた足があるため攻撃ができ、喋ることも可能です(口癖は「ショッキング!!」)。弱点は殺虫剤。

バウクス先生

『ドロヘドロ』の登場人物:バウクス先生

「ホール中央病院」で魔法使いの実験台となった魔法被害者を治療している、顔に升状の刺青をした中年の医者。記憶を失い、倒れていたカイマンを助けたことから、何かにつけカイマンたちを助けています。ちょいちょい不憫。

『ドロヘドロ』の魅力

冒頭でも(我慢できずに)少し触れましたが、本作の魅力は盛りだくさん。特に推したいポイントを厳選してご紹介します!

バトルで多発する魔法がユニーク

「魔法」と言われてどんなものを想像しますか? 空を飛ぶ、姿を変える、誰かと誰かを恋に落とす……。いいですか、そんなファンシーな妄想は今すぐ捨ててください!

キャラ紹介部分でも述べたように、今作には特異で衝撃的な魔法が多数登場します。人の頭部をトカゲやエビフライに変えてしまう、あらゆるものにキノコを生やして破裂させてしまう……など、字面で見ると笑えてしまう魔法ですが、その威力はシャレにならないほど絶大。

『ドロヘドロ』の魔法:煙のキノコ魔法

特に煙のキノコ魔法は、街を壊滅させ、時には手練れの部下たちをもオロオロさせてしまうほど。

『ドロヘドロ』の魔法:煙の魔法でキノコ化

個性的な魔法と魔法使いがこれでもかとばかりに出てきますので、ぜひ推しを見つけてくださいね!

ダークな世界観とキャラクターが見せる明るさのギャップ

「#スプラッタ」「#グロテスク」「#バイオレンス」のタグがついてもおかしくない作品にもかかわらず、読後感は不思議と爽やか。その理由は、シュールで軽妙な笑いがいたるところに散りばめられているから。また、真っ黒な煙と血だまりとドロの中でも、キャラクターたちが明るさを失わないから。

例えば一見和やかなこのシーン。

『ドロヘドロ』:カイマンとニカイドウ

明るい新年の始まりのようですが、実はこの1コマは、カイマンとニカイドウがカスカベ博士の屋敷に不法侵入している場面なのです。迷路のような家の中には魔法使いの標本、怪しすぎる研究室、オバケらしき黒い煙……と不気味なものだらけで、ほっこりとしたこたつが薄気味悪さを引き立てています。爬虫類マッチョのカイマンが、オバケが苦手という設定もコミカル!

ほかにもちょっとした会話でクスッと笑わせてくれるのが林田先生マジック。連載中の『大ダーク』でもそうですが、暗いストーリーや世界観にとぼけた笑いをふりかけることで、作品全体が絶妙なバランスに保たれています。愛嬌たっぷりのコメディー部分は、登場人物にとっても読者にとっても、ある種の救いなのかもしれません。

作者・林田球先生の画力

1巻の表紙を見ただけでもわかると思うのですが、とにかくもう……絵面がすごくないですか???(語彙力がキノコになった) 本作をジャケ買いした人はセンスがあります。

キャラクターや一つ一つが特徴的なマスクなどの造形からも、先生独自の美意識が伝わってきて楽しいのですが、ホール、魔法使いの世界、魔法学校、中央デパートなど、遠景や建物の描写は圧倒的です。

『ドロヘドロ』:魔法使いの世界

コミックスには部分的にカラーページも収録されており、迫力のあるイラストが心ゆくまで楽しめます。カバー裏までぎっしり描かれたドクロ、死体、悪魔たちにキュンキュン☆(思考力もキノコになった)

何が驚きって、アシスタントなしで先生がお一人で描き上げているということ。色の付け方、にじみ方などを見ると、おそらくアナログ処理で描かれていると思うのですが……なんというロックンロール……! キャラも世界観も相当ですが、何よりもハードコアなのは林田先生だった、という華麗なオチでした。

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『ドロヘドロ』の感想【ネタバレあり】

BookLive!に寄せられたレビューの中から、思わず本作を読み返したくなるわかりみレビューをいくつかご紹介。完結まで見守ったファンの声には共感必至です!

