大江健三郎のレビュー一覧

  • 大江健三郎
    昔々ヒロシマノートを読んだことがあるはず
    と思っているのですが、ほとんど覚えていません。
    なので、感覚としては初めての大江健三郎氏です。
    「人生の親戚」「治療塔」の長編2作が非常によかった
    と思います。
    特に人生の親戚での中心人物のまり恵の子ども達に
    おこった悲劇に関しての描写とその悲劇と向かう
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  • 日常生活の冒険
    「おれはいまセックスとは何か? ということを考えているんだよ。おれはひとつのテーマについて永いあいだ瞑想するのがすきなんだ。それで三時間おれはセックスの問題について瞑想していたんだよ。考えてみろよ、昔はモラリストとかフィロソファーとかがいて、基本的な命題をじっと徹底的に自分の頭で追求したんだ。そして...続きを読む
  • 叫び声
    うわぁぁぁーーーーーっ!
    確かに、しっかりと、その「叫び声」を聞いた・・・。

    「人間みなが遅すぎる救助をまちこがれている恐怖の時代には、誰かひとり遥かな救いをもとめて叫び声をあげる時、それを聞く者はみな、その叫び声が自分自身の声でなかったかと、わが耳を疑う」(ジャン=ポール・サルトル)

    生臭さと...続きを読む
  • 取り替え子
    高校時代からの親友であり映画監督の塙吾良がビルから投身した。古義人のもとには彼の声が吹き込んであるカセットテープとそれを再生するための「田亀」があった。「田亀」をとおして吾良と会話する古義人。その姿におびえる妻の千樫と息子のアカリ。

    「田亀」と距離をおくためベルリンに赴く古義人。
    週刊誌では吾良の...続きを読む
  • 私という小説家の作り方
    想像力とは、「究極のリアリティー…すなわち、われわれが神と呼ぶところのものと接触するための、人間の心理にとって知られている最高の方法である」
    「世界は、ひとつにまとめる想像力の力を必要とする。それをもたらしてくれる最良のもの二つが、詩と宗教なのだ。科学はあたえるけれど、破壊しもする。」詩というより自...続きを読む
  • 大江健三郎自選短篇
    大江健三郎という小説家がどのような経緯で現在に至っているかがわかる貴重な一冊。初期の名作『空の怪物アグイー』や中期の名作『レインツリー』シリーズ、『静かな生活』上げていくときりがない。

    満足感でいっぱいです。

    11月8日追記
    まさか『王様のブランチ』で紹介されるなんて思いもしなかった。大江さんが...続きを読む
  • 沖縄ノート
    復帰40周年記念読書。
    「沖縄」と「本土」の埋まることのない溝を認識しつつ、かつ自身が「本土」側に属していることを痛感しつつも、沖縄のふところに深く入り込んで、本土の人間なら見て見ぬふりをしたいであろう問題を真正面から見つめ続ける著者に脱帽。

    本書の中で大江は繰り返し問う、「日本人とは何か、こ...続きを読む
  • 大江健三郎 作家自身を語る
    初読。作品の時間軸に沿ってインタビューが構成されているが、作品そのものよりタイトル通り作家・大江健三郎さんについて知ることができる。話がどんどん多方面に伸びていき、大江さんの人生をたどることができる。いろんな箇所で涙をこらえながら読んだ。もう一度、すべての作品を最初から順番に読み直したいと切実に思っ...続きを読む
  • 懐かしい年への手紙
     「万延元年のフットボール」に並ぶ、大江健三郎の代表作。自身を下敷きにしたとおぼしきKちゃんとギー兄さんを中心に展開される話に、繰り返されるダンテ、イェーツの引用とズレを伴う構成の繰り返しが波紋のような奥行きを与えている。傍点、太字、囲い文字、難読漢字、英文、伊文から旧かなに至るまで、視覚的にも効果...続きを読む
  • キルプの軍団
    あまり言及されることがないがとてもおもしろい。特に文学から文学をつくるという大江的手法が明示的に採られている。
  • 大江健三郎 作家自身を語る
    インタビューの内容を、とても分かりやすい文体で書いてあるので、大江健三郎作品自体はとっつきにくいと思っている方にもオススメ。
    「この作品はこんな意図だったんだ」だとか、いろいろな発見があると思います。

    インタビューを実録したDVDも数年前に発売していますが、インタビュー自体はそのときのもの+直近の...続きを読む
  • 新しい文学のために
    非常に為になったと思う。じっくりと、非常に時間をかけて読み取って多くのことを読み取った。
    これから自分が一人の読み手/書き手としてどのような姿勢を持つべきなのか、どのようなものに着手するべきなのか、それを具体的に明示してくれていた。しかも、その内容が、示し方が、非常に納得の行くものであった。論理的に...続きを読む
  • 個人的な体験
    初大江は『死者の奢り・飼育』。そこで素晴らしい文章とはじめて出逢うも、著者の代表作というべき『万延元年のフットボール』にはあまり馴染めず、自分には合わない作家なのかと思ったが、ノーベル文学賞作家を簡単に諦めてしまうのも厭なので、もう1作、と思い本作をチョイス。そうしたら見事というべきか、これはほんと...続きを読む
  • 取り替え子
    文体もそれほど込み入っておらず読みやすい。それにしても本多勝一(らしき人物)の攻撃の苛烈さ。後半はやはり大江文学らしいカーニバル性。
  • 同時代ゲーム
     ある集落を追放された人々が、四国の山奥に小国家を創造した。外来者どうしの両親から生まれた「僕」が、双生児の妹へと向けて書簡の形式でしたためた、《村=国家=小宇宙》の神話と歴史のすべて。
     どの語がどの語にかかっているのかわかりづらい、英文を逐語訳したような独特の文章で綴られる、現代におけるあまたの...続きを読む
  • 空の怪物アグイー
    「敬老週間」なんかは別として、「アグイー」なんかはもう少し読み込みたいと思っているのだけど、サルトル的空気から大江健三郎自身(というのはある種私の偏見かもしれないけれど)の、どんどんずれていっちゃうような、深刻なことを語りながらも同時に滑稽である状況を描いてしまう、彼の常に一瞬前を自省せずにはいられ...続きを読む
  • 懐かしい年への手紙
    年代はめちゃめちゃに読み進めている状態なのだけれど、「木から下りん人・隠遁者ギー」と、『燃え上がる…』の括弧付き「ギー兄さん」は知っていても、ギー兄さんとは誰か、というところがすっぱぬけていたので、やっと少し穴が埋まったような気がする、と同時に、ようやく最近読んだばかりの『ドン・キホーテ』前編によっ...続きを読む
  • 性的人間
    生物が元来脈々と受け継いできたという意味で大いなる他力である性に自己実存を委ねることを、全て肯定できるかというと、突っかかるところがある
  • みずから我が涙をぬぐいたまう日
    大江健三郎「みずから我が涙をぬぐいたまう日」

    なぜ今までこの作品を未読だったのか非常に悔やまれる!
    やはりこの時期の大江作品は神憑っている。
    物語の進行上かなり重大な新事実を、
    さも当たり前の事ででもあるかのように
    関係詞節内にさらっと入れる手法は、
    明らかにフォークナー、マルケスからの影響だろう...続きを読む
  • 個人的な体験
    とっつきにくいが、我慢して読み進めていくとどんどん引き込まれた。

    「なにをさがしているの?沢蟹をさがしまわる熊みたいな格好で」
    という部分で、その表現力にうならされた。