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『チ。―地球の運動について―』地動説を唱えた先人たちの熱いドラマ

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『チ。―地球の運動について―』地動説を唱えた先人たちの熱いドラマ

『マンガ大賞2021』で、第2位となった『チ。―地球の運動について―』。15世紀のヨーロッパとおぼしき世界を舞台に、地球が太陽の周りを回っているという宇宙観、すなわち地動説を信じるようになっていく人々を描いた作品です。
その時代に地動説を信じることは、単なる科学的な選択に留まらず、強い権力を持っていた宗教に対して異を唱えることでもありました。異端者は火あぶりにされていた時代にあって、命がけで自らの信じるところに従う人々が、本作の主人公たち。その熱い生き様は、現代の私たちにも熱く訴えかけてきます。
決して遠い世界の話ではなく、普遍的なテーマを持つ『チ。―地球の運動について―』。その魅力を、ぶくまる書店員が紹介します!

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※当記事に記載の内容は全て「ぶくまる編集部調べ」です。また、当記事には一部ネタバレを含みます

『チ。―地球の運動について―』とは?

『チ。―地球の運動について―』の作者やあらすじなど、まずは基本的なことがらを紹介します。

地動説をテーマに据えた一大叙事詩『チ。―地球の運動について―』

地動説をテーマに据えた一大叙事詩『チ。―地球の運動について―』

本作は、『週刊ビッグコミックスピリッツ』にて連載中。単行本・電子コミックが、それぞれ4巻まで販売されています。作者は魚豊(うおと)先生。陸上競技の花形と言える100m走をテーマにした『ひゃくえむ。』を、2018年から2019年にかけてマンガアプリの「マガポケ」で連載。『チ。―地球の運動について―』はそれに続く連載作品です。
物語の舞台となるのは、15世紀前期のP王国。天動説の立場を取るC教が広く信じられている世界です。そんな中、地動説を信じるに値すると心に決めた人々が、命を賭けて自らの意思を貫いていく姿が、ドラマティックに描かれていきます。

『チ。―地球の運動について―』のあらすじ

『チ。―地球の運動について―』のあらすじ

12歳で大学への入学を許された神童のラファウ。孤児として生まれた彼は、やがてポトツキという神父の養子となり、聡明にして謙虚な少年として周囲から高い評価を得ていました。しかし、順風満帆だった人生はフベルトという男との出会いで一変することに。天体観測を趣味としていたラファウは、フベルトに脅される形で彼の研究の助手にされてしまったのでした。
フベルトがラファウに話して聞かせたのが、地動説。C教が唱える天動説を真っ向から否定し、見つかれば異端者として断罪される考え方です。最初はそれを受け入れられなかったラファウですが、聡明な彼はすぐに地動説の合理性に気づき、それを美しいと感じるようになっていきます。
ところが、フベルトは教会によって火あぶりの刑に。地動説についての書類はラファウに託され、彼もまた自らの命を賭けて、地動説を信じる道を選ぶのでした。

フベルトからラファウに託されたことを発端に、C教にとっては異端である地動説の研究が、何人もの人々に受け継がれていくのが本作のストーリー。章ごとに主人公が代わり、真理の追求に人生を捧げることのすばらしさが描かれていきます。

『チ。―地球の運動について―』読者の評価は?

『チ。―地球の運動について―』のどこに、読者は魅力を感じたのでしょうか? 寄せられた感想を紹介します。

最後まで読んでから表紙を見ると、なるほど、となりました。ネタバレになるので多くは書けませんが、人間の抱く知への貪欲さが美しく思えます。かの有名なフェルマーの最終定理だってきっとそう。色々な人の手に渡って多くの知を得て導き出された解はそれだけでロマンを感じてしまう。数字の先に愛がある、なんて思いました。

ところで。

既存の知識に異を唱える、って普通に考えて中々出来ないこと(そもそも気付けない)だなぁ…なんて。また、今まで当たり前に思っていたことを違うと言われることに対しての恐怖(平穏だと思っていたフツウが崩れることへの恐ろしさ←この辺りは伊藤計劃氏の虐殺器官にもあったなぁと。追記ですが)もわかるので、異端審問官の気持ちもなんとなく分かるんですよね…

