竹本健治のレビュー一覧

  • 涙香迷宮
    『狂狂』に続き、竹本作品七作目。本格ミステリ大賞受賞作。ミステリィとしても勿論面白いのだが、それにも増して、いろは歌の数々に圧倒された…こんなにたくさん作れるものなのかと!?
    その中でもある二首(一首?)には驚愕せざるを得ない。まさに超絶技巧。日本語の無限の可能性を感じる、そんな一作です。星四つ半。
  • 新装版 匣の中の失楽
    これは、ストレートなミステリーではない。
    ミステリーとしてではなく、一種の文学として読むべきだ。

    溢れる蘊蓄、幻想的な世界観、メタ的趣向にアンチミステリー。
    と、日本三大奇書のエッセンスを凝縮したような作品である。

    冒頭から不確定性原理を全面に押し出していて、入れ子細工になった構造も美しい。
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  • これはミステリではない
    20年くらい前にミステリーランドで「闇のなかの赤い馬」を読み、なんだか印象に残る作品で続きが出ないかなと思っていたら、10年くらい前に「汎虚学研究会」が出て更に続きが気になりすぎ、遂に「これはミステリではない」を読んで、まだ続きが読みたい作品。私はとても好き。
  • 狐火の辻
    最初は不気味かつ断続的な話が続いて少し混乱するが、それが段々と結び付き、最後に筋が通るのが面白かった。
    初めは心霊やオカルトかと思った部分が伏線になっているのも驚きがある。
  • 涙香迷宮
    ★5 暗号ミステリーの名作! 明治の鬼才作家、黒岩涙香が残した「いろは歌」の暗号を解け #涙香迷宮

    ■あらすじ
    囲碁の世界では有名な老舗旅館で殺人事件が発生した。主人公であるトップ囲碁棋士の智久は、刑事とともに事件解決を図っていく。
    一方、明治時代の作家、翻訳家である黒岩涙香の山荘が発見される。そ...続きを読む
  • 再生 角川ホラー文庫ベストセレクション
    表題作の『再生』、過去に読んだことある作品だけどやっぱり何度読んでも大好き。
    最愛の妻の首なし死体と共に暮らすって構図が恐ろしくてグロテスクだけど美しすぎるよね……好き……
    結末の救われなさもほんとすき……

    他の作品もどれも面白くてハズレなし。流石!って感じでした。
    井上雅彦の『よけいなものが』と...続きを読む
  • 再生 角川ホラー文庫ベストセレクション
    色々な作家さんの作品が読めるホラーアンソロジー。
    怖かった…!
    特に今邑彩さんの「鳥の巣」、小池真理子さんの「ゾフィーの手袋」は、後半にかけて恐怖がヒタヒタと迫り来てゾッとした。
    岩井志麻子さんの「依って件の如し」は、怖さよりも文章のリズム感と情景描写が美しすぎて感動させられた。
    もっとこの人の作品...続きを読む
  • 新装版 匣の中の失楽
    素直に読めば奇数章の物語が「現実」で、所謂解決編が欠けている偶数章の物語が、ナイルズの書いた小説になるのだと思う。そう読まなくったって良いのだけれど。で、そんな風に読めば、意外なくらい(アンチでない)ミステリとして、かっちりとまとまっている。発表当時ならともかく、今となってはそうしたところや全然読み...続きを読む
  • 恐怖 角川ホラー文庫ベストセレクション
    角川ホラー文庫ベストセレクション第二弾。全部読んだことがあるので再読かな。しかし何度読もうと、どれもこれも文句なしの名作です。
    何度読んでも恐ろしいのは坂東眞砂子「正月女」です。どこからどこまで全部怖い。柱時計の音が怖い。登場する人たちもみんな怖い。可哀想に思えるヒロインのキャラも、実はなかなかの恐...続きを読む
  • 再生 角川ホラー文庫ベストセレクション
    角川ホラー文庫ベストセレクション。というだけのことがあって、本当にもうどれをとっても大傑作のホラーアンソロジーです。お気に入りがどれかだなんて選べません。もう全部大好きすぎる作品でした。
    ほぼ既読だったので、雰囲気に浸りながらじっくりと再読。福澤徹三「五月の陥穽」だけ未読だったかな。これ、凄まじく怖...続きを読む
  • 新装版 匣の中の失楽
    2年前に新装版講談社文庫が再発されて、特別短編「匳」が収録されたので購入して再読。
    たしかン十年前に講談社文庫で「虚無への供物」に続く第四の奇書という謳い文句で紹介され、手にとって寒い夜に読んだのが初見だった。
    始まりからして霧のかかった夜に一人歩きしている大学生のシーンだったんで、あまり期待はして...続きを読む
  • 閉じ箱
    確か絶版になっていた本の復刊本。作者さんの多彩な短編が楽しめる本作。読み味が異なる作品ばかりですが、気付けば幻想的で異常な世界にいたような不条理さや恐怖が楽しめました。中でも『恐怖』はコンパクトにまとまっていながら大きな衝撃と恐怖があり、鳥肌が止まりませんでした。
  • 新装版 匣の中の失楽
    『虚無への供物』の後に読むとほんとに工夫されてるなと思う。別の角度から再表現してるというか。虚無への供物もそうだけれど、酩酊感で作中に気を取られているところに終盤のラッシュがあって、正気に戻って現実世界に立ち返ると、現実にいながらにして作中に巻き込まれてる。哲学の思考実験とか、不確定性原理とかスリッ...続きを読む
  • しあわせな死の桜
    書き下ろし「トリック芸者 いなか・の・じけん篇」含む、12の短篇。
    解説が詳しくてよい。

