• 米中対立の先に待つもの グレート・リセットに備えよ

    2000年代頃はまだ経済的に日本の方が強かったので中国との対立といってもどことなくヘラヘラしたようなところがあった気がするが、2010年代の後半あたりから中国がアメリカにも対応しうる大国に成長し、対中関係の緊張感が格段に上がった気がする。
    香港のこととコロナを経て今の日本人の中国に対する警戒感は凄まじく高いが、今後もずっと中国が膨張政策を取ることはないと著者は言う。膨張政策を取らないというか取れなくなっていくようだ。
    文革時代の革命の嵐から改革開放時代の拝金主義まで中国はドラスティックに変化する国でもある。今の習近平政権下の中国の左傾化・保守化も下の世代に渡ればまた右傾化・自由化の揺り戻しが起...続きを読む

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  • 陳浩基『13・67』の魅力とは【文春e-Books】

    試し読みと書評に加えて陳浩基さんのインタビューも載っています(聞き手は現代の台湾や香港に詳しい野嶋剛さん)。あまり長くありませんが著者の考えを知ることができます。

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  • 天国大魔境(10)

    記念の10巻目。
    過去と現在が以前に増して絡み合います。重要なストーリーラインももう少しというところまで来ている気がしますが、サイドストーリーが面白いね(まあサイドだと思っていたら意外と重要だったりするのですが)。次巻も期待。

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  • 天国大魔境(9)

    なんとなく全体像の6〜7割くらいまでは解明されているんだろうか。読み進めてれば嫌でも分かる要素もあれば既刊文を読み返しながら「ここがこう繋がるのか!」と納得する部分もある。同じ作者の前作それ町もそんな感じで読んでいたなぁ。

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  • 平成史―昨日の世界のすべて

    マルクス主義と昭和天皇の死とともに始まった平成という時代という手出しは大局的だけどそれ故のワクワク感を感じましたが、肝心の中身は政治・経済・文化と多岐にわたり、著者の博覧強記ぶりには驚嘆しつつも、僕の頭ではそれぞれの事象の繋がりが見えてこず十全に理解したとは言い難い。
    後半にいくにつれて社会やアカデミアへのルサンチマンっぽくなっていっているのは少々辟易しましたが平成を振り返るには良い本なんじゃないかなとは思います。

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  • 自選 谷川俊太郎詩集

    言わずもがな谷川俊太郎さんの詩集です。現代詩の分野に大きな足跡を残されている方です。
    子供のころ学校で読んだ谷川俊太郎の詩、当時は当時なりの理解の仕方をして、それなりに記憶に残っていたけれど大人になってから読み直すとまた違った目で読める。人生経験を積んだゆえに視野が広くなったのか、あるいは狭くなったのか。
    日本語の音の面白さを活用しながら書かれているなと、思います。

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  • 中国哲学史 諸子百家から朱子学、現代の新儒家まで

    古代の諸子百家や朱子学などなら日本人にも馴染みがあると思うが(近代の胡適もか?)、本書では1949以降の新儒家の思想にも触れられている点が興味深い。一般書でこの部分に触れている書籍ってあまりないのではないかな。
    本書は章分けが非常に多い(21章!)ですが、それだけ中国哲学の「流れ」を重視しているということかと思います。長大な中国史ですから、やはりそれくらいは必要になるのだろうと。それゆえに例えば孔子のような中国思想史上の大人物に割かれるページも必ずしも多くはありません(重要でないという意味ではありません)。
    重要度を増す現代の中国を捉える意味でもぜひ手にとってみてください

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  • 遠い太鼓

    村上春樹はこういう旅行記とかエッセイを読むとなんというか力の抜けた、ちょっと変だけど普通のおじさん(この時はまだおじさんという歳ではないか)という感じがしますね。地中海の暖かな日光を思い浮かべながら読んでましたが、当の村上春樹本人は焦燥感に駆られているような印象。ギャグシーンが割に多く、ワインでも飲みながら読むといいかと思います。

