遠藤周作のレビュー一覧

  • 秋のカテドラル 遠藤周作初期短篇集
    大好きな遠藤周作先生。
    新作を今読めるとは思わなかったし、出会いも知らず知らずで。
    前半後半のみならず、エッセイだなと思うところもあれば、あれ?フィクションかな?と思ったり。
    短編集なので、とても読みやすかった。
    オチが明確なことがあ〜!って思ったり。
    ん?と考えさせるオチもあったり。
    遠藤周作のユ...続きを読む
  • 沈黙
    あっという間に読み終わった。
    沈黙って、人々が沈黙する話かと思ったけど、神の沈黙の話だったんですね。

    最後のフェレイラとのやりとり・転んだ後のキジローとのやりとりに読む手が止まらなかった。
    ああいう風にキジローと分かり合えるというか、自分の失敗した人生を通して得たものがあるというのは、せめてもの救...続きを読む
  • 悲しみの歌(新潮文庫)
    人が人を裁く資格なんてない。40年経った今も、当然それは変わらない。
    追い求める正義は、果たして誰にとっても正義なのか。自分がその立場に立った時、絶対に起こらないと断言できるのか。
    生きることに付随する悲しみが、あまりに多すぎる。もう苦しまなくていい、もう辛いことはない。誰もが死に向かう中で、死を求...続きを読む
  • 海と毒薬
    有名な作品だけど、初めて読んだ。
    解説がわかりやすかった。実話をもとにしていること、しかし、戦争という異常時の話としてではなく、設定を平常化することで罪責意識について問うているという内容はなるほどと首肯した。
  • 深い河 新装版
    『沈黙』に引き続き遠藤2作品目。(知り合いか)
    現代設定なのと、執筆が後期1990年代のためか読みやすい。沈黙では、キリスト教の拡大先で土着の信仰と交わる、あるいは交わらないことの悲劇がついぞ解決されない。この作品では一つの答えに着地している。
    それはマハトマ・ガンジーの言葉によって語られていた。
    ...続きを読む
  • 【新装版】ほんとうの私を求めて
    自己啓発的な導入で始まった文豪エッセイに若干の戸惑いを抱きつつ、気付けば著者の一生に滑り込んでいた。温かでお茶目で少年のような心を持っていた著者に親しみを感じた。(無礼を承知の上で可愛いなぁとも思った。そう思う理由も本書で語られていてクスリとした)
    私が小学生の頃に亡くなられている。お会いしてみたか...続きを読む
  • 海と毒薬(新潮文庫)
    おばはん、息子に会いたかったろうに。この人と米国人捕虜の死はちょっと辛かった。犬のマスもどうなったのか…
  • イエスの生涯
     私は本書にイエスの天涯孤独を読んだ。
     「汝等は徴と奇蹟を見ざれば信ぜず」(ヨハネ、4・48)とあるが、民衆はおろか、弟子たちですらもイエスの真意には寄り添わず、ひたむきに「愛」を説くイエスに、病を治す奇跡や、ユダヤ民族主義のリーダーとして立ち上がることを期待していた。
     「裏切り者」ユダに、イエ...続きを読む
  • 沈黙
    圧巻。何も言えない。強すぎる。
    描写も構成も絶えず胸糞なのに、なんだろうこの妙な気持ちは、、、。信じるとは、、、本当何が正しいとか、間違えているじゃなくて、いいとか悪いじゃなくて、強いとか弱いじゃなくて、本当一言じゃあ片付けられない
  • 海と毒薬
    戦時中の九州大学医学部で行われた捕虜解剖実験が元となった話。捕虜を解剖しそれに対して罪の意識を持つ勝呂と罪を持たない戸田の対比が描かれている。戦時中という非常事態とはいえ生体解剖を行なってしまう人の思考みたいなのがそれぞれの人物に描かれていて読み応えあった。勝呂のような意識にみんながなぜならないのか...続きを読む
  • 深い河 新装版
    すごく良い
    人は皆、誰にも言えない秘密を抱えている。それゆえに孤独なのだ。深い河に象徴される救いは、秘密を吐露できる安心感があるがゆえで、だとすれば確かに誰の中にも玉ねぎはいるのかもしれない
  • 悲しみの歌(新潮文庫)
    大晦日に読破。良かった。もう一度読みたい。
    人間はやがて死ぬ。早いか遅いか。今していることは、だからなんなん、と自問するとに戸惑うことばかり。どう生きようか。
  • 沈黙
    「主は何故頑なに沈黙を守り続けるのか」
    「踏むがいい。踏むがいい。お前たちに踏まれるために、私は存在しているのだ。」
  • 侍

    弱い人でも強い人でも心挫かれたときに、その辛さを分かち合ってくれる理解者としてのキリスト。そして現世利益を重視する日本人にとっては富めるものよりも貧しいものがあの世で救われる考えや、実存的でないものがあまり合わない。こうした遠藤周作さんの考えるキリスト教や日本文化論を感じられる1冊でした。

    過去作...続きを読む
  • 沈黙
    私のルーツを辿れば生月島の民。
    父方の祖父を遡れば平戸から派遣された奉行所の弾圧武家。
    父方の祖母を遡れば潜伏キリシタンの末裔。

    時代が変わり、その垣根がなくなり、様々な縁の末に生まれてきたのが私。
    私の生命はもしかしたら、ちょっとした事で無かったのかもしれない。
    あるいは先祖が絵を踏んでくれたか...続きを読む
  • 沈黙
    何年か前に映画を観て、そちらもすごくよかった。
    よかったのだけど、あまりパードレに共感できず、やり口がむごいといえどお上側で観てしまったんだよね
    「この国は沼地って言うけど、作り替えてるだけじゃん」とか「主ならこうするだろうと考えることはタブーなのか?って感じだな」とかいう感想を持っていたけど、本を...続きを読む
  • 海と毒薬(新潮文庫)
    和風「少年の日の思い出」ハードモード
    心のなかに罪の意識を抱えながら、変わらぬ日常を送る人々の不気味さが際立つ内容でした。

    冒頭の十数ページでそんな罪を抱えながらも変わらぬ日々を送る人々の恐ろしさを感じられるのも本書の魅力でした。また、印象的なのはp144の戸田の独白。

    『ぼくはあなた達にもきき...続きを読む
  • 新装版 わたしが・棄てた・女
    ミツは愚鈍で教養もなく、美しくもないけれど
    心の優しさ、暖かさ、弱い他者への共感する力を誰にも教わることなく持っていた。
    自分もそれを理想として生きているけれど、そうなりきれることもなく打算やエゴイズムで世渡りしてきたこともあり、その経験、記憶を消し去ることはできない。
    私は神や特定の宗教を信じる者...続きを読む
  • 海と毒薬
    物語の構成がうまく、世界に引き込まれ一気に読んでしまった。特に、第二章の解剖事件に関わった看護婦・戸田の手記は、彼らの思考や生い立ちの描写が濃厚で、没入してしまうほど。(個人的には同じ女性として、看護婦の壮絶な過去には胸を痛めるものがあった)
    事件自体の描写や物語の雰囲気は、想像していた過激さや生々...続きを読む
  • 悲しみの歌(新潮文庫)
    一貫して哀しみの歌がこの小説には流れている。

    奉仕の心が大切なのは間違いないが、それが実際に他人への救いとなることがいかに困難かを知らされる。

    救われることへの諦念に僕は息を止めたくなった。