    <収録作>
    夢の街
    彼ら
    依存のお茶会
    妖かしと碁を打つ話
    羊の王
    瑠璃と紅玉の女王
    明かりの消えた部屋で
    ブラッディ・マリーの謎
    妙子、消沈す。
    トリック芸者 いなか・の・じけん篇
    漂流カーペット
    しあわせ...続きを読む
  • 新装版 匣の中の失楽
    いやー、奇書。奇書だ奇書だとは聞いていたが、やっぱり奇書だった。22歳の青年がこれを書いたって?うそでしょー!?

    さしずめ現代に蘇る黒死館殺人事件ってとこか。全編を通じて醸し出されるペダンティックで奇妙な空気は、僕のようなある種の人間を熱狂させる。
    次から次へと姿を見せる謎、そして謎解き→その謎解...続きを読む
  • 新装版 匣の中の失楽
    この本を読んで、最初『読解力が足りないんじゃないか?』そう思った。
    しかしもう、そう思った段階で作者の罠にはまっていたのだけど(笑)。

    読んでいくうちに、幾重にもかこまれた迷宮に落ちていった。
    そして、真実とかそういうものがあまし意味をなさなくなっていく。
    仲間の殺人を信じ、それを暴こうという...続きを読む
  • 新装版 匣の中の失楽
    五年以上積読だったのを、ようやく読む。
    「虚無への失楽」と「死霊」に大きく影響されているなと思いながら読んでいたが、解説を読むと確かに「ドグラ・マグラ」や「黒死舘」からの影響も。

    ミステリはとくに、登場人物が魅力的かどうかが重要視されるが、
    本作では人物の描きわけができていない、というより、...続きを読む
  • 新装版 匣の中の失楽
    前に双葉文庫版を読んでいるから、一応再読に入るのかしら?やはり凄い作品だ!一体どちらが現実で、どちらが作中作なのか全くワカラナイ…この終わり方では彼ら自体もしかしたら存在などしていなかったのでは?・・と、思ったり思わなかったり。とにかく頭の中がパニックになること必須。これを機にたくさんの人に読まれま...続きを読む
  • 新装版 匣の中の失楽
    ページの多い本だったけど、集中して面白く読めた。
    勿論、古い作品で謎な部分も多いので、全てを読みつくしたのではないことは
    わかっているが、それでもやはり面白い。
  • トランプ殺人事件
    日本では数少ない暗号小説の傑作。一冊の小説の中にブリッジの用語辞典がまるまる入っているという型破りなスタイルは、すれっからしのミステリ・ファンを心地よく挑発してくる。そして魅力的な謎が見事に解き明かされた後で、なお残る深い余韻。
    「匣の中の失楽」でデビューした竹本健治という特異な作家にとって、本作を...続きを読む