この物語は「鴨川ホルモー」の"外伝"です。京大青竜会の安倍くんたちの怒涛の活躍を描いた前作が"正伝"。
続編ではなく、『安倍くんたちの見えないところで、こんな事がありました』というお話になっている所がミソ。
第1話「鴨川(小)ホルモー」
主人公は京都産業大学玄武組のエース、『二人静』。その名も"定
...続きを読む子"(さだこ)と"彰子"(しょうこ)。式神を呼び出して対戦する『ホルモー』の遣い手は一様にヘンな人ばかり。この二人の美女も御多分に漏れずやっぱりヘンです。何しろ"車懸りの陣"の様に繰り出す攻撃に"夢想花アタッキング"とネーミングするセンスでは、そりゃあ男も引くわ(笑)
第2話「ローマ風の休日」
京大青竜会で安倍くんが思い煩っていた時期に、凡ちゃん(髪型とメガネが大木凡人似)こと楠木ふみが初めてのデートをする物語。
同じレストランでアルバイトをしている少年に一目置かれる存在になった楠木さん。数学の宿題を解く為に少年に同行する。その途中、六道珍皇寺の井戸に少年が腕を挿し入れる場面があって、そこがタイトルの由来です。本の表紙絵もそのパロディ。
(どれだけの人がわかるんだ?)
第3話「もっちゃん」
この話だけちょっとヒネリ方が他と違う。
安倍くんの下宿の隣人が「もっちゃん」。安倍くんは京大青竜会に所属してホルモーをやっている。もっちゃんが恋をした。ラブレターを書く材料を買いに行った本屋で、直前に買ったレモンを棚に置く…辺りで?となった。もっちゃんは英語に堪能で楽譜を読めて…え?どこかで聞いたような…。正伝をきちんと読んでいれば、納得のいくオチがちゃんとついてます。
第4話「同志社大学黄竜陣」
主人公、山吹巴は高校からの恋人と共に同志社大を受験する。だが失敗。その恋人にとって同志社大は滑り止めで、京大に進学する。男は大学サークルで別の娘と付き合い始め、巴は振られた。恋人の名は芦屋満という(京大青竜会のエースにして安倍くんの天敵)そんな巴が同志社大で、廃止されていた"黄竜陣"の遺物を見つけてしまったことから、芦屋くんに天罰が下る事になる。
第5話「丸の内サミット」
この話には青竜会メンバーは一切出てこない。しかし、ホルモーの新たな側面も垣間見える話です。
中心になるのは京都産業大学玄武組OBの榊原くんと龍谷大学OBの井伊さん。二人は東京の同僚主催の合コンで再会する。二人はそれぞれの大学でリーダーだった為に面識があった。その二人が、合コン終了後に丸の内で異様なものを目撃する。二人の同僚は、それぞれ一橋大とお茶の水女子大出身だけど、もしかして…。
第6話「長持の恋」
立命館大学白虎隊リーダーの細川珠実は超貧乏。それなのに運転免許がほしくなって教習所通いを始める。教習所で会ったのが京大青竜会の高村くん。(何とこの男はちょんまげを結っている)バイト代稼ぎで始めたのは料理旅館の仲居。蔵から旅館の物品出しの最中に見つけた長持に、不思議な性質がある事に珠実は気付く…。
どの話もよく出来ていて、前作との整合性もきちんと取れていて心地よい。物語同士の関連性もあって、それに気付いた時はニンマリしてしまいました。ただ、それだけに前作をしっかりと読み込んだ"上級者向け"とも言えるでしょう。
青春グラフィティであり、ちょっとヘンなファンタジーでもある。
若いって、いいなぁ。好き(笑)