うーん。
深くて、とても面白い作品でした。年の最後に良い作品に出会えて良かった。続きが気になります。
Posted by ブクログ

なんだこれめちゃくちゃ面白い!15世紀のヨーロッパを舞台に、当時異端とされていた「地動説」にのめりこんでいく神童ラファウ。地球の動きの美しさを求めて、異端審問官の目をかいくぐって研究するなんて、常軌を逸した行動にしか見えないかもしれない。でも命にかえてでもこの感動を後世に残したいという少年に胸を打たれる。静かで、美しく、それでいてものすごい熱量が流れ込んでくる。今後が楽しみ!
Posted by ブクログ

地動説を証明するために命をかける人間の話。
C教が広く信仰され権力を持っていた時代、地球は宇宙の中心であるという天動説が正しいとされていた。
たとえ将来の成功を失ったとしても、拷問をされたとしても、美しいものや知的好奇心に勝るものはないのだと示してくれる。
自分が証明できないとしても、次の人へ繋ぐことを優先して、地動説の証明に一歩でも近づこうとする姿勢に知性を感じた。

『チ。―地球の運動について―』の強靭なキャラクター

強靱な信念をいだいて生きる『チ。―地球の運動について―』のキャラクターたち。物語の柱となる人々を紹介します。

ラファウ

『チ。―地球の運動について―』ラファウ

12歳にして大学に合格した、優秀な子ども。天文学に興味を持っていましたが、人々の評価を得て“合理的に生きる”という自らのモットーに反するため、それを捨てて神学を専攻することもやむなしと考えていました。そんな時に、地動説の研究家フベルトと出会い、天体観測の助手となったことで人生が変わります。火あぶりにされてしまったフベルトの遺志を継いで、大学では天文学を専攻することを決意。C教からの弾圧に対抗して、地動説の研究を始めます。

フベルト

『チ。―地球の運動について―』フベルト

ラファウの義父ポトツキの知人で、「禁じられた研究」(地動説研究のこと)をしていたため、教会に捕まっていました。改心したと嘘をついて解放され、身柄を引き取りにきたラファウと出会うことになります。目が弱った自分の代わりに天体観測をしてもらうため、ラファウを脅して強引に助手にしますが、やがて、地動説を理解しそこに美しさを感じ始めたラファウに後を託すことに。フベルトがラファウに遺した、地動説についての書類を収めた石箱は、本作の重要なアイテムとなります。

ノヴァク

『チ。―地球の運動について―』ノヴァク

C教の派遣異端審問官。元傭兵で、ヘラヘラと軽い態度を取りながら、異端と見なした人間には残酷な拷問を加えていきます。フベルトとラファウだけでなく、その後に現れる、地動説を信じる人々とも深く関わることに。

オクジー

『チ。―地球の運動について―』オクジー

貴族から報酬を受け取り、決闘を代行する「代闘士」を生業にする男。とある出来事から、地動説の書類を収めた石箱の存在を知り、修道士のバデーニをそのもとに案内します。彼自身は字を読めず、地動説についての理解も曖昧ですが、自分に後を託して死んでいった仲間のために、行動を起こします。バデーニと出会ってからは、助手のような役割を果たし、地動説の研究に関わっていくことに。彼の驚異的な視力は、天体観測のための大きな武器となります。

バデーニ

『チ。―地球の運動について―』バデーニ

優れた頭脳を持つがゆえに、周囲に対して尊大な態度を取ってしまうC教の修道士。素行不良と思想上の禁忌を犯したことで、田舎の教会に左遷され、無為の日々を送っていたときにオクジーと出会い、地動説の書類が入った石箱にたどり着きます。中身を確認した彼は、「宇宙が変わるぞ」と言い、地動説を証明するための活動を開始します。

ヨレンタ

『チ。―地球の運動について―』ヨレンタ

宇宙論の大家である貴族・ピャスト伯に認められた天才少女。ピャスト伯の屋敷への出入りを許されるのですが、女性であるという理由で差別を受け、天文研究には参加できずにいました。そんなとき、目に止まったのが街の広場の掲示板に貼られていた天文学の問題でした。それはバデーニが提示したもので、難解な問題を見事に解いたことから、バデーニ、オクジーと出会い、地動説の研究に協力することになります。

『チ。―地球の運動について―』のここが面白い!

