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アニメでもほっこり。安野モヨコが描く、癒しの漫画『オチビサン』。心にそっと寄り添ってくれる作品の魅力を解説。

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オチビサン

『オチビサン』は2007年より「朝日新聞」で連載を開始し、2014年からは週刊誌AERA に移籍、その後、2019年末まで連載していた漫画作品です。著者は『働きマン』、『ハッピー・マニア』、『監督不行届』などで知られる安野モヨコ先生。単行本は全10巻発売されており、長年にわたり読者から愛されている作品です。

オチビサン『オチビサン』©Moyoco Anno/CORK

『オチビサン』
『オチビサン』を試し読みする

■アニメ放送情報

©Moyoco Anno / NHK・豆粒町内会
【放送予定】 NHK総合 土曜深夜に随時放送中。詳しい放送時間はコチラ
ほか動画配信サービスで好評配信中です!

【1】『オチビサン』とは

鎌倉のどこかにある小さな町、豆粒町。そこに暮らすオチビサンと仲間達の温かい日常を描いた作品です。

オチビサン(第8巻70ページ)

オチビサンは何気ない日常の中に隠れている楽しいことを見つけるのが得意です。現代を忙しく生きる私たちがつい見逃してしまうような“心がわくわくすること”を、オチビサンたちは全力で楽しみます。そんな姿が、読む人を癒す作品です。

【2】登場人物

●オチビサン

鎌倉のどこかにある小さな町、豆粒町に住んでいます。
オチビサンはどんな小さなできごとでも全力で楽しみます。その姿を見て、周りの人も楽しい気持ちになるので、みんなからとても愛されています。

オチビサン

(第8巻4ページ)

●ナゼニ

オチビサンの友達です。大好きな本をいつも持ち歩いています。一度気になったことは気のすむまで調べ尽くすので、とても物知り。

オチビサン(第8巻4ページ)

●パンくい

オチビサンの友達。パンを食べるのが大好きで、作るのも得意です。自分で焼いたパンをオチビサンとナゼニにふるまうこともあります。

オチビサン

オチビサン(第8巻5ページ)

●おじい

オチビサンたちをいつも優しく見守ってくれています。寒い冬の日はおじいの家でお鍋を食べるなど、みんなおじいが大好きです。

オチビサン

オチビサン(第8巻5ページ)

●シロッポイ

湯気から生まれた「しろっぽい何か」。オチビサンと一緒に暮らす家族です。

オチビサン

オチビサン(第8巻4ページ)

●ジャック

いたずらが好きな猫。おじいと仲良しで、よくお酒を一緒に飲んでいます。

オチビサン

オチビサン(第8巻5ページ)

●アカメちゃん

迷子になっていたところをオチビサンが見つけ、そのまま家族となったうさぎ。月を見るとなぜだか悲しくなって泣いてしまいます。

オチビサン

オチビサン(第8巻4ページ)

●ヘビくん

友達を探しているヘビです。体がとても大きく、怖がられてしまうことが多いです。

オチビサン(第8巻5ページ)

【3】『オチビサン』原作マンガの「温かさ」

『オチビサン』は、安野先生が「疲れ果てて本や漫画を読む気力のない人でもぼーっと眺めていられるだけのものを描こう」(単行本10巻111ページより)という想いで生まれた作品だそうです。かわいらしいキャラクターと、温かみのある絵柄で描かれる『オチビサン』の世界は読む人を癒し、リラックスさせてくれます。

『オチビサン』は、忙しい日々の中でつい忘れてしまう、四季折々の美しさや風情、季節を楽しむ心を思い出させてもくれます。
例えば、原作マンガ第2巻のこのページ。

オチビサン(第2巻13ページ)

5月の晴れの日に、オチビサンが木の葉のぎざぎざを数えていたところ、キレイな新緑の中にいると、ぼーっとしてしまって数なんてどうでもよくなってしまう、というお話。パンくいの「ミドリになる」という表現もとても素敵です。
このお話を読んだ時に、筆者自身、子供の頃に山や森に入り、木漏れ日の中で景色を見ることが好きだったなと似た体験を思い出し、とても懐かしい気持ちになりました。大人になってからはそんな機会もだいぶ減ったなと読んでいて気づかされました。

他にも、葉や土の匂いが濃くなる夏の夕暮れ時を表現したお話や、

オチビサン(第3巻30ページ)

夜、コオロギや鈴虫の鳴き声が秋の訪れを知らせるお話、

オチビサン(第4巻35ページ)

冬に雪が降り、たくさん積もれとオチビサンたちがはしゃぐお話など、

オチビサン(第5巻47ページ)

こんなふうに、誰しも一度は体験したことがあるようなお話が多く、郷愁に心が温められます。

忙しい日々では、立ち止まって景色をじっくり眺めたり、季節の変わり目の変化を楽しむ心の余裕がなくなっていることがありますが、そんな時こそ、美しい四季のほんのふとした気付きを温かい絵柄で表現する『オチビサン』を見ながら、一息ついてみるのもよいかもしれません。

ぼくとつとした作風の『オチビサン』ですが、作中に出てくるセリフに励まされることもあります。

オチビサン(第6巻53ページ)

「誰も答えてくんないってことは自分で答えを決めていいってことだ」
答えは常に用意されている訳ではなく、正解がわからない時は自分で答えを決めて行動してしまってよいというメッセージ。行動に何か指針を求め迷う人を勇気づける素敵なセリフだと思います。

他にも、

オチビサン(第3巻55ページ)

「なんにもないのは案外悪いことでもないと思うよ」
たとえば、「今日はこれをしよう」と思っていても、結局何もせずに終えてしまう休日ってありますよね。なんとなく、ほんの少し罪悪感や後悔が残るような。でもそうしたことを悪と決めずに、「なんにもないは悪くない」と許してくれる言葉ではないでしょうか。

『オチビサン』という作品に一貫している“温かさ”。これは前述した通り、安野先生が「疲れ果てている人にも読めるように」と想いを込めているからだと思います。

【4】アニメ『オチビサン』の魅力

NHKで放送されているアニメ『オチビサン』。制作スタジオは『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズでおなじみのスタジオカラーです。


PVを見てもわかる通り、アニメ『オチビサン』では、原作マンガの魅力の1つである四季折々の美しい描写がしっかりと再現されています。
原作の絵作りをベースにアニメも制作されたことで、原作の持ち味を再現することが出来たとのこと。優しくて温かい雰囲気がそのままアニメに落とし込まれています。
また、キャラクターが実際に動いているので、オチビサンたちが原作以上に元気に遊んでいるように見えて、一層かわいらしいです。筆者個人的には、動くたびに揺れるナゼニとパンくいの長い耳にとても萌えます。

主題歌は森山直太朗さんの書き下ろし曲、『ロマンティーク』。落ち着いた曲調に、優しく耳にすっと入ってくる森山さんの歌声が『オチビサン』の世界観にピッタリ。エンディングでは、この曲に合わせて四季の風景にオチビサンが遊んでいる様子が流れるので、目も耳も癒されます。

アニメは1話5分と短いです。原作マンガ同様に、リラックスして気楽に観ることが出来ます。土曜日の夜、寝る前に『オチビサン』に一週間の疲れを癒されてみてはいかがでしょうか。

【5】終わりに

『オチビサン』、いかがでしたか?
こどもはもちろん、大人まで楽しめる作品です。むしろ毎日仕事や勉強を頑張っている大人ほど心に刺さると思います。
気になった方は、ぜひ漫画やアニメをチェックしてみてくださいね。

オチビサン『オチビサン』©Moyoco Anno/CORK

『オチビサン』
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