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江戸の町に、世の理不尽と戦う「情報屋」がいた! その名は、藤岡屋由蔵――。神田旅籠町の一角で、素麺箱に古本を並べ、商売をするこの男が、古本販売を隠れ蓑に売っていたのは、裏が取れた噂や風聞の類。それを買いに来るのは、喉から手が出るほど“情報”がほしい各藩の留守居役や奉行所の役人だった。由蔵が己の仕事として心に刻み込んでいたのは、真実を見極め、記すこと。筆一本で戦う由蔵のもとに、ある日、幕府天文方の役人が逃げ込んで来る。その役人は、日の本を震撼させたシーボルト事件に絡んでいた。しかしその騒動のとばっちりで、由蔵の手下が命を落としてしまう。手下の理不尽な死を許すことができない由蔵は、真実を暴くため、動き始めるのだが……。天下を揺るがす陰謀に、“情報”で挑んだ男を活き活きと描く傑作歴史小説。
...続きを読むPosted by ブクログ 2021年12月01日
シーボルト事件の顛末を、市井の男が絡んで解き明かす。禁制の伊能地図持ち出し事件について知らなかったので、学ぶことが多かった。高橋作左衛門と間宮林蔵との確執、彼らとシーボルトとの親交は史実であり、どうやら江戸の長崎商人が記した書からシーボルト事件が露見したという説が検証されているようだ。そこに町人風情...続きを読む
Posted by ブクログ 2022年07月02日
古本屋の傍ら『噂』を必要な人間に売っている由蔵が、あのシーボルト事件に巻き込まれていく。
由蔵の父は養蚕家だったが詐欺にあって病の蚕卵を買い、自身だけでなく集落の蚕まで死なせるという大変な事態を招く。そのせいで父は自害、母は心労死、由蔵は周囲の子どもたちから『うそっこき由蔵』と非難される。
長じて...続きを読む
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