熊谷達也のレビュー一覧

  • 調律師
    マタギ同様、調律師という全く身近に存在しない職種の人の日常や感情を疑似体感でき楽しめた。
    また、愛する人との死別、共感覚、震災といったキーワードが物語を繋ぎ、主人公や読者の心をまさに調律する柱として存在し、切なくも力強く胸に響く作品に仕上がっている。
  • 氷結の森
    場所や時代や獲物が変わっても、山で生きるマタギの生命力、その凄まじさはだけは絶対的に変わらない!
    強すぎ!カッコよすぎ!
  • 相剋の森
    内容
    「山は半分殺してちょうどいい―」現代の狩人であるマタギを取材していた編集者・美佐子は動物写真家の吉本から教えられたその言葉に衝撃を受ける。山を殺すとは何を意味するのか?人間はなぜ他の生き物を殺すのか?果たして自然との真の共生とは可能なのか―
  • 群青に沈め
    特攻隊伏龍に属する少年兵から見た戦争。素直な気持ちで書かれていて、終戦までの死と隣り合わせの中、死を受け入れていく気持ち、流されながらも、ぼんやりとした生きたい気持ち。こんな事を若い彼らに背負わせていた戦争とは?無駄に亡くなっていった人達にはご冥福を祈りたい。先人があっての今なんだなと思えた。
  • リアスの子
    ベタな青春ものと言ってしまえばそれまでだが、震災で崩壊した美しい町を懐かしみ、これから立ち上がっていく若い世代を励ましていく話として大変良かった。
    読後感が清々しく好きな一冊です。
  • 相剋の森
    読みたいのに、美佐子がどうしても好きになれずに進まなかった。でも、美佐子と一緒に学んでいった。理屈じゃない。この文を読んで理解する話じゃない。一冊読む中で、一緒に理解していけるものなのだと思う。良書だった
  • 山背郷
    短編集。昭和20年代の東北を舞台に、山だ海だの自然の中で生きる人々の営為。家族愛を描く作品多し。

    抒情的な少年時代の回想「メリイ」
    ホラー味の「モウレン船」
    直球勝負でイイ話の「川崎船」

    自分が読んだ作家との比較で言うと、ジャック・ロンドンを思い出す(特に「旅マタギ」とか)。
  • 山背郷
    東北を舞台にした珠玉の作品集。どの短編も日々の暮らしを必死に生き抜こうとする人々への筆者の深い愛情を感じさせる。
  • 調律師
    かつて、プロのピアニストとして活躍しながら、事故により妻を亡くし、今はピアノの調律師として生きる主人公・鳴瀬 玲司。

    彼は、共感覚の持ち主であった。
    共感覚とは、例えば、音に色を感じる「色聴」や、音に匂いを感じる「嗅聴」など。
    事故に遭う前は「色聴」であったが、事故後、亡くなった妻と同じ「嗅聴」と...続きを読む
  • 山背郷
    熊谷達也ぽさ100%のナイスな短編集。熊撃ちと船乗りとオオカミの話が多くて、どれもいちいち素晴らしい。一番好きなのは、メリイの話で、飼い犬との触れ合いの描写はとても良かった。
  • 漂泊の牙
    内容(「BOOK」データベースより)
    雪深い東北の山奥で、主婦が野犬とおぼしき野獣に喰い殺されるという凄惨な事件が起きた。現場付近では、絶滅したはずのオオカミを目撃したという噂が流れる。果たして「犯人」は生きのびたニホンオオカミなのか?やがて、次次と血に飢えた謎の獣による犠牲者が…。愛妻を殺された動...続きを読む
  • 相剋の森
    邂逅の森から読んでしまったが、こちらがマタギ3部作の1つ目。

    時代は現代に移り、現代ならではの問題が主題。記者である美佐子の取材シーンや、山のシーンはたっぷりとしていて満足。ただ、女性の書き込みは浅いよね、と女性として思う。

    なんにせよ、面白かった。マタギの郷にいきたいという欲が、また強くなった...続きを読む
  • 冒険の日々(小学館文庫)
    「漂泊の牙」で圧倒的な緊張感と力感を見せた熊谷さんなのですが、この作品では(妖怪たちが出る事をのぞけば)重松清的な少年物語です。
    充分に読ませてもらえるのですが、重松さんと比較すると、何かが、多分ノスタルジーの表現がほんの少し足りない感じがします。
    最初は動物物でスタートし、その時はジャンルの特...続きを読む
  • 調律師
    初読みの作家さん。主人公の特殊な力で浮かび上がる演奏者の心。とても面白かった。
    あらすじ(背表紙より)
    交通事故で妻を亡くし、自身も大けがを負った結果、音を聴くと香りを感じるという共感覚「嗅聴」を得た鳴瀬玲司は、ピアノの調律師を生業としている。さまざまな問題を抱えたピアノ、あるいはその持ち主と日々接...続きを読む
  • 希望の海 仙河海叙景
    副題「仙河海叙景(せんがうみ・じょけい)」と付いているのに後で気が付いたけど,ここでフリガナを付けておいて,迷った時は表紙を見させようということだろう~希は実業団で駅伝の選手をしていたが,怪我で引退し,生まれて出て行って小3から高校まで過ごした仙河海の南部で戻ってきたが,35才の今も朝のジョギングは...続きを読む
  • 稲穂の海
    郷土の作家ですが、残念ながら今まで読んだことがありませんでした。初めて読んでみたのですが、当に郷土を舞台にした高度成長時代の頃の昭和の時代の短編が8つ。いわゆるズーズー弁を喋る登場人物たちや馴染みの地名に、そこに自分がいるような臨場感が湧き起こりぐいぐい読み進むことができました。良く考えてみると話し...続きを読む
  • 希望の海 仙河海叙景
    ラッツォクの灯、まさかそういうことだとは思わなかった。2人の子を持つ親として、高校生の主人公、翔平の、足元が崩れ落ちそうな心細さを思うと涙が止まらない。
    震災は受けてみないとわからない。東日本大震災が起きた時は、日々、ニュースに心を痛めたけど、実際、自分の故郷が大地震に見舞われて、見慣れた風景が一変...続きを読む
  • 海峡の鎮魂歌
    大先輩のおすすめ本。普段ならあまり手に取らないタイプの本だったが、これは読んでよかった。
    函館の潜水夫、泊敬介を主人公に、函館の大火から洞爺丸沈没事故まで、運命に翻弄される家族が描かれている。終盤いろいろなことが繋がっていき、過去のしがらみや苦しみが解消されていくのに、救われる。過去に踏み出すことが...続きを読む
  • 希望の海 仙河海叙景
    仙河海の人間模様。
    ラッツォクの灯には息を呑んだ。こんな家族のすべて亡くしたような例は実際にもある事を想像すると。
  • 希望の海 仙河海叙景
    1948年宮城県生まれ、気仙沼市の中学校で教員をされて、作家に、現在は仙台市に在住です。今回、気仙沼市をモデルにした仙河海(せんがうみ)市における様々な家族の生き方を描いた作品を出されました。2016.3発行「仙河海叙景」です。短編・連作9話、1~7話が震災・津波前、8~9話が震災・津波後の話です。...続きを読む