遠藤周作のレビュー一覧

  • 彼の生きかた
    遠藤周作は愚直で純粋な者の味方である。日常劇でありそうな筋なのだが、最後のもの言えぬ哀しみにひきこまれ、涙を誘われた。不器用な研究者と幼なじみ、恋の鞘当てに巧みに言葉で押し込んでくる男。不純の俗界に残された側にもやるせなさが漂う。猿に比べたらば、社会のボスの姿を皮肉に描いている。

    代表作ではな...続きを読む
  • 恋愛とは何か 初めて人を愛する日のために
    やや性差別的な表現・性的少数者への攻撃ともとられかねない表現があるものの、その時代にあって、倫理的に恋愛を説こうとした誠実な本だと思った。

    神話のなかに見られる恋愛の、非常にピュアな「この人にさわってみたい」というやわらかな性欲の描写はなんだかとてもうらやましかった。

    男性が感じる性衝動と女性が...続きを読む
  • 王妃マリー・アントワネット(下)
    東宝ミュージカルの原作という事だが、舞台の内容と全然違う
    マルグリッドは最後まで裏稼業の人だった…だから違和感だったんだな。舞台も本もそれぞれに面白い。アントワネットが最後まで気品と優雅を忘れずにいたのは感動的だった

  • 侍

    久々に読み応えのある小説に出会えた。自分の力ではどうにもならぬ運命に流されていく切ない物語。「転ばない」美学
  • 死海のほとり
    この物語は、同じイスラエルの地≪死海のほとり≫を舞台に、時代の異なる二つの物語が対位的に展開される。すなわち、主人公がイエスの足跡をたずねてイスラエルを巡礼する現代の話と、イエス・キリストが伝道のためにパレスチナの地を旅する過去の話が交互に進行する。昭和48年の文学としてはこのような技法は画期的とい...続きを読む
  • 十頁だけ読んでごらんなさい。十頁たって飽いたらこの本を捨てて下さって宜しい。
    10ページなんかあっという間に読んでしまうくらい面白かった。遠藤周作さんは名前しか聞いたことがなく読んだことがなかったが、こんなに面白いエッセイを書く人だとは知らなかった。

    手紙の書き方を教えてくれる本であるが、今でも通用する内容でとても参考になる。
  • イエスの生涯
    2001年、911アメリカ同時多発テロの衝撃の後、イスラム教ユダヤ教キリスト教についての本を少しばかり読んだ。読んだけれどもよくわからないというのが本音である。

    その当時集めた中で今までなぜか読まず最後に残ったのがこの『イエスの生涯』もうすぐクリスマスだが、この本はイエス様が厩で生まれたとは書き始...続きを読む
  • 生き上手 死に上手
    「善魔」という言葉が気になって手にとった。
    死と生に対して、とても考えさせられる本。
    善魔は悪魔よりもタチが悪い。
    善魔とならないよう気をつけないと。

    そして、書かれた時代背景。
    書かれた時代は心療内科が出来始めた時期だったのですね。
  • イエスの生涯
    私が今まで読んだイエス・キリスト関連の本の中で、私が今のところイエス・キリストについて想像していることと一番近いなと思った。
    遠藤周作はキリストという縁遠い洋服を自分の身体に合うように和服に仕立て上げたから、硬派な洋服のキリスト教の人に批判されたりもしていたらしい。
    私も「奇跡の話ってイエスの凄さを...続きを読む
  • 女の一生 二部・サチ子の場合
    2021/6/29
    長崎に行くことがあり、再読。
    前に読んだ時より、コルベ神父の存在を強く感じた。
    ヘンリックに与えた小さな変化は他の誰かにとっての大きな変化。人を少しでも変えるほど影響力を持ったコルベ神父はやっぱりすごい。
    結末はわかっているのに後半読み急いでしまった。
    今回は修平に寄って読んでし...続きを読む
  • キリストの誕生
    映画の「沈黙-サイレンス」を先日観た。
    小説の「イエスの生涯」を先日読んだ。
    その流れで、本書を手に取ることに。

    映画も小説も遠藤氏は、「神の沈黙」という事をテーマにされているんですね。

    ステファノの事件
    エルサレムの会合
    アンティオケの事件

    この流れがキリスト(教になる節目)を誕生させる物語...続きを読む
  • 女の一生 一部・キクの場合
    2018.05.29再読しました。

    前回この作品を読ませていただいた時は、お借りしていた本にもかかわらず、泪が止まらなくてページをぬらしてしまいました。まさに自分にとって人生の教科書になる作品だったので、今回は泣かないように再読を試みましたが…
    ムリでした(TT)

    浦上四番崩れ。
    今からわずか1...続きを読む
  • イエスの生涯
    イエス・キリストは好き嫌いで語れないけど、ナザレのイエスは大好きになった。

    イエスとはイエズア Jeshouahであり、当時、腐るほど沢山の人に付けられていた名前。呼び名も容姿もごくごく平凡だった。
    人間なるが故、大衆が期待する奇跡もない。それゆえ民衆は去り、弟子たちすら保身が勝り立ち去る。ユダす...続きを読む
  • 留学


    三章仕立てですが、前半部を工藤と荒木トマスの類似、後半部を田中とサド侯爵の対比として読みました。

    作中人物たちの葛藤が解消不可能であるだけに、バッドエンドであろうとわかっていながら、それでも救われてほしいという願いを込め、頁をめくりつづけました。「虚無に祈るような」と形容すれば良いのでしょうか...続きを読む
  • 反逆(上)
    秀作!荒木村重が主人公という視点は非常に面白味があった。久し振りに歴史小説でも、これは!という作品だったなー。
  • 侍

    物凄く面白かった。キリスト教との関わりの中から、他の作品と同じように、日本人の本質をことごとく見事にあぶりだした作品だったと感じる。

    30年近く日本で布教活動をしてきたヴァレンテ神父の「日本人はこの世界の中で最も我々の信仰に向かぬ者達です。彼らにとってもし、人間以上のものがあったとしても、それは人...続きを読む
  • 死海のほとり
     この小説は二つの話が交互に出てくる。
     一つは現代(といっても戦後30年後くらいの話だが)においてかつてキリスト教系の大学に通っていたが、信仰を捨てた(あるいは見失った)、同級生だった二人の中年の男がイエス・キリストの足跡を辿る旅をする。
     もう一つは過去のイエス・キリストの生涯が書かれている。
    ...続きを読む
  • 王妃マリー・アントワネット(上)
    史実にある部分とフィクションを織り交ぜて、フランス革命前後を実におもしろく描いています。しかしここで言う「フィクション」とは、虚構とはまた違ったものだと思います。
    史実にある点と点をつなぐ時に、「どうやったらこの点がつながり得るか」というあたりを実にクールに、そして情熱的に考えてできたのがこの作品な...続きを読む
  • 新装版 わたしが・棄てた・女
    森田ミツは、クリスチャンでもないのに神の愛をとことん最後まで実行した。作者はなぜノンクリスチャンの神の愛の行為を描いたのか私は疑問だった。森田ミツの神の愛の理由は、幼い頃から困っている人、悲しんでいる人を単に見ていられないからだと幼少期からのミツの性格について語っている。
    ミツの真の愛徳は、ミツの心...続きを読む
  • 白い人・黄色い人
    最初は、これを書いたのが日本人だというのが、なんだか信じられなかった。
    今まで何冊か読んできて、海外文学と日本文学の違いを分かったような気でいたのだけれど、実の所、そんなもの、ないのかもしれない。
    ただ、「どんな環境で、どう考えてきたか」が、作者の、作品の、根になるだけなのかもしれない。
    「どれほど...続きを読む