1巻を買ったら、続きを買い求める日々に!
一見、グロテスクホラーのような雰囲気かと思いきや、キャラクターの個性ややり取り、過去が複雑に絡んできて面白いの一言です。
巻を増すごとに、ギャグが秀逸になっていってる気が(笑)
もちろん、世界観やデザインのクールさは言わずもがな。
ちょっとでも気になったら読むのをお勧めします!

ごちゃごちゃでどこか愛嬌のあるキャラクターがとってもかわいい。
とても洗練された少年漫画のセンスで描かれた、
スラム的なファンタジー世界が目新しい。
見た目はグロテスクで中身はとっても健全な漫画だと思います。

一度は夢見る魔法使い!!
魔法使いのイメージが一気に崩れて新しい自分発見。
それがドロへドロ!
あー恵比寿が可愛いなー!!!!!!

本当に終わってしまうんだね。
長かったと言えば長かったけど、ちゃんと終わってくれてよかった。
最初から読んでいた身としては、これを一気に読めるって言う幸せを味わえるのはうらやましい。

『ドロヘドロ』のレビューをもっと見る

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楽しみ方無限大! それが……「ドロヘドロ」!

上記の読者のように物語をストレートに楽しむもよし、別の角度から楽しむのもよし。おすすめの楽しみ方をレクチャーします。

「相棒同士の絆」にモエモエする

作品世界では、魔法使いはそれぞれ「パートナー」を探し、コンビを組むことが推奨されている様子。特にわかりやすいのが煙ファミリーで、心& 能井、藤田&恵比寿コンビのやりとりにどうしようもなく悶えてしまう読者もいるのではないでしょうか? いますよね? 素直になっていいんですよ????

『ドロヘドロ』:能井と心

互いにいい男女にもかかわらず、性差を超えた友情を育んでいる様子が最高。別に友情以上の想いがあってもいいんですけどね!

もちろん、カイマンとニカイドウの友情も見どころです。

『ドロヘドロ』:カイマンとニカイドウ

数々の困難を乗り越えて、彼らの絆はどこまで続くのかハラハラワクワクします。

「悪魔の視点」でウハウハする

魔法使いを作り出したという「悪魔」。唯一無二の純粋な悪魔である「チダルマ」をはじめ、今作にはヤンチャで残酷でクールな悪魔が多数登場します。

『ドロヘドロ』:チダルマ

強大な力を持ち、地獄に住み、遊び心を忘れない悪魔たちは作中でも謎多き存在。試験に合格した魔法使いは悪魔になれますが、反対に悪魔から人間への降格は途轍もない恥だと考えられているようです。

魔法使い側にも人間側にも属さない、超越的な悪魔の視点で作品を読み直すと、一味違った読後感が味わえるはず!

「魔のおまけ」にニンマリする

単行本限定の巻末描き下ろし漫画「魔のおまけ」は必見コンテンツ。

『ドロヘドロ』:ギョーザ男

ハングリーバグに住む妖精・ギョーザ男の活躍や煙ファミリーの舞踏会など、コメディー色の強い短編が収録されています。本編で血まみれで戦っているやつらのゆるっとした日常に、思わず頬はゆるみ腹からは具が出るに違いありません(※ギョーザジョーク)。掲載誌で連載を追っていた方は、ぜひ単行本もチェックし直してみてください!

終わりに

一度読んだだけでは全てを咀嚼できないぐらい圧巻の構成力で、格別の読書体験を与えてくれる今作。世界観が壮大すぎて、いくら語っても語りきれないという混沌ぶりに、ただただ頭を垂れるしかありません。

魔法使いが死ぬ端から生き返り、人体が輪切りにされた端から修復され、生首が飛び交った端からくっついていく、圧倒的カオス。血しぶきとドロで染まった紙面におののきながら、それでも我々は読まずにいられないのです。それもこれも誰も彼も……ドロヘドロ!

ドロヘドロ
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完結『ドロヘドロ』 全23巻 林田球 / 小学館

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