梶よう子のレビュー一覧

  • 空を駆ける
    フェリス・セミナリー(現・フェリス女学院)初代卒業生にして、バーネット『小公子』の翻訳者、そして教育者である若松賤子の生涯を描いた作品。

    恥ずかしながら若松賤子という方をこの作品で初めて知った。
    物語の終盤、『小公子』の前編が出版された直後のカシ(賤子の本名)が夫である巌本善治に『怖くなった』と不...続きを読む
  • 番付屋新次郎世直し綴り
    ミステリー要素を持った時代小説。小町番付に載った娘が顔を傷付けられる。犯人は意外な相手。
    隠蔽する与力が酷過ぎるが、昼行灯の同心が陰で助けてくれるのでホッとする。
    主人公・新次郎も番付で被害を受けた過去があり、同じように被害を受けた理吉を番付屋に誘うが拒否される。犯人に近づくための番付屋なのだろうが...続きを読む
  • いろあわせ 摺師安次郎人情暦
    梶さんの初期の頃の作品。
    摺師が主人公で寡黙な職人。「いろあわせ」と言うタイトル通り、各章は摺りの技法がサブタイトルとなっている。かけあわせ、ぼかしずり、まききらら、、、。技法の説明は各章の冒頭に説明されているが、絵や写真が無いと分かりづらい。また、このサブタイトルに沿った人情物の内容だが、技法が分...続きを読む
  • 立身いたしたく候
    瀬戸物屋の五男坊が貧乏御家人の家に婿入りし、出世を目指す。
    婿入り先の養父は家督を継いで28年経つが、無役の上に常に病気持ち。10才の娘がいるが、当初は妹で将来は嫁の予定だが、オマセで恋愛が芽生えてきて微笑ましい。
    幼馴染で手跡指南所からの付き合いの次男坊が脳天気で良い味を出している。この幼馴染から...続きを読む
  • 噂を売る男 藤岡屋由蔵
    古本屋の傍ら『噂』を必要な人間に売っている由蔵が、あのシーボルト事件に巻き込まれていく。

    由蔵の父は養蚕家だったが詐欺にあって病の蚕卵を買い、自身だけでなく集落の蚕まで死なせるという大変な事態を招く。そのせいで父は自害、母は心労死、由蔵は周囲の子どもたちから『うそっこき由蔵』と非難される。
    長じて...続きを読む
  • 本日も晴天なり 鉄砲同心つつじ暦
    梶さんといえば、『一朝の夢』、『御薬園同心』等・・といった数々の“植物×武士”ものを書かれていますが、本書もそれ系のお話。
    つつじ栽培に励む鉄砲同心の一家の物語、連作6話が収録されています。

    江戸・大久保に住む鉄砲同心たちにとって、つつじ栽培は生計の要となる内職との事。何でも火薬の材料が肥料になる...続きを読む
  • 吾妻おもかげ
    浮世絵の父のような菱川師宣。
    元和4年(1618年)月日不詳 - 元禄7年6月4日(1694年7月25日))

