大江健三郎のレビュー一覧

  • 沖縄ノート
    薩摩の血を持つ北海道人のシャモである当方にとって、この本はまた別の意味を持つ。
    琉球王室の、薩摩の、日本の暴力に常に晒されてきた沖縄が戦後日本の生贄として米国に支配される状況、そのあらゆる意味を、大江氏は日本人である自分を絶えず問い直すことで可能な限り誠実に可視化しようと試みる。沖縄の状況の、なんと...続きを読む
  • 叫び声
    僕が思う良い小説ってのは実は読むのがどれだけ苦しかったかってことに起因しているかもしれない。
    この『叫び声』はまさに僕が思うそれ的な小説だということが出来る。(今回は電子辞書が手放せない位生きていく中で聞くことの無い響きの言葉が頻出していてそういう面でも苦しんだ;; 純文学度が高いってこと?)
    自分...続きを読む
  • 万延元年のフットボール
    ひとりの人間が、それをいってしまうと、他人に殺されるか、自殺するか、気が狂って見るに耐えない反・人間的な怪物になってしまうか、そのいずれかを選ぶしかない、絶対的に本当の事。
  • 持続する志 現代日本のエッセイ
    私、何をやっても、なかなか長続きをしない方ですが、これを読んで何とか「志」を持続させようと思ったんですが。
    これを読むのが「持続出来ませんでした。」(^_^; アハハ…
  • 日本の「私」からの手紙
    文章を書くとき、誰かに何かを伝えようとするとき、私は常に主語を「私」としてから始めたい。これを読んで以来、決めていることだし、他者に対する自分のあり方にも大きく影響していると思う。だから、オーケンは私にとってオールタイムベストなのだ。
  • キルプの軍団
    主人公の少年は骨が曲がっていて、叔父さんの憧れている女性は元サーカス団員の少女の様な一輪車乗り。

    沢山のキルプがいて、もう誰がキルプか分からない。
    ネルの結末を早く知りたくて、ただじっと読み進めてしまった。
  • 万延元年のフットボール
    ブコフで発見して800円。「全然安くなってないじゃん・・」と思って裏見たら定価1500円でやんの。そうか・・そんなに高かったか・・・・再び読み始めました。
  • 静かな生活
    一番最初に読んだ大江健三郎もので、今でも一番好き。静謐な中に主人公の全身全霊をかけた祈りが全編通して流れていて、静かに胸を打たれる。ところどころのグロテスクさ…内臓の裏皮をひっかかれる感じが、またどきっとさせられる。
  • あいまいな日本の私
    大江健三郎がノーベル文学賞の受賞演説で述べたことを纏めたもの。川端康成の受賞演説「美しい日本の私」に対するアイロニカルな視点で捉えているところが面白い
  • 人生の親戚
    一度読んだ本は、よっぽど気に入るか、読んだことを忘れていない限りは再読しないのに、
    なぜかこの本は3回読んでいる。理解している自信はまったくないにもかかわらず(ノーベル賞で一瞬ブームになったとき、「燃え上がる緑の木」などを買い求めた人々はちゃんと読破できたのであろうか)。
    いつも同じシーンでどきっと...続きを読む
  • 私という小説家の作り方
    作者の文学に対する熱意、動機が伝わる。
    「だから私は大江作品を好むのか」と再認識させてくれた書。
    大江作品を敬遠していた人にとっても、この本は大江作品に触れるきっかけとなると思う。
    何故なら彼は「切実に」作品を書いてきた現存する最後の文学者だと思うからだ。
  • 見るまえに跳べ
    10編もの小説を収録する短編集なのに、ハズレが1つもないのは本当に凄い。『死者の奢り』を読んだ時も感じたが、この作家は何と言うか…抜きん出ていて、他とは違う所にいると思う。1994年ノーベル文学賞。
  • われらの時代
    若かりし頃の大江健三郎の作品。
    当時の空気を感じる学生達の激しい動きの裏にある湿った日本の若者の心が、読み手の呼吸を奪う。
  • 沖縄ノート
    本書はまさに沖縄返還直前の1970年〜71年に書かれたものであるから、現代にあてはめて考えるのは無理だと思うし、実際こういった解釈で世の中に対峙するのは逆に危険な訳だが、知っててばちの当たるもんでもないけど、知っていないとばちが当たるかもしれん。過去に対して何を言う権利も無く、ただ与えられる言葉を理...続きを読む
  • 洪水はわが魂に及び(上)
    大江作品の中でも読みやすい。主人公、勇魚が名乗ってる「樹木と鯨の代理人」にときめいた。なんかロマンチック!
  • 同時代ゲーム
    難物です。本人が全部書いてまた第一章を書き直したというくらいなので、最初から生真面目に読むとそこでもう挫折しそうです(笑)。けれどこれは、全部読み終えたときのその独創性、重量感たるや類をみないものです。初期大江作品が必ずといっていいほど書評にあがるのに対して、この頃以後はあまり語られませんが、万延元...続きを読む
  • 性的人間
    ものすごく面白かった!
    特にこの中に収録されてる「セブンティーン」が戦慄ものに面白い!
    若者が、若さ故に一見理路整然とした思想にはまり込み、一途だからこそ恐ろしい行動に走ろうという、
    その、「暴走」っぷりがものすごくよく描かれている。
    個人的には続編をすごく読んでみたいけれども、ほとんど封印状態にな...続きを読む
  • 「雨の木」を聴く女たち
    「「雨の木」の首吊り男」まで。

    「頭のいい「雨の木」」
     これが連作短篇集の中ではもっとも難解であり、だからなんだといふ気がしなくもない。ハワイの施設が、じつは精神病患者の叛乱にあってゐたといふ話。

    「「雨の木」を聴く女たち」
     アル中の高安カッチャンとペニーの関係を『活火山の下で』のマルカム・...続きを読む
  • 死者の奢り・飼育
    芥川賞受賞の表題作「飼育」を含む初期の短編をまとめたもの。

    ほかにもノーベル賞も受賞。受賞理由はからっきし意味不明ですが、ネットに落ちているNHKの方の解説を読むと、どうやら現代日本社会を描いたから、ということ!? よくわからん。

    ただ、本作を読んでありありと感じたのは、偽善へのシニカルな目線・...続きを読む
  • 静かな生活
    小学校のときに障害児と関わっていて兄弟のように仲が良かったからか、大江健三郎の実体験から書かれた作品は、読んでいて親密さを覚えることが多い。この作品もそのひとつである。イーヨーのことを何か不具合のあるように描くこともなければ、特別清い存在のように描くこともない、その距離感が心地よく感じる。