『アルテ』の世界を徹底解説!祝アニメ化決定★ルネサンス時代の女性画家の一代記【ネタバレ注意】
アニメ化が決まり、一躍注目を浴びている漫画『アルテ』。
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『アルテ』 1~11巻 大久保圭 / ノース・スターズ・ピクチャーズ
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ボッチチェリやダ・ヴィンチ、ミケランジェロが活躍した16世紀初頭のイタリアを舞台に繰り広げられる物語を、より一層理解するための世界史・美術史的な解説をご紹介。これを読めば『アルテ』の世界がもっと楽しくなる!
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※当記事に記載の内容は全て「ぶくまる編集部調べ」です。また、当記事にはネタバレを含みます。
目次
『アルテ』のあらすじ
時は16世紀初頭、ラファエロやレオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロなど後世にその名を轟かせる巨匠たちが腕を奮ったルネサンスの最盛期。
フィレンツェの裕福でない貴族の娘として生まれたアルテは、結婚をして鳥籠の中の鳥のような暮らしをすることを嫌って、父の死をきっかけに画家として生きる道を選ぶ。
©大久保圭/NSP 2013
当時の画家は工房に弟子入りして技術を学ぶ、いわば“職人”の世界。
©大久保圭/NSP 2013
女だという理由で門前払いを食らわされ続けたアルテだが、街で唯一弟子がいない一匹狼・レオのもとに弟子入りすることになる。
『アルテ』の登場人物たち
アルテ
©大久保圭/NSP 2013
フィレンツェの貴族の家に生まれた16歳の少女。絵を描くことが何よりも好きで、父の死後、結婚して家庭に入ることを拒否して家を飛び出し、画家の道を志す。女性の身で画家を目指すことから、さまざまな差別や試練にぶつかるが、持ち前の明るさと負けん気の強さで乗り越えていく。
隙間風と雨漏りがすごい小屋をあてがわれてもくじけない!
師匠であるレオのことが好きになるも、画家として独り立ちするため恋心を封印する。
レオ
©大久保圭/NSP 2013
無愛想で気難しく、弟子を取らずに一人で工房を経営していた孤高の親方。とっつきにくいがアルテが「女だから」という理由で差別せず、言いつけた課題をクリアした彼女を弟子にする。
自身が物乞い出身から親方にまで成り上がったことから、他人に厳しいところがあるが、努力をする人間はきちんと認める一本気な性格の人物。貴族出身の女であるという逆境から立身を目指すアルテを、かつての自分に重ねて見守り育てようとしている。
©大久保圭/NSP 2013
ヴェロニカ
レオのパトロンの1人である高級娼婦(コルティジャーナ)。美貌と教養を兼ね備えた魅力的な女性で、アルテに初めて肖像画を依頼した顧客となる。
アルテの恋の相談相手であると同時に、男の庇護の外で生きる女にとって恋が致命傷となることを教える人物でもある。その他に、教養のもととなる本を貸したり、貴族との交渉術を教えたりと、良きアドバイザー・友人としてアルテを支える。
ユーリ
ヴェネツィアの名門貴族ファリエル家当主の弟。ヴェロニカを介してアルテやレオと知り合い、アルテに自分の姪・カタリーナの家庭教師と肖像画の制作を依頼する。
©大久保圭/NSP 2013
温和で人好きのする性格だが、ヴェネツィア行きやレオとの関係性に悩むアルテを見て楽しむという悪趣味なところも。
カタリーナ
ファリエル家当主の娘でユーリの姪。両親の前では引っ込み思案で礼儀作法の不得手な少女を演じているが、本当はマナーや礼儀作法、社交術も完璧なのに「とにかく面倒なのよね」とできないフリをしているだけ。
わがままでふてぶてしい性格だが、料理を作って人に振る舞うのが大好き。アルテと打ち解けた後は手紙をやり取りする仲に。
アンジェロ
ダニロ親方の工房で働く、アルテと同年代の徒弟職人。姉妹に囲まれて育ったことから女性には優しく接するように刷り込まれている。そのため、苦行を強いられるアルテを手助けしようとするが、「女だから」という理由で助けられたくないアルテに拒否され、それがトラウマに……。しかし、絵を描きたいというひたむきな思いを持つアルテに、仲間意識と深い関心を持つようになる。
ダーチャ
農家出身で、持参金を稼ぐため11歳の頃から針子として働き生計を立てている。最初は貴族出身でありながら、職人の世界に入ってきたアルテを快く思っていなかったが、仕事場でのトラブルを一緒に乗り越えたことで意気投合。アルテから読み書きや計算を習うようになる。
ウベルティーノ
レオの親方の代からのパトロンをつとめる商人。レオに無理難題を言いつける困った客だが、実は修業時代から見守ってきたレオのことを心配している。
『アルテ』がもっと面白くなる濃厚豆知識
豆知識① 16世紀初頭の美術史事情は?