    まだまだ生まれたての江戸の町で
    師宣はどんな人生をおくったのか。
    前半の人生にやや力点がおかれていきいき描かれている。
    絵が売れだしてからの師宣は
    あんなに嫌っていた狩野派と同じ道を進みそ...続きを読む
  • 噂を売る男 藤岡屋由蔵
    最初の方は面白かった。噂の種を売るというのもいいし、おきちやほかの登場人物も良いキャラクターで続きが読みたい。ただ、学者の嫉妬とかが出てきてからはなんかスッキリしないままで終わってしまった。次作は読後感の良い作品をお願いしたい。
  • お茶壺道中
    202112/タイトルのお茶壺道中とは、幕府が将軍御用の宇治茶を茶壺に入れて江戸まで運ぶ行事とのこと。宇治茶を誇りに思いお茶壺道中が大好きで、お茶を淹れるのも上手な主人公・仁吉が、宇治から江戸の茶葉屋で奉公にあがり成長していく物語。梶よう子の史実(今回は生麦事件、和宮降嫁など)を物語に絡める手法が今...続きを読む
  • 一朝の夢
    202112/これがデビュー作とは!消極的でパッとしないタイプだけど、朝顔のことなら周囲がドン引きする程饒舌かつ一方的にマシンガントークしちゃう朝顔オタクな北町奉行同心・中根興三郎が主人公。尊王攘夷、安政の大獄など史実をベースに、政情に係わってしまう主人公、朝顔をうまいこと絡めつつ物語が進んでいく。...続きを読む
  • ふくろう
    202112/実際にあった松平外記による『千代田の刃傷事件』を素材にしたフィクション。序盤の仲睦まじく幸せそうな若夫婦の描写が、却ってこの先の辛い展開を感じさせた。作者の妥協することない筆力で、城内でのパワハラ・いじめ(と言うには余りにも酷すぎる…)が容赦なく綴られるので、読んでいてとてもとても苦し...続きを読む
  • 迷子石
    202111/血が苦手で引っ込み思案で人も苦手な見習い医師が主人公。医師としてはパッとしないので、引きこもりながら富山の薬のおまけ絵を描いたり、近所の子供達と絵を描いて暮らす日々。主人公のキャラや舞台設定的にほのぼの系かと思ったら、藩の御家騒動にまつわる陰謀や不審な事件が起こり、全体的にずっと曇天の...続きを読む
  • 立身いたしたく候
    202111/貧乏御家人の婿養子となった主人公駿平が、お役につけるよう幼馴染み智次郎とともにお役めぐりをし、各々の職務や人間関係、内実の事情等を知り成長していく8編からなる連作短編集。各章タイトルが役名(小普請組・同朋衆・徒組・御膳所御台所・長崎奉行・勘定所吟味・奥右筆・旗奉行槍奉行)になっている。...続きを読む
  • はしからはしまで―みとや・お瑛仕入帖―(新潮文庫)
    202110/長太郎とお瑛の兄妹二人で営む「みとや」シリーズ第三弾。ここに来て長太郎がまさかの…。これからも兄妹で続いていくと思ってたのでこの展開はショックだし悲しい。周囲の人達に助けられながら懸命に前を向いて進もうとするお瑛、猪牙舟を操り進んでいく描写がよりいきる今作だった。
  • 本日も晴天なり 鉄砲同心つつじ暦
    ピンクや紅色、グラデーションの鮮やかな
    つつじが咲き誇るつつじ畑の中で、
    ちょっとした出来事や事件が起こっている、
    そんな情景が浮かぶ、
    江戸時代のある鉄砲同心一家のお話でした。

    剣呑な雰囲気が漂う事件が起こっても、
    礫家のやりとりが笑えてきて、
    最後は一家の絆と
    たくさんのキレイなつつじが印象に...続きを読む
  • 葵の月
    将軍の世継ぎ・家基の死の真相を巡る話。史実は動かず、すっきりとした結末には当然ならない。真相を暴いて解決とならないのが政治かと思うと情けない。
  • 番付屋新次郎世直し綴り
    作者さん初の書き下ろし作品。

    廻り髪結いの裏で番付屋をしている新次郎。
    得意先の娘で近頃〈小町番付〉の小結に選ばれた娘が襲われ顔を傷つけられるという痛ましい事件が発生。
    新次郎は番付屋の仲間たちと事件を探るのだが、別の事件との関わりが見えてきて…。

    瓦版屋にスポットを当てる作品はあるが、番付屋と...続きを読む
  • 北斎まんだら
    北斎の娘 お栄を案内役に、北斎が絵を画くことに執着する姿が描かれる。

    描かれるお栄と北斎の親子というだけでなく、師匠と弟子でもない、北斎の絵を画くことを中心にした濃密な関係が描かれ、面白い。
  • 柿のへた 御薬園同心 水上草介
    小石川御薬園で働く、“御薬園同心”の水上草介が主人公の連作短編。

    植物オタクの草介にとって、御薬園同心はまさに天職。植物の知識を活かして様々な問題を解決していきます。
    薬草等の種類や効能についてもわかりやすく書かれていて、興味深く読ませて頂きました。
  • 池波正太郎と七人の作家 蘇える鬼平犯科帳
    土橋章宏の「隠し味」は泣けた。
    諸田玲子の「最後の女」は、平蔵が女と情を交わすのが納得いかなかった。
    逢坂剛はまるで漫画の鬼平しか読んでないようなキャラ作りで好きではなかった。
    あとは概ね良しかな。