鎌倉時代を勉強しよう第4弾
そろそろ小説を読んでも良かろう
知識のないまま歴史小説を読むと、そのイメージが自分の脳に定着してしまうので、我慢して最後に取っておくことに
剥き出しの野望と血で血を洗う時代にふさわしく妖しく激しく美しいタイトルと装丁
こちらは4編から成り、それぞれの人物の視点で描かれ
...続きを読む、歴史を動かされる構図
阿野全成(僧侶である源頼朝の弟)
梶原景時
阿波局(全成の正室であり北条政子の妹)
北条時政、義時親子
頼朝や政子じゃないところがイイですね
ここでの阿野全成は野心をひた隠し陰鬱でダークなキャラになっている
梶原景時は割とイメージ通り
一番小説の醍醐味的に読めたのが阿波局のストーリー
痩せ型のきりっとした美人と描かれる姉北条政子と真逆の容姿をもつ妹保子
ふっくらした色白の底抜けに明るいお喋りが止まない屈託のないキャラ…
阿野全成の正室となり阿波局と呼ばれる
少しずつ少しずつ阿波局が「お喋り」と「平凡な女」という武器をフルに使い無意識のうちに、仕掛け出す
他意があるのかないのか
阿波局の口からは一言も本音が出ないため、読み手にもわからない
が気付けば彼女の意に沿う展開に…
小さな蜘蛛の子が気付かぬうちに蜘蛛の糸を張り巡らせ、敵が気づいた時にはもう身動きが取れない
その影に隠し持つ計算高い野望とは…
まるで北条家の黒幕かのように描かれ一番小説らしさが見える
政子、娘大姫、阿波局
それぞれ女性の個性と強さと弱さ…
また湿度と粘度あるドロっとした部分が見え隠れする
最後の北条親子
こちらだけ他の3編と比べるの異質感があり
どうやらこちらのみ後から付け加えた一編とのこと
ここでの北条義時の描き方も実に興味深い
父時政の心情は描写されるが義時の心情は全く描写されない
頼朝や政子に対する観察や気持ちは描かれるが、自身については語られない
人の話しをよく聞き、よく観察、洞察し、無口でスルリと逃げるのが上手く、何を考えているのかよくわからない義時
父以外の兄弟たちからの受けは良い
頼りにならない義時にいつも歯痒くやきもきしていた父時政だが、いつの間にか冷静で計算高くなった義時に気づき距離を置くように…
本人の心情を描かぬことで浮かび上がる構図は好みだ
恐らく永井路子氏は義時の性格や人柄をこう想像しているのだろう
今まで知り得た北条義時像と異なる部分もあるが、この想像力と解釈はなるほどなぁと実に面白い
そして義時は冷たい炎を燃やし、権力の道を上りつめたのだ
この時代はわからないことも多いため、エンタメ要素を入れ盛り上げやすいだろうが、そこを結構グッと堪えて堪えて際どいあたりを攻めている内向きの圧が何とも良い
永井路子氏のあとがきを見ると
昭和39年とある
ここにも歴史を感じる
この積み重なって層を成す時代に感動を覚える
年を取るとこんな風に歴史を捉えられるんだ
なんだか新鮮である
さて三谷大河のそれぞれの人物像はどう表現されるのか…
引き続き楽しみである