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  • 日本軍ゲリラ 台湾高砂義勇隊

    日本が台湾を統治していた頃、南方の戦線に活用するため台湾原住民を徴用し、フィリピンなどに送り込んでいた。ただ高砂義勇隊のその後についてはちゃんと教えていない。結局これも日本が自国の犯した罪と向き合えていないがために起きた問題だろう。

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  • 興亡の世界史 大日本・満州帝国の遺産

    戦後の日本の保守派と韓国の軍政は満洲国との連続性を持った存在であり、その代表が岸信介と朴正煕だった。日韓の「和解」は共通の満洲体験のもとに可能だったとする論考です。視点はとても面白いが、最後の方はただの韓国政治史っぽくなってて少し冗長でした。まあとはいえこの辺りの日韓の保守派の繋がりは有名な話でもあるし、それが一昨年の安倍晋三の銃撃事件まで繋がっているので、現代の日本を理解する上ではこの辺りの掘り下げはもっと行うべきだろう。

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  • ナショナリズム入門

    「ナショナリズム」は西洋由来の概念で日本語では「民族主義」と訳されることが一般的だが、「民族」は英語で言えばどちらかと言えば「エスニシティ」の方が近い。例えばアメリカ人がオリンピックなどで”USA! USA!”などと連呼するがアメリカのような多民族国家のナショナリズムを「民族主義」という言葉で訳するのは違和感を持たれることかと思う。「ネーション」にしっくり当てはまる日本語は実は無いのだが(個人的には「民族」よりは「国民」のほうが近いと思うが)、日本人はその辺りが無自覚だ。
    本書は「ネーションは透明な空っぽの袋」という表現している箇所があります。まさにその通りで「ナショナリズム」の中身は多種多様...続きを読む

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  • 高校生からの韓国語入門

    韓国語のさわりの部分をさらっと解説していて、なんとなく興味はあるけど、続けられるか分からない/ちゃんとし教科書を買うか迷っている方にはおすすめです。ハングルから基礎単語、基礎文法までまとまっていて「こんな言語なんだな」「こういうところがちょっと難しそうだな」なんて考えながら読めると思うので、迷っている方はぜひ。

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  • 辺境の思想 日本と香港から考える

    日本と香港の知識人の往復書簡です。腰を据えて何かを論じるというかはつらつらと思索を書き連ねていく感じなので難しくも読みにくくもあります。日本も香港も国際的で先進的な場所ですが、同時にそれぞれ中華文明の辺境・西欧文明の辺境という性格も持っています。そして辺境であればこそ文明の中心の古い要素が残るという、基本的にはそういうイメージが全体を貫いています。
    香港が唐代の敦煌につながるようなアクロバティックな思索はカッコいい。何度か読み返してここから私も思索を広げたいなと思います。

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  • 完本 中国再考 領域・民族・文化

    宋代と清末の二つの時代がそれぞれ「中国意識」と「現代中国」の形成に大きな影響力を持っていたことが分かる。中国は統一と崩壊と内乱を繰り返しているだけで発展していないとする見方をとる人も多いが、漢唐の時代と宋では質的に全く異なる「中国」が誕生していたようだ。しかし話はそこで終わらず、宋の後には元や清といった異民族王朝が漢人の居住範囲を遥かに超える大帝国を作り出す。これが現代中国の内部に民族問題を生み出すきっかけになった。
    清末には満蒙回蔵などは放っておいて漢族だけの中国を打ち立てる向きもあったようだが、それは清朝の国土の分裂を意味し、結局新生の中華民国は清朝の版図を基本的には受け継いでいる。民国時...続きを読む

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  • 台湾総督府

    まず日治時期の台湾に関する書籍がこの価格で手に入ることに感謝です。台湾総督府の動きと台湾社会の動きの二つが主なパートですが、日本統治時代の台湾人の政治運動が分かりやすくまとまっていてとても良い。この時代を経験したことが「台湾意識」を生み出し、その後の国民党時代を通じて現代まで持続しているわけで台湾理解には欠かせません。台湾に詳しくなりたい!と思う方は必読です。