16世紀初頭のイタリアといえば、当時の芸術の最先端にして最高峰の地! フィレンツェやヴェネツィアを中心に多くの巨匠が活躍していた。
美術史上では「盛期ルネサンス」時代に分類され、初期は世界史や美術の教科書でおなじみのボッチチェリ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロら「フィレンツェ派」と呼ばれる一派が牽引し、その後、ティツィアーノやティントレット、ヴェロネーゼら「ヴェネツィア派」が台頭する。
どちらも優れた芸術を生み出したが、「デッサン重視のフィレンツェ派」「色彩重視のヴェネツィア派」と、作品作りへのアプローチは対照的。天才ミケランジェロも、ティツィアーノの色彩感覚には嫉妬したとか。
豆知識② 『アルテ』の時代に生きた有名画家を紹介!
・ルネサンスを牽引した三大巨匠!
レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519年)
《モナ・リザ》《最後の晩餐》などの名画の作者であると同時に、数学や幾何学、解剖学といった様々な分野でも業績を残す“万能人”。
フィレンツェで生まれ、修行時代〜独立当初までを故郷で過ごし、30歳頃からミラノ、ヴェネツィア、ローマといった土地で活動する。1508年頃にフィレンツェに戻るが、晩年はヴァチカンに滞在。万事に優れていた上にイケメンだったということから、様々な創作物に引っ張りだこの人気者だが、『アルテ』の作品内で「レオナルドもフランスで…ついに逝っちまった」と言及されているため、残念ながらアルテと万能人レオナルドが出会うことはなさそうだ。
ミケランジェロ・ブオナローティ(1475-1564年)
《ピエタ》《ダヴィデ像》で知られる芸術家。自身のことを「彫刻家であって画家ではない」としていたが、システィーナ礼拝堂の天井画《天地創造》や《最後の審判》といった名画も残している、こちらもまた万能の天才。
13歳で画家に弟子入り、14歳で一人前と認められ、16歳のときにはフィレンツェで最盛期を誇っていたメディチ家当主・ロレンツォ・デ・メディチにその腕を見込まれるという、ものすごい出世のスタートダッシュを見せる。
ローマやヴァチカンにも滞在したが、1510年代後半から1530年代半ばまでフィレンツェでメディチ家の礼拝堂を制作していたため、『アルテ』にも登場するかも!?
