こんぺいとうさんのレビュー一覧
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2000年代頃はまだ経済的に日本の方が強かったので中国との対立といってもどことなくヘラヘラしたようなところがあった気がするが、2010年代の後半あたりから中国がアメリカにも対応しうる大国に成長し、対中関係の緊張感が格段に上がった気がする。
香港のこととコロナを経て今の日本人の中国に対する警戒感は凄まじく高いが、今後もずっと中国が膨張政策を取ることはないと著者は言う。膨張政策を取らないというか取れなくなっていくようだ。
文革時代の革命の嵐から改革開放時代の拝金主義まで中国はドラスティックに変化する国でもある。今の習近平政権下の中国の左傾化・保守化も下の世代に渡ればまた右傾化・自由化の揺り戻しが起...続きを読む -
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「ナショナリズム」は西洋由来の概念で日本語では「民族主義」と訳されることが一般的だが、「民族」は英語で言えばどちらかと言えば「エスニシティ」の方が近い。例えばアメリカ人がオリンピックなどで”USA! USA!”などと連呼するがアメリカのような多民族国家のナショナリズムを「民族主義」という言葉で訳するのは違和感を持たれることかと思う。「ネーション」にしっくり当てはまる日本語は実は無いのだが(個人的には「民族」よりは「国民」のほうが近いと思うが)、日本人はその辺りが無自覚だ。
本書は「ネーションは透明な空っぽの袋」という表現している箇所があります。まさにその通りで「ナショナリズム」の中身は多種多様...続きを読む -
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宋代と清末の二つの時代がそれぞれ「中国意識」と「現代中国」の形成に大きな影響力を持っていたことが分かる。中国は統一と崩壊と内乱を繰り返しているだけで発展していないとする見方をとる人も多いが、漢唐の時代と宋では質的に全く異なる「中国」が誕生していたようだ。しかし話はそこで終わらず、宋の後には元や清といった異民族王朝が漢人の居住範囲を遥かに超える大帝国を作り出す。これが現代中国の内部に民族問題を生み出すきっかけになった。
清末には満蒙回蔵などは放っておいて漢族だけの中国を打ち立てる向きもあったようだが、それは清朝の国土の分裂を意味し、結局新生の中華民国は清朝の版図を基本的には受け継いでいる。民国時...続きを読む -
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都会で暮らす平凡なサラリーマンがあることをきっかけになんだかよくわからない茫漠とした世界に入り込んでしまう。そんな基本構図はその後の村上春樹の小説の原型になっているのだろう。全作品を読んでいるわけではないけれど、『羊』がやっぱり一番好きな小説だなと感じる。
北海道という土地の持つ欺瞞・因縁とそこから見る日本の近代という時代、戦後日本ののっぺりとしたノンポリ気質、などなど、村上春樹がそういったことをどこまで意識しているのかは知らないけれど、読む度にそんなこの小説の持つ政治性について考えさせられる。
個人的に北海道に舞台を移す下巻からが特に好きだ。札幌に旅行に行きたくなる。
鼠と主人公の友情、と...続きを読む -
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