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  • 香港危機の700日 全記録

    2019年の香港の大動乱、事態が推移している時は色々なことが起こりすぎてついていけませんでしたが、なるほどこういうことだったのかと納得できます。絵の強さから暴力的な場面ばかり流されていたような気がしますが、当初は平和的で、警察の度が過ぎた暴力によってデモ自体も過激化していった過程がよくわかりました。
    デモに参加した人全員が国外に出るわけもなく、多くの人はこれからも香港で暮らしていくのでしょうが、2019年に根付いたであろうネーションとしての意識は香港に伏流として残り続けるのでしょうか。

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  • 香港 ――アジアのネットワーク都市

    香港を中心にした時の東アジア・東南アジアの繋がり(香港という都市の特質上経済的なものがメインです)はイギリスがシンガポールや香港にやってくる以前からありましたが、イギリス以降この地域により深い意味を持っています。中国の経済発展も香港が無ければ実現しなかったでしょう。2024年現在香港は政治的には沈黙の都市に変貌させられましたが、南シナ海を取り囲む中国南部・台湾・ASEAN諸国の経済圏の重要性が変わることは根本的には無いのでしょうね。

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  • 漫画 台湾二二八事件

    ブックライブで見つけなければこの漫画の存在も知らなかっただろうと思う。
    台湾現代史最大の悲劇228事件を描いた漫画ですが、事件の流れが詳細に、恐ろしい内容ですが、描かれています。
    228事件については台湾政治や歴史関連の書籍で必ず触れられるので、知っている方は多いでしょうが、文章ではなく絵によってその悲劇の詳細を伝えることでよりその恐ろしさが伝わります。

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  • ジョージ・オーウェル 「人間らしさ」への讃歌

    オーウェルは自分の言葉で語っている。
    当時も今も多くの人は自分の言葉で語っていると思ってもその実党派性の塊だったり、結局政治的ポジショニングのことだけを考えている人が多いよなと思う。
    その中でオーウェルは自身の信じる原理原則に従って色々な判断を下していた。

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  • 羊をめぐる冒険

    都会で暮らす平凡なサラリーマンがあることをきっかけになんだかよくわからない茫漠とした世界に入り込んでしまう。そんな基本構図はその後の村上春樹の小説の原型になっているのだろう。全作品を読んでいるわけではないけれど、『羊』がやっぱり一番好きな小説だなと感じる。
    北海道という土地の持つ欺瞞・因縁とそこから見る日本の近代という時代、戦後日本ののっぺりとしたノンポリ気質、などなど、村上春樹がそういったことをどこまで意識しているのかは知らないけれど、読む度にそんなこの小説の持つ政治性について考えさせられる。
    個人的に北海道に舞台を移す下巻からが特に好きだ。札幌に旅行に行きたくなる。

    鼠と主人公の友情、と...続きを読む

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  • 女のいない男たち

    映画ドライブマイカーはこの短編集のうち「ドライブマイカー」を軸にしながら「シェエラザード」「木野」あたりの短編のイメージも用いながら再構成した話になっているのかな。
    男と女、男のプライド(といってもパターナルな男性像ではなく、一見するとリベラルな男性の持つある種のプライド)。男は自分の内側の傷とうまく向き合えず、それを共有する仲間も持てず、妻や友人に本当の意味で自分の弱みをさらけ出せない。そんな男性性を描いてる作品だと思った。

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  • 私の個人主義

    色々と自分のみの処し方や今後について悩んでいたので、励みになった。徹底的に自己本位でやってみて腹の底から納得することが肝要だ。

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  • 冬の日誌/内面からの報告書(新潮文庫)

    オースターファン向けです。
    『孤独の発明』を30代の頃に書いたオースターが歳をとり自分の身体史・精神史を振り返ります。個人的には「冬の日誌」の方が好きかな。
    ここから大作『4321』に繋がるわけですがこちらはまだ未訳…。

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  • 英語の歴史 過去から未来への物語

    英語の勉強をしていると「なんでこんな書き方するんだろう」とか「スペルと発音全然違うじゃん!」とか言いたくなること結構あると思いますが、それも英語が歩んできた歴史を遡れば腑に落ちる部分もあるかと思います。
    後半では現代の英語が国際化しどんな変化が起こったのか、こちらも興味深く読めます。