ラファエロ・サンティ(1483-1520年)
三大巨匠の中では一番若手のラファエロ。天賦の才能に恵まれた彼は11歳で工房に弟子入り、17歳で親方の資格を得て自分の工房を構えるように。
一足先に活躍していたレオナルドやミケランジェロの様式を吸収しながら、独自の作品を生み出し、中でも美しい聖母子像が人気を博し「聖母子の画家」と呼ばれていたそう。
37歳という若さで、レオナルドが死んだ翌年に夭折。
・豊かな色彩表現で新たな表現を切り開いたヴェネツィア派
ジョルジョーネ(1477-1510年)
ヴェネツィア派に大きな影響を与えた巨匠でありながら、真作とされている作品はわずか6点という謎多き画家。ヴェネツィア派の基礎を築いたといわれている親方であるジョバンニ・ヴェッリーニの工房に所属し、ティツィアーノの兄弟子だったそう。
代表作《嵐(テンペスト)》は宗教画なのか神話画なのか未だに解明されておらず、そうしたミステリアスさも魅力のひとつ。
ティツィアーノ・ヴェチェッリオ(1488-1576年)
ミケランジェロを嫉妬させ、ルーベンスに大きな影響を与えた巨匠中の巨匠。官能的な美女を描くのを得意とし、鮮やかな色彩と伸びやかな筆使いで描き出す女神たちのヌード画は「エロい」の一言に尽きる。
しかし当時、キリスト教の教えで肉体の露出は避けるべしとされていたため、「これは神話のワンシーンだから…」と言い訳しながら、ヌード画を書いていたそう。巨匠も男だったということか……!
ティントレット(1518-1594年)
ティツィアーノに師事するも、師へのライバル心をおさえられず決裂。同時代の画家ヴェロネーゼとライバル関係にあったという闘争心の強そうな人物。その作品もダイナミックな構図、勢いのある筆使い、鮮やかな明暗表現とやっぱり主張が強い人っぽい。
豆知識③ アルテの世界がもっと分かる!美術用語解説
工房/徒弟制度
当時の芸術家は「職人」に近い立場だったため、親方が経営する工房に「徒弟」として弟子入りして技術を学び、いずれ自分も親方となることを目指す……というのが徒弟制度。1枚の絵画を描く際、親方が人物など重要な部分を担当し、背景や静物、動物などは弟子が担当するという、現代でいうアニメや漫画のスタジオのような分業制度で仕事が回っていた。
フレスコ画
壁に漆喰を塗り、それが乾くまでの間に絵を描くという壁画の技法。ミケランジェロの《最後の審判》などが有名な作品。保存に適しているが、失敗したらその部分を削り落としてやり直さないといけないため、高い技術力が要求される。
2012年にスペインの教会で83歳の女性がキリストの壁画を修復したところ大きく改変され話題になったが、この壁画もフレスコ画である(写真左から本来の絵画、修復前、修復後)。
フィレンツェ
©大久保圭/NSP 2013
現在はイタリアの1都市として知られるが、中〜近世ではフィレンツェ共和国(後にフィレンツェ公国)と呼ばれる国だった。毛織物業と金融業で栄える裕福な国で、金融業で有力だったメディチ家によって治められていた。ロレンツォ・デ・メディチの時代に最盛期を迎え、ルネサンス文化の中心地となった。しかし、15世紀末頃から徐々に衰退し、芸術の中心地はヴェネツィア、そしてフランスへと移り変わっていった。
ルネサンス
教会やキリスト教中心だったロマネスク、ゴシック美術に対して、自由な人間性を回復し世界をあるがままに表現しようとしたのがルネサンス美術。人間の肉体や人生の喜びを表現した古代ギリシア・ローマの芸術へと回帰しようとする動きから、フランス語で「再生」「復興」を意味する「ルネサンス」と呼ばれるようになった。
芸術だけでなく、思想や音楽、文学でもルネサンス運動が起こった。
西洋絵画のヒエラルキー
アルテが「女の画家では宗教画のような高尚なものは描けない」と言われていたように、西洋絵画にはヒエラルキーがある。高尚とされているものから順に
1/神話や聖書の話、歴史上の事件等を描いた『歴史画』
2/王侯貴族をはじめとした身分の高い人物を描く『肖像画』
3/庶民の生活の様子を描いた『風俗画』
4/山や海、森といった自然の風景を描いた『風景画』
5/動物を描いた『動物画』
6/花や果物、生活用品や道具を描いた『静物画』
となっている。歴史画を描くには、神話や聖書に関する知識、絵画に寓意性を持たせる教養が必要なため、絵画の技量だけではなく知性に優れた画家にしか描けず、最も高尚なものと位置づけられた。
このヒエラルキーは「画家」を「職人」から「芸術家」へと、地位を引き上げるのにも一役買っている。
アルテが生きる16世紀初頭って正確には何年? 時代考証してみた
作品内では「16世紀初頭」としか語られていないが、レオナルド・ダ・ヴィンチら実在の画家の名前が出てきて、10巻から登場するイリーナ(カタリーナ)も本当に存在した人物――となると、正確には何年くらいの話なのか知りたくなるのがオタクのサガ。というわけで考証スタート!
