ギルバートと結婚し、「夢の家」で新家庭をもったアンの日々。
登場人物は、男嫌いのミス・コーネリア、美しいが不幸な人生を歩んできたレスリー・ムーア。ジム船長。
アン自身、結婚し、初めての子ども(ジョイ)を数日で亡くし、新たな子どもジェムを産むなどさまざまな出来事が起こるが、やはりこの巻でも面白いのはア
...続きを読むンの周りの人々のことで、とくにレスリー・ムーアの話は非常にドラマティック。
レスリーは弟の死、父親の自殺など不幸な事件を経験し、母親のために若いころ、好きでもないディックと結婚。生きる屍として生きていた。
孤児ではあったけれど今は幸せな結婚生活を送るアンとレスリーは、だからなかなかわかりあうことができなかった。
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P151
「レスリーはディックの世話をして11年間離れたことがないんですよ--あの馬鹿に一生しばりつけられているんです。しかもあんなに夢や希望をもっていたのにね! レスリーにとってそれがどんなものか、あんたには想像がつくでしょう、アン--あんな美しさと、気概と、誇りと、利口な頭を持っていながらね、生きる屍ですよ」
「まあ、かわいそうに、かわいそうに!」
と、アンは再び言った。自分の幸福なことが気が咎めた。他の人間がそんなにみじめな思いをしているのに、自分がこんなに幸福になっている権利があるのだろうか?
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本当に人と人がわかりあうのは難しい。
(どうしてレスリーに近づけないのだろうというアンの相談に対して、ジム船長の言葉。非常に深遠な言葉だと思う。)
P200
「あんたはこれまであまりしあわせにしてきなすったからですよ」と、ジム船長は考え深げに言った。「だからあんたとレスリーは心から真に親しくなれないのだと思いますわい。あんたがたをへだてているのはあの子の苦しみと苦労の経験ですよ。あの子のせいでもなし、あんたのせいでもないですて。だが、そのへだてはどっちも乗り越えられないのですわい」
「グリン・ゲイブルスへくる前のわたしの子供時代はあまりしあわせではありませんでしたわ」
(略)
「そうかもしれません--だがそれはちゃんと世話をしてくれる者のない子供によくある、普通のふしあわせにすぎませんて。あんたの身の上には悲劇というものはありませんわい、ブライスの奥さん。それがかわいそうに、レスリーはほとんど悲劇ずくめだったですよ。あの子はおそらく自分でも気づかずに、自分の生活にはあんたが入ることも理解することもできないものがどっさりあることを感じているにちがいないですわい--だからそういうものからあんたを遠ざけなくてはならないわけですて--いわば自分がいたい思いをしないよう、あんたを近づけないというわけですよ。それ、わしらは体のどこかにいたいところがあると、人に触られたり近寄られたりさせまいとして尻込みするじゃありませんか。わしらの心の場合も体とおなじことが言えるんじゃないですかな。レスリーの心は赤膚になっているに違いない--それを隠そうとするのは無理ありませんて」
レスリーはオーエン・フォードというもの書きと両思いになる。
だけど、レスリーはディックと結婚している。
どうするんだろう?と思っていたら、そのレスリーに転機が訪れる! 希望のある人生が拓けるのだ!
なんと、ディックは航海に出たときに死んでいた。帰ってきたのは記憶をなくした従兄弟のジョージ・ムーアだったのだ!
そしてジョージは昔婚約していた娘と結婚することになり、レスリーは晴れてオーエン・フォードと結婚することになる!
これ以外にも、この巻は終わりにびっくりな出来事がたてつづけに起こる。
なんと男嫌いのコーネリアがマーシャル・エリオットと結婚!
そして、オーエン・フォード(とレスリー)の手により、ジム船長の「生活手帳」が本になったその日の夜、本を読み、人生最大の喜びに浸りながら、ジム船長は亡くなる。