「そしてわたしは一人になった」の続編。
「再婚生活」という主題だけれど、実際は副題の「うつ闘病日記」の内容が濃いエッセイだった。
かなり赤裸々に描かれているので、冒頭に筆者が書いている通り、精神状態がよくない人は要注意。引っ張られてしまうかも。
わたし自身も7年ほど前にうつで退職した上、仕事でカウ
...続きを読むンセリングにも関わっているので身近な話題。
よく言われることだけど、うつになりやすい人の特徴として、真面目に考えすぎる、人に頼るのが苦手というものがある。
エッセイを読むと筆者の真面目さ、思慮深さや観察力が鋭いからこそ傷ついてしまう苦しみを感じる。
また完璧主義で成果が出ない時間を待つことができない性質も、うつになりやすい人の特徴なのかもしれない。これも筆者に共感した。
メンタルヘルスケアは世間的に身近になってきてるし、個人的にはもっと身近に気軽になって欲しいと思うけれど、目に見えないし必要な人こそまだハードルが高い行動だと思う。
身近な人に頼る練習や、作中の最後にも出てくるように、日記を書いて客観視する、悪いことだけを考えない、というのはぜひ実践したい。
また自分の身近な愛する人の心の健康にも目を向けたいし、必要な時に手を差し伸べて助けたいと思った。
それが自立というものだ。たしかに。
■引用
「手に入っているものが多ければ多いほど、人の気持ちは安定するのだと、私も昔思っていた。だからこそ、前の離婚直後、通帳の残高が赤字だったところから始めて約九年、誰かに何かを 貰うんじゃなくて、努力をして、私が私にコツコツと恵んできたのだ」
「反感を買うかもしれないが、恵まれているんじゃなくて、私が私に多くのものを恵んできたのだ」
「ほんとは自分の生活が王子に浸食されている部分があって、そのことに怒っていることを私は認めたくなかった。王子はいつだって優しい夫なので。でも、認めて、解決しなくては、体も治らないのかもしれない」
「年齢的にも(四十代になった)環境的にも(中堅作家になった・再婚した)大きな変化があったので、それに伴って考え方も物事のやり方も、今まで通りでは通用しなくなっていて、新しいベクトルの方向を模索しないとならないという自覚がある」
「私は時間において、王子を疑りはじめているんだと自覚。これからの長いはずの結婚生活、それを 諦めてゆくんだな、そして自衛してゆくんだなと思った。振り回されないように。気持ちを乱されないように」
「ずっと私はうつになった原因は、なにか心因性のものだと思っていた。仕事上のいろいろなストレスや引っ越しや再婚で、感情のバランスが狂ったのだと思っていたけれど、そうじゃなかったと最近しみじみ思う。だいたいその「外から攻撃された」という被害者意識がまずいけなかった。 私の場合、悪い体が黒い心を生んだのだ」
「人にショックや怒りや不愉快な感情を起こさせて物事を考えさせるという手段は有効なのかもしれない。けれど私はしたくない」
「世の中に向かって表現をできる技術を持っている人間は恵まれている。だからこそ自重も含め慎重にならなければいけない気がする。偽悪的になったり、それを感情任せで論破したり、したり顔で分析したりすることは、ネットの2ちゃんねるで行われていることと大して変わらない気がする」
「リンダの 旦那 さんはそっけないらしく、彼女が用事で外出から戻っても「どうだった?」とまったく聞かないそうだ。ああ、それってまさに私の前の夫もそうだったなと思う。昔、私は前夫に「なんでなんにも聞かないの?」と尋ねて「興味のないことを延々と聞かされたくないから」と答えられたことがある。きっと私の話がくどかったのだろう。でもヒドイ。王子はそんなことは言わない。それとも言う日がくるのだろうか」
「調子の悪いときは誰でも多かれ少なかれ視野が狭くなってしまいますが、この頃の私は悪い材料ばかりに目がいっていたので、日記メモを残しておけば、夫が私に「ほら、具合のいい日もあるんだから大丈夫。ずっと悪い日が続いているわけじゃないんだよ」と説得できると考えたそう」
「身近な人が、それまで貫いてきたであろう意志がぐらついてきているのに気がついたら、気をつけてあげて下さい。単に怠けているだけだと決めつけないで」
「つまり自立とは、自分さえ良ければいいというわけでなく、弱った人を助けることができることだと知ったから」