地動説を巡って、さまざまな人々の人生が交錯していく『チ。―地球の運動について―』。その魅力を、5つの視点から紹介します。

中世の価値観を追体験できる

『チ。―地球の運動について―』中世の価値観を追体験できる

C教による苛烈な異端審問が、人々の自由な思索を阻んでいた時代。本作では、異端になることを恐れずに地動説を信じた人々に降りかかる悲劇が、何度も描かれていきます。人々の信仰を一手に集めるC教。その教えに反することは、異端者として火あぶりにされることだけでなく、C教の神による死後の救済を捨てるという意味でもあります。宗教によって心を縛られている人々の価値観が、説得力をもって描かれていきます。

地動説を唱える人々の信念

『チ。―地球の運動について―』地動説を唱える人々の信念

C教の教えに反してでも、地動説の合理性と美しさを信じようとするのが、本作の主人公たち。彼らの信念はまさに死と引き換えのものであり、現代において、科学の新説を唱えることとは、覚悟の違いにおいて天と地の差があります。なぜ、そこまでして彼らは地動説を信じようとするのか? それに対する明確な答えが、ラファウの言った「感動できる。」という短いひと言です。見たことのない来世ではなく、現世の美しさこそを信じ、そこにある真理を追求して、自分の死後には後続に託す。それが、限られた人生を感動とともに終わらせるための道だという考え方は、ラファウの後の主人公たちにも共通した、本作の軸です。

宇宙の神秘に思い馳せられる

『チ。―地球の運動について―』宇宙の神秘に思い馳せられる

地動説を信じた上で、では、それをどのようにして証明するか。地球が動いているという仮説への科学的なアプローチが、本作では丁寧に描かれていきます。たとえば、夜空に固定された星々の中で、常に動いている火星の存在が、そのヒントに。地球と同じように火星も太陽の周りを回っていると仮定すれば、天動説では説明できなかったその動きが説明できるのです。2巻では、それをバデーニがオクジーに説いて聞かせるシーンが。
「あの展開は崇高で荘厳で偉大で広大で、そして、地球と、調和してる──」というバデーニの言葉を聞いて、オクジーが夜空を見上げると、そこには美しい星々が。宇宙の神秘を印象的なセリフとともに知らしめてくれるのも、本作の大きな魅力です。

セリフの親しみやすさ

『チ。―地球の運動について―』セリフの親しみやすさ

地動説に出会う前のラファウは、“合理的に生きる”をモットーに、この世界を快適に生きていました。周りの人々を喜ばせるために、大学では「“神学”を専攻したいと思います!」とほがらかに宣言しつつ、心の中で「世界、チョレ〜〜」と叫ぶシーンが第1巻の序盤にあります。このセリフに代表されるように、中世を舞台にしつつ、ところどころに現代的なセリフを混ぜて親しみやすい語り口になっているのも、本作の特徴です。

とにかく熱い、名ゼリフの数々

『チ。―地球の運動について―』とにかく熱い、名ゼリフの数々

地動説への熱い思いを胸に、真理を求めて生きる本作の主人公たち。彼らのセリフはとても力強く、現代の私たちにも、人間らしく知性をもって生きることのすばらしさを教えてくれます。科学を知れば、自分の見ていた世界が今までとは違って見える。それに気づいたオクジーにかけた、バデーニのこのセリフは象徴的。このように、「知」に対する熱いセリフが、何度も何度も出てきます。

「終わりに」

『チ。―地球の運動について―』の紹介、いかがだったでしょうか? 既刊は今のところ4巻で、これからも地動説を巡る長い物語が続いていくだろう本作。次に、地動説を引き継ぐ、どんなキャラクターが登場するかも大いに気になるところ。架空の歴史漫画としても、天文漫画としても読み応えがある本作を、ぜひ今から追いかけてみてください。

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