古代の軍事帝国から政教一致の仏教国家となり、現代は中国の侵攻により受難の歴史を歩んでいるチベットの通史。
チベットの人名や仏教用語が満載で、特に第1章、第2章はすっと頭に入ってくる内容ではなく、正直、読み進めにくかったが、あまりよく理解していなかったチベットの古代から現代までの歩み、そしてチベット仏
...続きを読む教の思想を知ることができ、有意義だった。
古代チベット帝国が仏教思想のフィルターを通した歴史として語り継がれているので、本当かどうかよくわからない話も多かったが、神話のようで面白く感じた。また、仏教国家といっても、内部の権力争いなど、俗っぽい歴史も結構あるなと感じた。
これまで清朝の頃からチベットはいわゆる中国の支配下にあったという認識だったが、本書を読んで、チベット側の「中国とチベットの歴史的な関係は『高僧とそれを後援する施主』の関係であり、主従関係ではない」という主張も十分妥当するのではないかと思った。また、今日まで続く中華人民共和国によるチベットの侵略は、本当に酷いものだと感じた。
本筋からはそれるが、19世紀後半の西欧でキリスト教にかわる普遍宗教として仏教に着目する動きがあり、神智学協会が設立され、ガンディーをはじめ多方面に影響を与えたというのは本書で初めて知り、興味深かった。