手がかり① レオナルド・ダ・ヴィンチとラファエロの没年
第38話「小さな工房①」でアロルド親方が、この2〜3年でラファエロとレオナルドが死んだと話している。ラファエロとレオナルドの没年は1年違い。ということは、2年前にラファエロが、3年前にレオナルドが死んだということでは? 2人の没年から計算すると、38話時点では1522年である可能性が高い。
手がかり② ジュリオ・デ・メディチが「枢機卿」
第45話「好機の予兆②」に登場するシルヴィオ・パッセリーニとジュリオ・デ・メディチ。この2人も実在の人物だ。作中でジュリオは「枢機卿」とされているが、1523年にはクレメンス7世としてローマ教皇に即位する。そのため45話時点は1523年以前であると推測される。
ちなみにジュリオ・デ・メディチはコペルニクスの研究を支援したり、ミケランジェロにシスティーナ礼拝堂の壁画作成を依頼したりと、芸術・文化の庇護者であった。
手がかり③ カタリーナ王女がアルテと同世代(に見える)
第44話「好機の予兆①」で初登場するイリーナことカタリーナ王女。彼女も実在の人物で、カスティーリャ女王フアナを母に、ハプスブルク家出身の美男子・フィリップ美公を父に持つ。生年は1507年で、44話時点を1522年と仮定すると15歳。16〜17歳のアルテと恋バナで盛り上がっている姿がしっくりとくる年ごろだ。また、1525年には結婚するという史実とも矛盾していない。
以上、3つの手がかりから『アルテ』の舞台となっているのは1522年前後である可能性が高い。そこから計算すると、アルテは1505〜1506年生まれ。同世代の有名人にフランシスコ・ザビエル(1506年生)がいる。
ちなみに1522年といえば、日本は戦国時代(室町時代後期)で、戦国武将・柴田勝家が生まれた年である。
16世紀イタリアって面白い! 同時代を描いたおすすめ漫画
『アルテ』と同時代の、16世紀前後のイタリアを舞台にしたおすすめ漫画がこちら!
天才芸術家の面白エピソードがてんこもり!『神のごときミケランジェロさん』
完結『神のごときミケランジェロさん』 全1巻 みのる / 秋田書店
その天賦の才能から“神のごとき”と称された芸術家ミケランジェロ。しかしその性格は偏屈で頑固で不器用だったそう。美術史に輝かしい名を残す天才芸術家のちょっと残念な一面を、愛すべきエピソードで描き出す!
同じく天才芸術家のラファエロから「同じ時代に生まれて幸運です」と褒められる反面、弟子からは「教皇聖下に口答えしてた時は目を疑いましたよ」と呆れられ、家女中からは「くっさいのなんの」と笑われ、ローマ教皇からは「怖い男よ」と恐れられ――冒頭から容赦なく披露されるミケランジェロのクセの強さよ……! 何人もの彫刻家が匙を投げた粗悪な大理石から全長約5mものダヴィデ像を見事に掘り出したかと思えば、ライバル視するレオナルド・ダ・ヴィンチの名前が出るだけで舌打ちが止まらなくなるミケランジェロ。天才ぶりと人間臭さのバランスが絶妙で、これは好きにならずにいられない!
