やはり、私の二つ目の胃袋を鷲掴みにしてくれただけはある
確実に人気が出てきたな
しかし、漫画読みとしては嬉しい反面、自分だけがこの『忘却のサチコ』の面白さを把握している、そんな優越感が薄れてしまうようで少々、複雑
けど、これからも全力で応援したいので、感想もちゃんと書く、阿部先生の力に少しでもなれる
...続きを読むように
改めて、この作品を面白い、と感じられたのは阿部先生の画力が向上しているのもある。先巻よりも読みやすくなっている気がした
一箇所の街の飲食店を制覇するのでなく、文学誌の編集者、この職業を巧く使い、美味しいモノが多い地を巡るトコも、『忘却のサチコ』の忘れてならない魅力に違いない
阿部先生が現地取材をしっかりしているのは、登場する店や食事の描写を見れば、それなりに目の肥えた漫画読み奈良、すぐに察せるだろう
今回は、勤務地だけでなく、大阪と香川編が収録されている。その二つの聖地でも、サチコの人生に小さくない影響を及ぼす、笑ってしまいつつも、グイグイ引き込まれる、薄っぺらくない人間ドラマが展開される。大阪編、香川編、どちらも熱いし、芯がしっかりあるシリーズだが、うどん派の私としては、やはり、名店巡りをする香川編のインパクトが強かった。しかし、鬱陶しさがあるからこそ優しさが染み込んでくる大阪の人々のソウルも感じられる大阪編も負けていないので、あしからず
また、タイトルにある通り、サチコが失恋の痛手を忘れるために、美味い食事を食べる、その基本的な設定もしっかり活かされている、この2巻でも
誰でも経験のある、美食によるトランス状態、それを何度も経験しちゃっているサチコは大丈夫かな、と心配になりつつも、まぁ、本人が毎度、満足できているならイイのか、そんな気持ちにもなる
美味い食べ物が、自分の弱さを忘れさせてくれる可能性を高めようとする、サチコの若干、一般的な食欲から逸れた、激しい情熱と、それから生じる言動も、食系の漫画らしさかつ人間らしさがあり、ますます、好い印象を抱ける
加えて、至福の忘却により、サチコが今までの自分を形成してきた何かを剥がし、新たな自分になっていく点も、読み手の今後への期待を高めてくれる
忘却、この行為は案外、難しいし、苦痛も齎す。忘れる為には、何を忘れるべきか、を自分で把握するべく、辛い記憶を呼び起こさねばならない。サチコは今後も、それに耐えられるだろうか。もしくは、無理に忘れようとするなんて愚かだった、と気付き、弱かった己を潔く受け入れ、単純な気持ち、「美味い物を食べたいから食べる」、言わば、食事の本質と初心に立ち返るのか、未だに行方が分からぬ俊吾の真意も含め、実に気になる
一日も早く、ドラマ化して欲しいものだ。サチコを演じて欲しい女優が特にいるわけじゃないが、可愛いだけのアイドルは起用しないでくれ、ってのが本音だな。彼女の、不器用にでも前向きに生きていこうとする、ガムシャラさを表現できる実力の持ち主が、無名の新人女優の中にいる事を期待する
この2巻でお勧めの話は、第15歩「追いかけて!チャーハン」だ。炒飯、これほど、シンプル・イズ・ザベスト、その言葉の意味を的確に捉えている料理もなかろう。しかも、サチコの大盛りの食いっぷりがまた、見ていて気持ちが良い。まぁ、この話を推す理由には、セクシーな入浴シーンがあるからでもあるが・・・・・・改めて、サチコのヒロインらしいスタイルの良さが判る回でもあった
この台詞を引用に選んだのは、説得力があるからだ。大御所、そう自然と呼ばれるまで、真っ直ぐじゃない道も、平らじゃない道も、自分が歩きたくない道も、一つの目的に辿り着くために、自分の足で黙々と歩き続けていた男でなければ、この台詞は言えまい。そして、この後の、思わず、「俺の感心と尊敬を返せや!!」と、ブッ叩きたくなる展開も選んだ要因だ。まぁ、人それぞれだ、自分を戒め、見つめ直す手段は