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  • 夜想曲集

    副題から分かるように全ての短編に音楽の要素が出てきますが、もうひとつの「夕暮れ」はどういうことだろうと思いながら読んでいました。訳者あとがきにも書かれていましたが、音楽以外にももうひとつ男女関係・夫婦関係の危機というモチーフも全ての短編に共通しています。登場人物皆もう若くなく、ある人は結婚した時の状況とはお互いの関係や自分の感情や人生に求めるものが変わっていたり…。こういう人生の盛りを過ぎてそれでも残りの人生を生きていく人々を「夕暮れ」という言葉で表現しているのでしょうかね。思えば『日の名残り』もそのような意味合いでしたか。
    ひとつひとつ心にしんみりとした感覚を残す短編でおすすめです。

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  • 外国語学習の科学 第二言語習得論とは何か

    こういう分野の本を飲むのは初めてだし専門でも無いので、内容の正誤については判断できませんが、第二言語習得という複雑な過程について色々な研究成果を紹介しながら、説明しています。インプットの理解とアウトプットの必要性が第二言語習得において大切ということですが、まあやはり近道はないのだなと思わされました。現在英語と中国語を勉強中ですが、意識するべき点を学べたという意味では読んで良かったです。参考文献も新書とは思えないほど豊富です。

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  • 台湾の半世紀 ――民主化と台湾化の現場

    日本における台湾研究の大会若林先生の自伝的な台湾研究史。若林先生の目から見た台湾の民主化の過程が記されています。同時期に出版された『台湾の歴史』(講談社)がまだの方はそちらから読むことをお勧めします。

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  • 海の帝国 アジアをどう考えるか

    名著だと思います。
    イギリス帝国がアジアにどのような秩序をもたらそうとし、それはどのような帰結を生んだのか。分かりやすく記されています。戦後はアメリカが東アジア〜東南アジア地域に強い影響力を持ち日本を軸に「海のアジア」と呼べる地域を繋げる意図を持っていましたが、基本的な発想はイギリス帝国と大きく変わらないようにも思います。
    濱下武志先生の『香港』などと併せて読むと東アジアと東南アジアが別々の地域などではなく広東省や福建省、香港や台湾を軸に今も密に繋がってることが理解できるのではないかと思います。

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  • 文明の生態史観 増補新版

    「アジア」なる西洋目線の地域区分があまり腑に落ちなかった私には世界をユーラシア大陸中心部の破壊的勢力の影響をモロに受ける地域とその周辺に位置してあまり受けない地域に分けて考える発想は新鮮だが、腑に落ちる感じがした。著者も述べてるようにこれはアウトラインを描いてるので細かなところで同意できない部分もあるが、大枠では正しいような気もする。
    21世紀の現在から見ると第一地域は広がり(EUの東方拡大や台湾韓国の民主化・先進国化)第二地域(ロシアや中国)との対立が深まっているし、文明の生態史観で梅棹が述べたアウトラインはむしろ説得力を増しているような気がする。

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  • 漢文の素養~誰が日本文化をつくったのか?~

    漢文の教養を持つ人々が日本という国家の転換期にどのような影響を与えてきたのか。特に明治期以降の漢文の素養を持ちつつ西洋語にも親しんだ日本知識人が近代以降の日本を成り立たせてる西洋由来の諸概念を適切に漢語に訳していった歴史は面白く読めました。

    #タメになる #カッコいい

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  • 物語 チベットの歴史 天空の仏教国の1400年

    名前は知っててもどんな歴史を歩んできたかあまり知られてないチベット。高校の世界史でも吐蕃とか名前だけサラッと触れられるだけであまり詳しくやりません(少なくとも私の頃はそうでした)。
    前半はチベット人がどのように古代帝国を築き、その後インドから伝来した仏教がどのようにチベットに定着したのか、を新書にしては細かめに説明しています。ただその割に近代以降の歴史が駆け足になってるような印象は受けました。
    貴重なチベット通史の新書ですからこれからも読まれる本になるのではないでしょうか。

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