そのほかにもイエス・キリストをボディービルダーのごとくムッキムキに彫り上げて、
「人を天国か地獄に振り分けるのはこのくらい力強くないとできないでしょう」
と言い放つなど、ミケランジェロ節が炸裂! 天才芸術家が身近な存在に感じられてくるようだ。
伝説の剣をめぐるロマンティックな歴史ファンタジー『花冠のマドンナ』
完結『花冠のマドンナ』 全7巻 さいとうちほ / 小学館
『少女革命ウテナ』(小学館)の作画などで知られるさいとうちほ先生の歴史ファンタジー作品。16世紀イタリアを舞台に、宝剣「エメラルドの獅子」とイタリアの覇権をめぐるスペクタクルドラマが描かれる。
没落貴族の娘レオノーラは、結婚を目の前にして自身が「エメラルドの獅子」の在り処を示すヒントを持つ「花冠のマドンナ」であることを知る。そして、結婚相手がレオノーラではなく「花冠のマドンナ」を求めているということも。そこからレオノーラの運命は一変。「花冠のマドンナ」の絵を描いた万能人レオナルド・ダ・ヴィンチを探す旅に出ることに。そんなレオノーラを待ち受けるのは、心優しいナポリ王国の王子ファルコ、冷徹で野心家な教会軍総司令官チェーザレ・ボルジア、後の“ルネサンス三大巨匠”の1人ラファエロ・サンティなど、個性豊かなイケメンたち。さいとうちほ先生の美麗なタッチで描かれるゴージャスな冒険譚に心ゆくまで酔いしれたくなる。
デビュー以来、『円舞曲は白いドレスで』(小学館)や『もう一人のマリオネット』(小学館)といった少女漫画で人気を博してきたさいとう先生。最近では世界一有名な怪盗アルセーヌ・ルパンの冒険を描いた『VSルパン』(小学館)や、初のBL作品『さいとうちほBLアートワークス 無慈悲な王の仰せのままに』(ビーボーイ編集部)など、活躍の場を広げており、再度注目が高まっている。
アルテが生まれる前のフィレンツェで繰り広げられる壮大な歴史ドラマ『チェーザレ 破壊の創造者』
『チェーザレ 破壊の創造者』 1〜12巻 惣領冬実・原基晶 / 講談社
『花冠のマドンナ』では怜悧な悪役として登場したチェーザレ・ボルジア。こちらの作品では、不思議なカリスマ性を持つ青年貴族として登場する。15世紀末のイタリア・ピサにある良家の子息が通うサピエンツァ大学を舞台に職人の息子アンジェロとの友情、父ロドリーゴを法皇にするための権力争いなど、さまざまなドラマが緻密に描かれる。
チェーザレ・ボルジアといえば、ボルジア家に伝わる毒薬「カンタレラ」で政敵を粛清したり、妹の夫殺害の疑いをかけられたりとダークなイメージの強い人物だ。しかし、本作では大胆で自信家、欲しいものを手に入れるためには方法を選ばないといったところはあるものの、学友のアンジェロと交友を結んだり、レオナルド・ダ・ヴィンチにからかわれて悔しがったりと、年相応の青年らしい表情を見せる。反面、目の前で人が殺されても眉一つ動かさず、腹心のミケロットに死体を川に捨てさせるなど「チェーザレ・ボルジア」らしい一面も描かれる。ヒーローでもなく悪役でもない、複雑怪奇な「人間・チェーザレ」が魅力的すぎて、何度でも読み返したくなってしまう……!
チェーザレの魅力に加えて、膨大な資料をもとした緻密な作画や、登場人物の息遣いが聞こえてきそうな緊迫した政治劇も本作の見どころ。シビアな貴族の世界に飲み込まれ、タイムスリップしたかのような気分が味わえる。
終わりに
文化的にも歴史的にも華やかで興味関心がつきない16世紀イタリア。そんな時代を舞台にした『アルテ』はこれからどんな展開を見せてくれるのでしょう。
歴史作品は、その時代背景を知れば知るほど、面白さが深まっていくもの。
同時代を描いた作品や、さらには世界史や美術史の本にも手を出して、楽しみながら教養を深めてみては?